えらーい人達
十人目         ジャクリーヌ・デュ・プレ ( DU PRE, Jacqueline )
                     (1945〜1987 イギリス)
1945年オックスフォード生。4才でチェロを始めピアノを弾く母から習い始めるが、10才時からは名教師ウィリアム・プリースの相弟子となり16才でデビューする。その後短期間ながら名チェリストポール・トルトゥリエやロストロポーヴィチにも教えを乞う。匿名のファンから銘器ストラディヴァイリウスを借り受けた彼女は飛ぶ鳥を落とす勢いで高い評価を得る。22才の時出会うことになったピアニストで指揮者のダニエル・バレンボイムと結ばれることになるが、28才の1973年彼女は恨むべき病「多発性硬化症」の診断を受ける。(感覚や運動機能四肢のマヒ、歩行困難、意識障害等が現れる原因不明の病)
車椅子の生活を余儀なくされるが指導等の仕事こなしつつ1983年以降は公の場から身を引き、1987年10月19日ロンドンの自宅で亡くなった。
若くして世を去り惜しまれている音楽家は多くいるがデュ・プレほどいまだに惜しまれる人は希だろうと思う。その演奏はまさに情熱の固まりのようなもので、下手に近寄ろうものなら火傷をしそうなくらいのテンションの高さがこの人の演奏の素晴らしいところ。一度聴いたらちとやそっとでは忘れられないものだ。

演奏する際、楽譜に忠実に、そしてそこから自己主張をしようとするものだが、デュ・プレの演奏はまさに楽譜から自由に羽ばたいた演奏そのもので、そこで聴かれる音楽は彼女の心の丈が暑い情熱でもって歌われるのである。エネルギーはこの上なく自由に、テンポは彼女の思いのままに揺れ動き、ダイナミックは主張したいところでは聴き手に突き刺さるが如く響いてくる。こんな演奏を一度聴いたら忘れられないのは当然である。
ドヴォルジャーク:チェロ協奏曲
出だしから強烈な印象を残す名演奏。超名曲だけに名演奏も目白押しの作品だがデュ・プレによるこの演奏は特別の輝きを失わない。
第1楽章の短い序奏の後入る独奏チェロの出だしの主題は、深く聴き手に突き刺さるように弾かれ始め、目まぐるしくその表情を変化させつつ終わりまで描ききる。聴き手を惹きつけて放さない演奏とはこういう演奏を指すものだとつくづく思う。名曲の名演奏。
指揮:ダニエル・バレンボイム・シカゴ交響楽団
エルガー:チェロ協奏曲
エルガーと言えば「威風堂々」しかご存知無い方には超一押しの名曲。エルガーらしい叙情性が充満している。また、この曲は昔から女流奏者が成功しているという不思議な面も持っている。デュ・プレはここでは激しい感情を若干抑えつつ、内向的な感情を吐露するような表現を繰り広げてくる。その後も女流チェロ奏者はこの曲を録音することが多いが、デュ・プレのものがどうしても比較の材料に出されてしまう。こんな名演を持ち出されては気の毒としか言いようがない気がする。
指揮:ダニエル・バレンボイム・フィラデルフィア管弦楽団
   

検索エンジン等の直リンクから来た方はここから本来のTOP-PAGEへ行けます