大手拓次
『藍色の蟇』

黄色い接吻

  
  黄色い接吻


 
 もう わすれてしまつた
 
 葉かげのしげりにひそんでゐる
 
 なめらかなかげをのぞかう。
 
 なんといふことなしに
 
 あたりのものが うねうねとした宵でした。
 
 をんなは しろいいきもののやうにむづむづしてゐました。
 
 わたしのくちびるが
 うを
 魚のやうに
 
 はを はを はを はを はを
 
 それは   それは
 
 あかるく きいろい接吻でありました。