伊東静雄「反響」
わが家はいよいよ小さし


    なれとわれ


 
 新妻にして見すべかりし
 
 わがふるさとに
  なれ
 汝を伴ひけふ來れば
 
 十歳を經たり
 

               な
 いまははや 汝が傍らの
 わらべ   かな
 童さび愛しきものに
 
 わが指さしていふ
 
 なつかしき山と河の名
 

           あ こ
 走り出る吾子に後れて
 
 夏草の道往く なれとわれ
 さいげつ
 歳月は過ぎてののちに
 
 ただ老の思に似たり



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