山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 朝の詩


 
しののめのお濠端に立ち
 
お濠に張りつめた
 
氷をみつめる此の気持
 
此のすがすがしさよ
 ぐらす
硝子のやうな手でひつつかんだ
 
石ころ一つ
 
その石ころに全身の力をこめて
 
なげつけた氷の上
 
石ころはきよろきよろと
 
小鳥のやうにさへづつてすべつた
 
(おお太陽!)
 
おお此の気持で
 
人間の街へ飛びこまう
 
あの右ころのやうに