竹久夢二「夢のふるさと」


   
  人形遣


 
 「めでたやなめでたやな
 
 さりとはめでたやめでたや」と
       のれん
 紺の布簾のつまはづれ
 
 人形遣がきたさうな。
 

 
 母のかげよりそとみれば
 
 人形遣のうら若く
 
 「ま、どうしよぞいの」と泣きいれば
 
 襟足しろくいぢらしく
 
 人形の小春もむせびいる。
 

 
 ものゝあはれかふるあめか
 
 もらひなみだの母の袖。