閑吟集 小歌

 
 はなかご               も              くも
 花籠に月を入れて 漏らさじこれを 曇らさじと 持つが大事な
(310)

大意……

花かごに月を入れて、これを外に漏らすまい、
曇らすまいと、しっかりと持つことが大切なのです。


 



 はじめてこの歌を読んだ時、花かごの中に閉じこめられた月をしっかり持っている女性、というものすごく幻想的な絵が脳裏に浮かびました。そんな、とても美しい歌ですが、これは『閑吟集』ですから、当然、それだけでは終わりません。一般的に“花籠”が女性を、月が“男性”の比喩とされています。ゆえに、漏らすまいとしているものは何なのか、だいたいの想像はついてきますね。持つ(持たせる)事が大切なようですし。

 そんな風にポルノ的に解釈することも出来ます、遊女の純愛の歌と読み解くことも可能でしょう。愛する男性を我が身に受け入れても、その事は自分の胸の内しっかり秘めて、決して外には漏らさないようにしよう。男の心を煩わしさで曇らさないために、というように。

 いずれにしても、『閑吟集』は宴席での歌謡を集めたものですから、どちらの解釈でも正しいのでしょう。ただ、これを口ずさんでいると、“月”は必ずしも男性の比喩と考えなくてもいいのではないかしら、という気がしてきます。男女の間の愛情とか、自分の幸福とか、つかめそうでつかめない、努力しなければすぐに網目をすり抜けいってしまう、そんなもの比喩と考えても意味が通りそうな気がしませんか。


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