八木重吉
「秋の瞳」

     いか      すがた
   怒れる 相


 
 空が 怒つてゐる
 
 木が 怒つてゐる
         ほほえみ
 みよ! 微笑が いかつてゐるではないか
 
 寂寥、憂愁、哄笑、愛慾、
 
 ひとつとして 怒つてをらぬものがあるか
 
 ああ 風景よ、いかれる すがたよ、
 
 なにを そんなに待ちくたびれてゐるのか
 
 大地から生まれいづる者を待つのか
                      ヽ ヽ ヽ
 雲に乗つてくる人を ぎよう望して止まないのか



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