八木重吉
「秋の瞳」

 
   はらへたまつてゆく かなしみ


 
 かなしみは しづかに たまつてくる
 
 しみじみと そして なみなみと
 
 たまりたまつてくる わたしの かなしみは
 
 ひそかに だが つよく 透きとほつて ゆく
 

 
 こうして わたしは 痴人のごとく
 
 さいげんもなく かなしみを たべてゐる
 
 いづくへとても ゆくところもないゆえ
 
 のこりなく かなしみは はらへたまつてゆく



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