大手拓次
『藍色の蟇』

黄色い帽子の蛇

  
 蛙の夜


 
 いつさいのものはくらく、
 
 いつさいのおとはきえ、
 
 まんまんたる闇の底に、
 
 むらがりつどふ蛙のすがたがうかびでた。
 
 かずしれぬ蛙の口は、
 
 ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、……とうごいて、
 
 その口のなかには一つ一つあをい星がひかつてゐる。