大手拓次
『藍色の蟇』

香料の顔寄せ

  
  ナルシサスの香料


 
 くらやみを裂くひびきのやうに、
 
 絹のすれあふささやきのやうに、
                                    て くだ
 わたしの心を驚きと秘密へひきこむ手管、
 
 そこにはちひさなまつしろい子犬がゐて、
 
 にこにこわらひならが、
 
 迷ひ入るわたしの背中に黄色い息をはきかけた。
 
 わたしはぶるぶるとふるへた。