玉井彰の一言 2002年11月 四国の星ホーム前月翌月

[2002/11/13] 西尾私案

政府の地方制度調査会に西尾勝副会長が提出した私案は、一定規模以上の市町村を基礎自治体とし、合併しない小規模自治体は事務権限を縮小したり基礎自治体に編入させるという内容のものです。

合併特例法の期限までに合併しなかった場合、法律に規定する人口規模以下の自治体は財政支援なしに合併を推進し、さらに、それでも合併しなければ、「特例的自治体」として事務を窓口業務に限定して県が代行し、あるいは、県議会の議決により知事が基礎的自治体に編入させます。

中央集権の発想丸出しの案です。「自治」には様々なあり方が考えられ、それは住民が判断すべき事柄です。自治体がトータルな行政サービスを提供出来ない場合には「県」が助けるべきです。その為の県ではないでしょうか。しかも、自治体の意向を尊重して、県が自治体を補完する形でサービスを提供すべきです。

下々の小さな自治体は邪魔な金食い虫だ。踏み潰せ。「国民」は一定の行政サービスが施されていればそれで満足なはずだ。小集落のくせに「自治」などと高望みをするな。「西尾私案」はそういう発想だと思います。


[2002/11/12] 需要と供給のギャップ

現在の不況は、当然のことながら、需要と供給にアンバランスがあるからです。需要を増やそうとして公共事業を行ってもさほど効果がありません。低金利にしてもお金を使ってくれません。高齢者が安心してお金を使える環境にはなく、また、お金を使いたくなるモノやサービスも開発されていません。需要増加による解決は困難な情勢にあります。

供給の側を見ると、建設業において顕著ですが、死に体の企業が債務免除で生きながらえています。債務免除により身軽になって低価格で受注できるようになり、血のにじむ企業努力をして債務を返済した企業が馬鹿を見ることになっています。銀行経営者の自己保身のために問題企業を存続させ、真っ当なビジネスを阻害し、産業界に深刻なモラルハザードを起こしているのです。

供給過剰であることを認識して、大手の問題企業を整理することがなければ、現在の不況を脱出することは出来ないのではないでしょうか。しかしながら、このことを政府サイドが強調すると、大手銀行の経営者は中小企業への貸し渋りや貸しはがしを行うことをほのめかして自己の責任回避を図ろうとします。下手をすると、大手問題企業の退場の前に中小企業にしわ寄せが来る形になります。


[2002/11/11] 地域の核

全国レベルでの人口減少が数年後に始まります。国策としての平成の市町村合併は、人口減少を前提として、国民が都市部に集約して住むことにより、効率的な投資が出来るとの認識に立脚するものだろうと思います。「周辺」となる自治体は、早晩「店じまい」することになります。

「店じまい」しないためには、各自治体の住民が集約して居住することが必要です。地域に「核」をつくり、小さくてもキラリと光る中心を持つことを戦略的に追求すべきです。

中心市街地の活性化は、合併へのうねりの中で地域バランスを追求する世論に押されて「忘却」される可能性があります。しかし、合併を真剣に考えるならば、「中心性」を喪失しない工夫がより必要になります。合併した自治体の中心部だけではなく、中心部になれなかった地域が総崩れしない為の防衛策として地域の核を持つことが必要です。


[2002/11/10] 雇用保険と公務員

公務員に雇用保険加入が認められていないのは問題です。公務員の身分保障に対応しているのでしょうが、公務員にも転職の自由を確保すべきです。

公務員の仕事ぶりへの批判をよく耳にします。しかし、身分が保障されているけれども、失業給付がないため転職が実際上難しく、自分が公務員に向いていないと判断した場合の身の処し方が困難であることへの配慮もしてあげるべきです。

国と地方の行政改革は、公務員が「労働者」であることを正面から認めることが出発点です。自治体経営が困難であるのは、民間企業と同様の雇用ができず、適材適所の人材活用が困難であるためです。

市町村に「倒産の自由」を認め(それに対応して国や県の干渉を排除し)、公務員に労働基本権を認め、「労使」が真剣に自治体の将来について話し合って、雇用条件を含めた様々な事項を決めるべきです。公務員の主体性を尊重し、もっと信頼すればいいのです。

過渡期には、公務員の雇用保険加入期間を問題にすることなく失業給付を行うべきだと思います。


[2002/11/09] 雇用保険・失業給付のあり方

失業給付は、のんびり遊ぼうとする人にではなく、真剣に就職活動をしている人、能力開発に励んでいる人に手厚く給付されるように配慮されるべきです。能力開発については、教育クーポン券を給付し、民間の教育機関で利用できるようにすべきです。現金(生活費)プラス教育クーポン券という組合せも考えられるでしょう。

これからは、雇用の場を求めるよりも自ら起業することが期待されます。起業を促進する必要があります。起業のための企画書が提出されれば、現実の起業を条件として、大幅な割増給付を行うべきです。

