◆ コイヘルペスウイルス病(Koi HerpesVirus KHV )について |
最新情報は、末尾に追加していきます。
● 平成15年11月2日に、農林水産省が茨城県の霞ヶ浦においてコイヘルペスウイルス病を疑うコイを確認したと発表して以来、青森、山梨、三重、宮崎と各地でコイヘルペスウイルス病の発生が報告されています。農林水産省でも感染経路の特定をはじめとして、この病気の拡散防止について努めているところですが、今回は、このコイヘルペスウイルス病について、ご報告致します。(ちなみに、ヘルペスとは、皮膚に小水疱(すいほう)が群がって生じた状態をさす病名で、一般に、疱疹(ほうしん)とよばれています。
● コイヘルペスウイルス病(Koi HerpesVirus KHV)は、1998年5月にイスラエルにて、最初の発症の報告がなされました。その後、同国において、同年の秋、および翌年の春と2度の発症によって、輸出用のコイを含めて約600トンのコイが死滅してしまい、被害総額は400万ドルを超えるものとなってしまいました。 この病気の特徴としては、非常に感染力が高いことがあげられますが、しかし、同じ池にありながら、金魚等のいくつかの種によっては感染されないことが分かっています。発症までの潜伏期間は3週間程度とされており、地域内のすべてのコイに影響を与えます。また、コイの死亡率は、調査の結果一貫して80%という結果報告が出ています。 イスラエルのCentral Fish Health Laboratory(中央魚健康研究所)による調査では、18〜27℃の水温により発症が認められることから、特定の温度が引き金になっていると考えられています。
● 症状としては、比較的浅い場所をゆっくりとあえぐように泳ぐ症状が現れます。外見的な特徴としては、エラ組織の破壊、および多くの粘液を含んだ表皮の出血、ヒレの腐敗や変色などが見られ、内部的には、肝臓や腎臓の点状出血が認められています。病気に罹ったコイの血液検査によると、低蛋白症、並びに肝臓の機能障害が生じていることが分かりました。
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イスラエルのCentral Fish Health Laboratory(中央魚健康研究所)のIzhak Bejerano博士の研究チームによる長年の研究の結果、この症状を引き起こすウイルスが、ヘルペスウイルスに似させる20面体形態を持つ二重螺旋構造のDNAウイルスかも知れないという報告を発表しました。 もしも、この報告通り通りだとすれば、ヘルペスウイルスの特性である潜伏期間が、このコイのウイルスには当てはまらないかも知れないという事が考えられますので、ヘルペスという名称の変更このことは、勿論ですが、このコイウイルスに感染してしまった各河川や養魚場などの迅速な回復をもたらすことが期待されると言っても良いのかも知れません。
● コイヘルペスウイルスと水温の関係についての調査報告
アメリカ・カリフォルニア大学デービス校、イギリス・ウェイマス研究所、および、イスラエル・ハダーサ医科大学が共同で、コイヘルペスウイルスに感染した鯉の水温変化に伴う死亡状況を調査する研究が行われました。 それによると、7つの異なる地域から集められたコイヘルペスウイルス(KHV)のビリオン・ポリペプチド(ウイルス粒子のアミノ酸配列)およびゲノム(遺伝子情報)を比較調査したところ、1つの例外を除いて、それらが同じグループに属するものであることがわかりました。 また、KHVの発症に伴う主たる環境要因のひとつとして、水温が影響を与えている事がわかりました。それによると、鯉のヒレ細胞上のKHVは、15〜25℃の時に最も活発となり、4℃、または、10℃の低温、あるいは30℃・37℃の水温の場合、ほとんどウイルスの活動は認められませんでした。また、23℃の水温での実験では、最大で95.2%(89.4〜95.2%)の鯉が死滅してしまいました。18℃の水温では、死亡率85.0%ですが、13℃の時では、ほとんど見られませんでした。 このことから、水温13〜23℃の時に、もっともウイルスの被害が生じるといえます。 Ronald Hedrick 博士
● KHV(Koi HerpesVirus)からCNGV(Carp Nephritis and Gill necrosis Virus)へ コイ ヘルペス ウイルス から コイ ネフライティス アンド ジル ネクロウシィス ウイルス へ
KHVが、ヘルペスウイルスに似させた20面体形態を持つ二重螺旋構造のDNAウイルスかも知れないことは、以前に記しましたが、ヘブライ大学・ハダッサ医療機構の Ariel Ronen博士 らによって、この病気を引き起こすウイルスが突き止められました。 それによると、この病気に罹っていたコイの腎臓細胞から抽出されたウイルスが、従来から言われていたウイルスであることが証明されました。しかし、KHVと考えられていたウイルスは、ヘルペスウイルスに似ている形態を持っていましたが、分離されたウイルスは、既知のウイルスに似ている点も持っていましたが、今までには見られなかった未分類のウイルスであることが分かりました。そういう点から考えて、ヘルペスウイルスと呼ぶには問題があり、腎炎とエラを壊死させてしまうウイルスという観点から、KHVというよりもCNGV(鯉腎炎およびエラの壊疽を引き起こすウイルス)と呼ぶのがふさわしいと言えます。今後は、CNGVという呼称で呼ばれていくのではないかと思われます。 また、このウイルスは、18〜25℃の時に最も活動が活発となりますが、30℃以上になるとウイルスが死滅してしまうことも突き止められています。その点から、この病気に罹ったコイを3〜5日間23℃の水温で育成し、その後、ウイルスの増殖を阻害する30℃の水温に移して、ウイルスに対する抗体を持たせた鯉から抽出された血清が、このウイルスに対する抗体としての働きがあることが証明されました。それによって、ウイルス抗体ワクチンの開発が成功し、このワクチンを接種したコイは、このウイルスに対する抗体を持つことが実証されました。 このワクチンが、広く普及していけば、ウイルスによるコイの致命的なダメージから解放される日も近いと思われます。 ● KHV(CNGV)とSVCの違いについて、別項目をたてて記載しました。
KHVに関する内容については、新しい情報が入り次第、補足していきたいと思います。
KHVについては、下記の記事も併せてご覧下さい。
全日本錦鯉振興会(コイヘルペスウィルス病発生の経過とその対応) 農林水産省(コイヘルペスウイルス病に関する情報) |
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