1 比を求めて

 3等分とは、ものを3分の1にすることですから、比を見つけなければなりません。本質的にはπの世界ですからそう簡単でないことは覚悟しておりました。しかし、「比は必ずある」と言う信念に立ちました。それは、物理を勉強しはじめてそう思うようになったのですが、自然法則(自然の原理を示す法則で、現象の記述は必ずしもそうではありません)は、ほとんど(全部だとは思いますが)比例で成り立っています。ですから、「自然は比で成り立っている」との確信に立ちました。比は掛け算(乗除の拡張である微分積分も含む)の世界ですから、計算によって必ず理屈は成り立つことになります。
 もちろん、比例による現象でも本質的には不思議です。ですが、この不思議はあまりにも規則正しさの不思議です。ですから人は探求します。でも足し算があった場合、それは魔法か手品でしかありえないことになります。なぜなら、理屈が合わないからです。これは不自然さを意味します。自然現象で複雑な現象の場合、なかなか法則が見つからない場合があります。その時とられる科学的手法の最も中心的なことは「保存則」「対称性」を合わせることです。それは、原理は必ず比例にあるはずだからです。こうしたことをこの年になって大学に入って勉強したからこそ、世界に現に存在するものなら「比は必ずある」との信念に立つことができました。

 角を扱うものに「弧度法」というものがありますが、「サインコサイン何になる」と言うように歌われていたことを思い出します。でもどうもこれは等分問題には不向きのようです。そこで径と角度の関係で何か規則性があるかどうかを探ることにしました。こうした問題に式を立てるところまでは勉強が進んでいませんので、作図を多用します。図はこれから等分を考えていくためのプラットフォームです。「径を倍にすると角度はどうなるか」という考え方です。これは普通、相平面と言われるものですが、ここでは少し考え方が違いますので、「中心座標」と呼ぶことにしました。訳は追々明らかとなるようにします。

図a.a

 第一弾が下の図ですが、最初に1rのところで45度の角を取ります。次に3角(最初の小さな扇)の頂点から底辺に対しての平行線を引きます。そして径を1r、2r、3rと増やしていきます。径を3倍にします。見ての通りです。たからと言って角度は1/3になってくれません。何故でしょう。当然です。径を増していくと弧の曲率が変わります。これでは思う通りにならないことは当たり前です。そこで今度は曲率を変えないことを考えました。
図a.b

 曲率を変えてはいけません。曲率は1rのままを使います。すなわち原点oから1rまでのコンパスをそのままにして、今度は1rの所に針を立て、2rから弧を描き、さらに2rの所にコンパスの針を立て、3rから弧を描きます。
図a.c

 これは最初の45度で描いた弧(これを扇と言います)を3回並べて描きます。そしてその3rの頂点に向かって引くとその線(赤線)は原点Oから15度の角度を得ます。これは45度の1/3です。これを式で書くと、まず基本となる扇が一つあります。これを「e扇」(基本の扇)とし、θを45度以下とし、これを順序対(x,y)で表して、式:(3扇θ,cosθ)=θ/3。一般式にすると、(nr扇,cosθ)=θ/nr です。
図a.d

 結果的に、1rの扇の角(45度)はそのまま、3rまで伸びて、45度折りまがり、形は少し曲尺とは違いますが、最初に作った形のまま回転して、45度を三等分したことになります。

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