伊東静雄「反響」
凝視と陶醉


    笑む稚兒よ

  え    ち ご
 笑む稚兒よわが膝に縋れ
  み を          うしほ  はし
 水脈をつたつて潮は奔り去れ
 
 わたしがねがふのは日の出ではない
 
 自若として鷄鳴をきく心だ
                   さまよ
 わたしは岩の間を逍遙ひ
 
 彼らが千の日の白晝を招くのを見た
          けもの     ほとり
 また夕べ獸は水の畔に忍ぶだらう
 
 道に遙かに村から村へ通じ
                          ゆ
 平然とわたしはその上を往く




BACK戻る 次にNEXT
[伊東静雄] [文車目次]