えらーい人達 | |
四人目 ハンス・クナッパーツブッシュ ( KNAPPERTSBUSCH, Hans ) (1888〜1965 ドイツ) |
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1888年、ドイツ・エルバーフェルト生。2メートル近い大男だったクナッパーツブッシュ(以下”クナ”と呼ぶ)は、学校での勉強後は熱烈なワグネリアンだった事もあって、1909年からバイロイトで「指輪」の初演者でワーグナーの高弟ハンス・リヒターの助手を務め、以後歌劇場での下積みを経てバイエルン国立歌劇場音楽監督となり、戦後はウイーン、ミュンヘン、ベルリン、バイロイトにほとんど絞って国外へは出ず活躍。フルトヴェングラー等と並ぶ神様的マエストロ。ワーグナーとブルックナーは極めつけの十八番。遅いテンポ運びのが特徴。 |
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大男で口悪、大の練習嫌いで長旅付きの客演や骨の折れる録音もこれ又嫌い、芸風は大きなスケールの即興性を重要視。と書けばこの人が如何に個性的な音楽家であったか解ろう。当然残されたエピソードも多いが有名なのを二つ。両方とも振り慣れたウイーンでのエピソード。その1・オペラ「バラの騎士」の練習に現れるやいなや「君たちはこの曲はよく知っておるな?」”ハイ”「ウン、ワシもよく知って![]() |
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ワーグナー管弦楽曲集 | |
ローカル色を色濃く表出していた頃のウイーン・フィルとクナの実力の程を余すとこなく堪能できる超名演である。どの曲もワーグナー演奏を極めたものだがとりわけ「ウォータンの告別と魔の炎の音楽」は歌手がハンス・ホッターだったらと悔やまれる点を除くとオケはクナの睨みが凄まじいサウンドを引き出している。前半部分のクライマックスで歌手が「Del Gott!」と歌い終わった後のオケの間奏部分のクレッシェンドを聴けばこの指揮者のスケールの大きさがイヤと言うほど解るはずである。 (収録曲:1.夜明けとジークフリートのラインへの旅、2.ジークフリートの葬送行進曲3.「パルジファル」より・幼子の貴方がお母様の胸に抱かれているのを見た、4.「ヴァルキューレ」より・ウォータンの告別と魔の炎の音楽、5.「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死)S:キルステン・フラグスタード、ビルギット・ニルソン、Br:ジョージ・ロンドン、 ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 現役盤:DECCA KICC8405 |
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ワーグナー:楽劇「ヴァルキューレ」より第1幕 | |
![]() ワーグナー:ヴァルキューレ第1 |
ワーグナーの聖地で鍛えられたクナの演奏の醍醐味が聴ける素晴らしいこの録音が残されていたのは幸運だと思う。スヴァンホルムやフラグスタードと言った往年の名歌手の歌唱もすべてが指揮者のスケールの大きさに包まれている。もちろんオケがウイーン・フィルである点もこのアルバムの価値を高めるに充分すぎる名演である。 冒頭の前奏曲からして凄まじい疾風がオケから吹き上げてくる凄い表現だ。 クナ好きのみならず、ワーグナーが好きな人は是が非でも聴いて欲しい。 (ジークリンデ:クルステン・フラグスタード、ジークムント:セット・スヴァンホルム、 フンディング:アーノルド・ヴァン・ミル、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団) 録音:1957年10月ウイーン・ゾフィエンザール 現役盤:DECCAPOCLー4521 |
ワーグナー:舞台神聖祭典劇「パルジファル」全曲 | |
ワーグナー音楽の究極的この作品はそう気軽には聴き難い曲だが、この歴史的名演は紹介しないわけにはいかない。歌手、オケ、合唱の全てが神々しいベールに包まれた様な懐の深い響きは他では絶対に聴けないものだと思う。大変遅いテンポ運びの中で繰り広げられるその演奏はまさに大河の流れを見る思いがする。私がこの演奏でもう一つ楽しみなのがグルネマンツ役のホッターの歌唱が聴けることだ。暗く柔らかいすばらしい声を持つ今世紀を代表するワーグナー・バリトンの絶頂期の歌声が、しかも十八番の役で聴けるのだから言うことなしである。 (アンフォルタス:ジョージ・ロンドン、グルネマンツ:ハンス・ホッター、パルジファル:ジェス・トーマス、 クリングゾール:グスタフ・ナイトリンガー、バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団) 録音:1962年バイロイト音楽祭ライヴ PHILIPS PHCP24092〜5(4CD) |
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もう一つこの人ではずせないのがブルックナーの交響曲だ。悪名高い改訂版の楽譜を用いているのが難点だが、クナほどの人が振ると改訂版でも立派に聴けるのだからやはりさすがの芸風である。是非ご一聴を。 参考:クナファンの鈴木秀三さんの熱意あふれるサイトがあります。 |
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