山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 世界の黎明をみる者におくる詩


 
鶏の声にめざめた君達だ
 ヽ ヽ ヽ
からすや雀より早くおきいで
 
そして畑へ飛びだした君達だ
 
朝露にびつしよりとぬれた君達だ
 
まだ太陽も上らないのに
 
君達の額ははやくも汗ばんだ
 
君達はひろびろとした畑の上で
       よあけ
世界の黎明をみた
 
それをみるのは君達ばかりだ
 
此の世のはてからのぼつてくるその太陽を
 
どんなに君達はおどろかしたことか
 
君達はしるまい
 
君達はしるまい
 
此の若き農夫を思へ!