竹久夢二「夢のふるさと」


 
  夏のたそがれ


 
 タンホオルの鐘が
 
 さわやかになりいづれば
 
 トラピストの尼は
                     いのり
 こゝろしづかに夕の祈祷をさゝげ
 
 すぎし春をとむらふ。
 

 
 柳屋のムスメは
        ゆかた
 はでな浴衣をきて
 
 いそ/\と鈴虫をかひにゆく
 

 
 ――夏のたそがれ。