山村暮鳥
「雲」


 
 ほうほう鳥


 
やつぱりほんとうの
 
ほうほう鳥であつたよ
 
ほう ほう
 
ほう ほう
          ヽ ヽ ヽ ヽ
こどもらのくちまねでもなかつた
 
山のおくの
 
山の声であつたよ
 

   *

 
ほう ほう
 
ほう ほう
 
山奥のほそみちで
 
自分もないてる
 
ほうほう鳥もないてる
 

   *

 
自分がそこにもゐて
 
ふと鳴いてるとおもはれたよ
 
ほう ほう
 
ほう ほう
 

   *

 
ほう ほう
 
ほう ほう
 
ほんとうのほうほう鳥より
 
自分のはうが
 
どうやら
 
うまく鳴いてゐる
 
あんまりうまく鳴かれるので
 
ほんとうのほうほう鳥は
 
ひつそりと
 
だまつてしまつた