大手拓次
『藍色の蟇』

球形の鬼

  
  くちなし色の車


 
 つらなつてくる車のあとに また車がある。
        せばた
 あをい背旗をたてならべ、
 
 どこへゆくのやら若い人たちがくるではないか、
 
 しやりしやりと鳴るあらつちのうへを
                   こじやり
 うれひにのべられた小砂利のうへを
 
 笑顔しながら羽ぶるひをする人たちがゆく。
 
 さうして、くちなし色の車のかずが
  ふ ぐ
 河豚のやうな闇のなかにのまれた。