【96年12月30日(月)】

安田火災、日本で Warranty Business に参入
(日経新聞 96.12.30)


【日経新聞の記事のポイント】

(注)AONはつい最近、Alexander&Alexander を買収したりし、とても元気でぴんぴんしているブローカーだ。

【「AONが Alexander and Alexander を買収」参照】


【97年10月22日追加】
大切なことがある。以下を良く読んでおいてほしい。
「Warranty で儲ける方法(逆説的に)」へ
−−−原コメント−−−

以上は米国のニュースではないので面白味が全くないが、以下に、Warranty ビジネスに関して米国の事情を紹介する。

アメリカで Warranty 保険は家電製品では極めて一般的になっており、Comp USA(Personal Computer)、WIZ(家電製品、電話・カメラ等)等の量販店で買い物をするとセールスマンから必ず勧められる。
(たとえば、300ドル程度のプリンターで、2年の延長(メーカー保証(1年)のあとの2年間ということ)をしたときに 30ドル、といった order の保険である。)
また、車のディーラーで新車を買ったときやタイヤを買ったときさえも勧められてびっくりしたた。新車はホンダで Extended Warranty、タイヤは単なる Warranty だったと記憶している。

しかし、僕は Warranty 保険は買わない。料率の仕組みや、保険会社が儲けていることを知っているからだ。

4年前に車を買おうとして、まず地元のディーラーに行って値段を聞いたときに、「マンハッタンのデイーラーは価格は安い事を言うが、買う段になっていろいろと additional なものを勧められて結局高い買い物になる。」とセールスマンが口を滑らせたのを聞き、僕は、「なるほど、良いことを聞いた。マンハッタンでセールスマンの言いなりにならずに上手に車だけ買えば安くなるのか。」と思い、マンハッタンで価格交渉をして車を買ったが、案の定、執拗に勧められたのが Extended Warranty だった。
僕はあっさり断わり、結局安く車を買った記憶がある。

Extended Warranty Insurance のポイントは、

米国の Warranty マーケット規模は、一説によると、保険ベースで 800MILドル(顧客が支払うのは手数料を上乗せし、その倍となる)という推定数字もある。 (通常、賠償責任種目として扱われる。正確な統計は見当たらない。)

米国では参入している会社は限られるものの、収益性は高いとも言われている。
全くの私見だが、製品の故障率の低い部分を狙って保険手配をしているという考え方もできるのではないか。
(工業製品の品質管理に少し詳しい人には常識だが、いわゆる工業製品の「故障発生率の "Bath Tub 曲線"」の、発生率の低いところを対象としていると見ることもできよう。

(注)工業製品の故障発生率を縦軸に、時間を横軸にとると、Bath Tubの断面図のように、使用開始直後の故障発生率が高く、その後、低い状態がしばらく続いたあと、ある時期(部品の寿命に近付く頃)を過ぎると再び急に故障が増え始める。初期の高故障率は部品自らの欠陥や組み立ての不良に起因するものであり、この部分は、通常、1年等のメーカー保証でカバーされている。 Extended Warranty は、初期故障が出つくし、製品が寿命に達する前までの、製品としては最も安定した時期を対象にしているという見方もできよう。

"PC関係はリスクが大きい(機器そのものの故障とプログラムの不具合の区別が付きにくく、アドミ業者の手数がかかる)" という話もあるが、やり方次第という面もあろう。
(アドミ業者を如何にうまく用い、数字を nicely に monitor して pricing に反映させる事。)

販売店は細かな事務を負担せずに顧客からの各種情報(クレームや製品の取扱等の質問)を収集できる。
したがって良いサービスプロバイダーを選ぶことがポイントだ。
サービスプロバイダーの対応の善し悪しは、製品の売れ行きにもダイレクトに響く。この意味でもサービスプロバイダーが一流である事が大切。
(電話をした顧客は、サービスプロバイダーをメーカーの技術センターだと思って会話する。したがって、テクニカルな面も含めて、プロバイダーの社員が対象商品を良く知っていることが必要。)

今回の安田火災とAONの提携は、CSK が AIG と組んで96年5月から始めたサービス(パソコン・プリンターの本体およ付属品対象)に引き続くものだが、今度の方が相当規模が大きいようだ。
日本でも Warranty Insurance は急速に普及する可能性がある。

米国で、従来は企業の自家保険だった Extended Warranty Insurance 普及にはずみがついたのは、FASB105 (MAR.1990)によって企業が社内で保証・修理費用に関して積み立てる reserve に対して費用性が認められなくなったため、Extended Warranty を購入することによって保険料という費用に転化するようになったことも一役買っていると言われている。

日本でも、税制改正で企業の製品保証引当金の損金性が認められなくなる可能性もあり、従来の製品保証部分(これは "Extended" ではないが)の保険普及にはずみがつく可能性がある。
(参考)FASB105 appendix A ex4(MAR.1990)
FASB107 8e(DEC.1991)

金が動くところには常に(動かなくても時々)保険ビジネスのタネがある。故障して修理するというニーズがあれば、保険ニーズがあっても当然だ。

その昔、日本の損保会社の商品開発部にいたころ(1985年頃)、興味があって若干(ほんのちょっと)研究した事があったが、そのときは、「リスクが大きすぎる。時期尚早。」ということで御蔵入りとなった記憶がある。
当時は現在ほど「自由化」などと騒がれておらず、「1社が先行して進めるのもどうか。」という配慮もあったため、当時の判断としてはまあ、正しかったのだが、10年を経て、時代は完全に変わりつつある。

ある会社がやらなくても他の会社がやる。やるからには、もちろんリスクを伴う。大切な事は、市場を読むセンスを磨いておく事。
また、さらに、
・行けると思ったら一気に進むこと。
・リスクを測定し、ミニマイズすること。
・一定の範囲で腹をくくること。

そして何よりも、
・早く動くことだ。


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