大手拓次
『藍色の蟇』

香料の顔寄せ

  
  仏蘭西薔薇の香料


 
 まつしろな毛なみををうたせて
 
 はひまわる秋の子兔、
 
 うさぎの背にのびる美貌のゆめ、
 
 ふむちからもなくうなだれてあゆみ、
 
 つつしみの嫉妬をやぶり、
 
 雨のやうにふる心のあつかましさに
 
 いろどりの種をまいて、
     よる  とこ
 くる夜の床のことばをにほはせる。