山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 或る日曜日の詩


    まつしろ
雪を純白にいただいた遠方の山山をみつめてゐると
 
指指の尖から冴えてくるやうだ
 
ぎらぎら油ぎつて光る
 
椿や樫の葉つぱ
 
冷い風に枯草が鳴る
 
地に伏して鳴る
 
木木は骸骨のやうだ
 
その梢の嗄れた生きもののやうな声声
 

 
険悪な空はせはしさうだ
 
雲と雲との描く
                  か げ
田畠の上をはしる陰影
 

 
とろりとした日だまり
 
ひさしぶりで来てみる公園はすつかり荒れはてた
       け ふ
けれど今日は善い日曜日だ
 
子ども等が何かしてあそんでゐる
おちば
落葉のやうな子ども等よ
 

 
とろりとした日だまり
 
その光はまるで蜂蜜のやうだ