山村暮鳥
「雲」


 
 


 
しつかりと
 
にぎつてゐた手を
 
ひらいてみた
 

 
ひらいてみたが
 
なんにも
 
なかつた
 

 
しつかりと
 
にぎらせたのも
 
さびしさである
 

 
それをまた
 
ひらかせたのも
 
さびしさである