伊東静雄「反響」
わが家はいよいよ小さし


    かの旅


 
 杉原や檜ばらがくれに
 
 桃さくらはや匂ひでし
 
 そを眺めつつ
 
 ゆたかなる旅なりしかな
 
 熊野路を南へゆきて
 
 わが見たる君がふるさと
 

 
   形見にぞ拾ひもてきし
 
   玉石はみれども飽かず
 
   あさもよし紀の海が
 
   荒波にかくもみがきて
 
   みづぬるむ春の渚に
               こ ざ
   おきたりし古座の玉石



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