八木重吉
「秋の瞳」

 
   白き響


 
 さく、と 食へば
 
 ブルウさく、と くわるる この 林檎の 白き肉
 
 なにゆえの このあわただしさぞ
 
 そそくさとくひければ
                        つゆ
 わが 鼻先きに ぬれし汁
 

 
 ああ、りんごの 白きにくにただよふ
 
 まさびしく 白きひびき



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