大手拓次
『藍色の蟇』

みづのほとりの姿

  
  みづのほとりの姿


 
 すがたは みづのほとりに うかぶけれど、
 
 それは とらへがたない
 
 とほのいてゆく ひとときの影にすぎない。

 
 わたしの手の ほそぼそと のびてゆくところに
 
 すがたは ゆらゆらとただよふけれど、
 
 それは みづからのなかにおちた 鳥のこゑにすぎない。

 
 とほざかる このはてしない心のなかに
 
 なほ やはやはとして たたずみ、
  よ
 夜も昼も ながれる霧のやうにかすみながら、
 
 もとめてゆく もとめてゆく
 
 みづのほとりの ゆらめくすがたを