山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 雪の詩


 
ちらちらと落ちてきた
 
雪の群集
 
どんよりとした空の彼方から
 
これが冬の飾りであるのか
 
此の世界への贈り物であるのか
 
純銀の街と村村と
 
此の凍えてゐる人人の上にふるか
 
雪は人間を意志的にする
 
雪は力を堆積する
 
そして人間を神様と一しよにする
 
祝福せよ
 
子ども等はうれしさに獅子のやうだ
 
ちらちらと落ちてくる雪
           たましひ
雪の残忍な霊魂
 
このうつくしさを頬張り貪り
 
くるへ
 
雪もおどれ
 
雪のやうな子ども等