山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 鞴祭の詩


 
自分の意志はあかあかと
 
みよ、うつくしくやけただれてゐる
かなしき
鉄砧の上なる意志を
はがね
鋼鉄のやうな此の意志を
 
打て!
 
鉄槌をふりかざせ
 
とびちるものは火花の吐息だ
 
とびちるものは自分の吐息だ
 
くるしい
 
くるしいから美しいのだ
 
生きのくるしみ
 
それが人間にこもつて力となるのか
       よあけ
世界の黎明よ
 
研ぎすました此の冴え
 
ふれれば切れるやうな空気
 
鋼鉄のやうな自分の此の意志
 
それを鍛へる自分の力
 
くるしめ
 
くるしめ
 
鉄砧の上できたへろ
 
とんかんと
          お と
此のいい音響で冬めを祭れ