えらーい人達
三人目       ヘルベルト・フォン・カラヤン ( KARAJAN, Herbert von )
                     (1908〜1989 オーストリア)
モーツァルトと同じザルツブルクに生まれた彼は、最初ピアノの神童と呼ばれ成長後 ウィーンで学んだ後田舎のウルム市立歌劇場からキャリアをスタートしている。その後ベルリン国立歌劇場、ベルリン・フィル等への客演で絶賛を博しスター街道まっしぐら。1956年からはベルリン・フィルの終身指揮者となり、ウィーン国立歌劇場、ウィーン・フィルとの殆ど3つの相手を指揮し、正に帝王として君臨。(この人ほど客演の少ない 有名指揮者は珍しい) しかし晩年はベルリン・フィルとの確執が修復されぬまま死去。ところでみなさんは、カラヤンが戦時中ナチス党員であった事実をご存じだろうか。 

1984年秋にベルリン・フィルを率いて来日した折りの大阪公演を聴いたのがひどく印象に残っている。演奏したのはR・シュトラウスの「ドン・ファン」、モーツァルトのK287のディヴェルティメント、レスピーギの「ローマの松」といったプログラムだった。オーケストラのあらゆるテクニックを見せつけるようなプログラムである。膝が悪く指揮台までヨタヨタと歩く彼に楽員の誰も手を貸そうとしなかったのはオケ側との衝突のせいだったのか、彼のプライドがそうさせなかったのかは分かりかねるが、演奏は素晴らしかった。モーツァルトで聴けた弦の美しさ、レスピーギでのまばゆいばかりの音の洪水は一種の快感だったと思う。しかし、文句無く見事だったのは十八番の「ドン・ファン」だった。ブラウのフルート、コッホのオーボエ、ライスターのクラリネット、ハウプトマンのホルン等のスター達の見事なプレイをはじめとしたオーケストラの機能性の極限を聴くようなものだった。ちなみにこの演奏会は翌月の各音楽雑誌で大変話題になった演奏会になった。なぜかというとカラヤンがなんと失敗しやり直しをやっちゃったのである。前述の「ドン・ファン」の冒頭フワッと丸い柔らかい予備動作で始めたかと思うやいなや、音はゴチャゴチャと訳の分からない状態になり、すぐさまカラヤンが両手を上げてオケを制止、コンマスの安永徹氏と数秒間打ち合わせの後再スタートとなったのである。しかしながらやり直しした「ドン・ファン」は前述のとおり見事だった。そんなわけで私は幸運(?)にも貴重なコンサートに巡り会えたのである。

カラヤンの演奏の良さは磨き抜いたレガートを基調にした粘着質の演奏にあると思う。又徹底してアンサンブルと音質にこだわっているとこも強く感じられる。ようするに彼好みの機能美というとこだろうか。従って、聴いて好きな演奏もそう言った性格の曲になってくる。だからカラヤンの演奏には曲によって多少好き嫌いが分かれるところがある。あまり好きになれないのがハイドンやベートーヴェン、マーラーといったあたり。ハイドン、ベートーヴェンはもっと突き刺すような切れの良いリズムが欲しくなるし、マーラーはカラヤンの世界とは少々無縁な気がする情念の固まりのような音楽である。これはやっぱりバーンスタインに頼りましょう。

カラヤンで好きなのはもう何と言ってもR・シュトラウスである。彼のシュトラウス演奏は、オケの機能性、歌謡性、むせかえるような色気等全てが備わっている。このカラヤン&ベルリン・フィルがシュトラウス演奏史上最高のカップリングだと思う。惜しいのはオペラの録音が少々少ない気がする点である。彼の指揮による「エレクトラ」や「アラベラ」聴きたいと思うのは僕だけではないはずである。

この他、チャイコフスキー、ドヴォルジャークもとても好きで聴くことが多い。メロディーを磨き抜いて歌わせているのでまさに惚れ惚れするような美しさである。カラヤンの演奏は基本的には特段奇抜なやり方はとらない、むしろ楽譜通りにアプローチを行っている。その点で言えばブラームスも結構気に入っている。第1や第2はかなり成功している例だと思う。又、一般的にはあまり評価されていると思えないが、僕がとっても好きなのがモーツァルトである。特に交響曲やディヴェルティメントは誠にもって流れの良い演奏で好きである。とりわけ第29番のイ長調の交響曲は私の愛聴盤となっている。

R・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」
          交響詩「ドン・ファン

R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
*まばゆいばかりの文句の付けようのない名演。映画「2001年宇宙の旅」で有名になった「ツァラ」の冒頭も映像抜きでこれだけ聴いてもスペクタクルっぽい迫力である。後の描写もなんと芸達者なことか。「ドン・ファン」は前述通りである。
演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 「ツァラ」1983年9月:「ドン・ファン」1983年2月 
    ベルリン・フィルハーモニー
ドヴォルジャーク:交響曲第9番「新世界より」
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ドヴォルザーク:交響曲第9番
*カラヤンのドヴォルジャークは人工的との批判もありますが、これほど芸達者なものを聴かされると抗しがたいものがあります。天性のメロディストの名曲を最高の指揮者と最高のオケで聴くのは最高の贅沢と思います。ターリッヒやクーベリックの演奏も最良のものですが、この演奏は全く別の楽しみなのです。
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 「新世界」1985年2月
     ムジークフェライン大ホール
  

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