山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 記憶について


 
ぼんぼんとつめでひき
    ヽ ヽ
さてゆみをとつたが
 
いつしか調子はくるつてゐる
 
ほこりだらけのヴァヰオリン
 
それでもちよいと
 
草の葉つぱのどこかのかげで啼いてゐる
    きりぎりす
あの蟋蟀の声をまねてみた