山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 鴉祭の詩


 
大鴉
     ヽ ヽ
藁とぼろとでこしらへた鴉
 
そのからすを祭れ
 

 
きみらは農夫
       よあけ
ひろい黎明の畠にとびだし
          た ね
しみじみと種子を蒔いた
 
種子は一粒一粒
 
種子は善い種子
 
その上に土をかけ
 
太陽にそれをかくした
 
きみらは農夫
 
それからといふもの
 
どんなに畠のことばかりかんがへてゐたことか
 
そんなこととはしらないで
 
そんなことともしらないで
 
鴉めが来てはそれをほじくる
 
そのからすを祭れ