八木重吉
「秋の瞳」

 
   何故に 色があるのか


 
 なぜに 色があるのだらうか
 
 むかし、混沌は さぶし かつた
 
 虚無は 飢えてきたのだ
 

                             いちまつ
 ある日、虚無の胸のかげの 一抹が
                 アムブロウジアル
 すうつと 蠱惑の 翡 翠 に ながれた
                                ねあせ
 やがて、ねぐるしい ある夜の 盗汗が
                        ブルウ
 四月の雨にあらわれて 青に ながれた



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