大手拓次
『藍色の蟇』

香料の顔寄せ

  
  すみれの葉の香料


 
 ものすごくしめりをおびて
                   あを ぐ も
 わきおこる悩乱の青蜘蛛、
  きうしや
 柩車のすべりゆくかげとかたちと、
 
 よりそひ かさなりあつて、
 
 ながい吐息をもらす。
 
 時をたべつくし、
  ほろ                            め いぬ
 亡びをよみがへらせる思ひでの牝犬。