ML> 伊東静雄『反響』−「夏花」夜の葦

伊東静雄「反響」
凝視と陶醉


    夜の葦

 
 いちばん早い星が 空にかがやき出す刹那は どんなふうだらう
 
 それを 誰れが どこで 見てゐたのだらう
 

 
 とほい濕地のはうから 闇のなかをとほつて 葦の葉ずれの音が
 
 きこえてくる
 
 そして いまわたしが仰ぎ見るのは搖れさだまつた星の宿りだ
 

 
 最初の星がかがやき出す刹那を 見守つてゐたひとは
 
 いつのまにか地を覆うた 六月の夜の闇の餘りの深さに 驚いて
 
 あたりを透かし 見まはしたことだらう
 

 
 そして あの眞暗な濕地の葦は その時 きつと人の耳へと
 
 とほく鳴りはじめたのだ




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