伊東静雄「反響」
凝視と陶醉


    燈臺の光を見つつ

 
 くらい海の上に 燈臺の緑のひかりの
 
 何といふやさしさ
 
 明滅しつつ 廻轉しつつ
         よ
 おれの夜を
          さまよ
 ひと夜 彷徨ふ
 

 
 さうしておまへは
 
 おれの夜に
 
 いろんな いろんな 意味をあたへる
 
 嘆きや ねがひや の
 
 いひ知れぬ――
 

 
 あゝ嘆きや ねがひや 何といふやさしさ
 
 なにもないのに
 
 おれの夜を
 
 ひと夜
                        さまよ
 燈臺の緑のひかりが 彷徨ふ




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