梁塵秘抄 巻第二 四句神歌 雑

 
  ま   ま かたつぶり  ま
 舞へ舞へ蝸牛 舞はぬものならば
  むま  こ   うし   こ   く            ふみわら
 馬の子や牛の子に蹴ゑさせてん 踏破せてん
         うつく   ま          はな その    あそ
 まことに美しく舞うたらば 華の園まで遊ばせん
 
(408)
 

大意……

かたつむり舞いなさい、舞いなさい。舞わないのなら、
馬の子や牛の子に蹴らせようか。踏み割らせようか。
ちゃんと可愛らしく舞ったなら、きれいな花の庭に連れていって遊ばせてあげるよ






 宴会の席で、車座になってこの歌をはやすように人々が歌う真ん中で、白拍子が踊ったのでしょうか。気取りのない楽しい囃し歌です。滑稽で享楽的な華やかさのある歌です。

 同時に、「舞はぬものならば」に、言うことを聴かないなら殺してしまうよと言うような、この時代の強硬な面もはっきりと打ち出されているようです。

 いかにも謡うための言葉、という感じがします。『今様』が舞や踊りと密接に結びついた「歌謡」であるということが、本当に良くわかる歌だと思います。

 寂蓮法師(1139頃〜1202)の歌に、この今様をもとにしたと思われる「牛の子に踏ますな庭のかたつむり角のあるとて身をなたのみそ」というのがあります。こういうのも本歌取りというのでしょうか。


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