梁塵秘抄 巻第二 二句神歌

 
  こ         たまさか  あひ    ね     よ  ゆめ  いかが  み
 恋ひ恋ひて邂逅に逢ひて寝たる夜の夢は如何見る
 
 さしさしきしとたくとこそみれ
 
(460)
 

大意……

恋しくて恋しくて、その恋しい人とやっと逢えて抱き合った、その夜の夢は何を見よう。
互いの腕と腕を差し交わし、きしりと音がするほど抱きしめあう、そんな夢を見続けていたいよ。






 恋する人とひとつになってしまいたい、という意味の歌は『梁塵秘抄』な中に幾つもあるのですが、その中で一番好きなのがこの歌です。

 「さしさし」については色々な説があるようですが、ここでは「さし」を「指し」と見て、相手の方に腕を差し出していだきあう、という訳をとりました。

 久しぶりに逢うことが出来た恋人と、肌と肌を隙間なく寄せ合って、互いの腕を絡ませあって、「きしと」音がするほど抱きしめあう。さっきまで、うつつの夢にそうしていたけれど、疲れ果てて眠ったあとの本当の夢の中でも、そうしてずっと抱き合っていたい。

 エロチックかもしれないけれど決していやらしさは感じない。凝縮された詞の中に、荒けずりで、たくましく野性的な、けれど切ないまでの愛が感じられるようです。

 本当にそんな夢を見られたらいいね、と歌の主に言ってあげたい気がします。


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