企業の経営者にも雇用保険加入を認めるべきです。失敗すれば全てを失うのではなく、やり直しが出来る社会にすべきです。


[2002/11/08] 視野の拡大を

残念なことに、市町村合併問題を論ずるほとんどの方は、市町村合併問題のみを論じ、しかも自分の自治体や周辺地区がどうなるのかということにのみ関心を持ちます。

市町村合併問題は、切り口如何によっては新たな自治の可能性を発見できる契機を含んでいます。しかし、合併問題の本質を見ることなく、身の回りのことのみを論ずる姿勢では駄目だと思います。

中央集権国家・日本をどう考えるか、道州制と市町村合併をどうリンクさせるか、という視点を持たない合併論は、中央依存体質から脱皮できない議論に終始するでしょう。


[2002/11/07] 「定年ゴジラ」

重松清著「定年ゴジラ」はお薦めの一冊。東京の郊外にあるニュータウンで定年を迎えた山崎さん。同じような世帯を想定して分譲されたニュータウンでは同じ世代の家族が同じ地区に住んでおり、山崎さんと同様、そこそこの企業で同じように企業戦士としてサラリーマン生活を終えた男達がいます。

定年を迎えた男達に共通する悩みや生き甲斐を丁寧に描いた小説です。まだ定年にならない方(もっと先だと思っている方)が読むと面白いでしょう。


[2002/11/06] 釧路市長逮捕(2)

釧路市長の公職選挙法違反は、合併特例債を得るためには平成17年3月の期限切れまでに合併しなければならないという焦りがあったのだろうとの指摘が新聞紙上でありました。

合併特例債という借金をあてにした自治体経営は、早晩自転車操業に陥ることになります。それにもかかわらず、あえて違法行為を犯してまで特例債にすがりつくのは、目先のことしか見えなくなっているとしか思えません。

地域の将来ビジョンを明示して合併しようなどという所はほとんどない状態です。国が地方交付税を絞り込んでいる現状では、自治体の責任者は10年先のことも考えられなくなるのです。

交付税の減額が国家経営の失敗のよる財政破綻が原因であることを国は言いません。今回の合併論議は、国がまず謝罪するところから始められるべきです。


[2002/11/05] 釧路市長逮捕

隣町の町長選挙で合併推進派を当選させようとして票の取り纏めを依頼したとして釧路市長が公職選挙法違反(地位利用行為)で逮捕されました。

合併が進まないことに焦りを感じたということのようです。何故焦るのでしょうか。首長が所詮中間管理職でしかないということかも知れません。合併を推進することにより点数を稼ぎ、自分の政策を実現するに当たり国や道に協力してもらおうとの思惑があったからでしょう。馬鹿げた話ですが、現在の地方自治の哀しい一面を象徴する話です。

もっとも、自分の選挙でも危ない橋を渡っているのでしょう。たまたま塀の内側に落ちただけかも知れません。


[2002/11/04] リレーシンポジウム

「市町村合併をともに考える全国リレーシンポジウム2002IN愛媛」が伊予市で開催され、参加しました。政府、県、地方紙等の主催です。

合併の体験談やパネルディスカッションがありました。当然のことながら、合併を前向きに捉えようという内容でした。これで納得できるのなら幸せでしょう。

今回の合併は、「無駄を省こう」と言って、4LDKの家から6畳のアパートに引っ越すようなものです。親父さんが株でしくじったので家を売らなくてはならなくなったというのと似ています。正直に「お父さんが悪かった」と言って謝ればいいのに・・・・

21世紀における国のあり方(中央集権で行くのかどうか)、中間団体である「県」のあり方、基礎自治体である市町村のあり方が三位一体で論じられてこそ実りある議論が出来るのですが、市町村の合併に矮小化する形で乗り切ろうとするところに、この国の政治の姑息さが表れています。


[2002/11/03] 叙勲

秋の叙勲の発表がありました。勲1等や上位が政治家や官僚に割り振られるということが何時まで続くのでしょうか。

民間で頑張った人が勲1等となるのが当たり前だと思います。下世話な言い方ですが、「誰に食わせてもらってきたのか」ということです。公務員は民間の方々の税金で食わせてもらっているのです。民主国家において、「官」は下座に座るべきです。この、当たり前の感覚が通用しないのが不思議です。

暫くは、勲1等をもらって喜ぶ、考えのない政治家の名前を見て馬鹿にするしかありません。最近の若手政治家はこのくらいの改革はしてくれるのだろうと思いますが、どうなんでしょうか。


[2002/11/02] 折り込みチラシの拒否

全国的にそうなのか、愛媛特有の現象なのか、現在、折り込みチラシを扱う業者が市議会議員の市政報告の折込を拒否しています。

チラシ折込は、表現の伝達手段としては郵便などに比べて低廉であり、情報発信手段が限られている地方議員にとっては、政治活動の手段としては重要な意義があります。

市議会議員の市政報告は議員活動を市民に発表するものであり、政治活動の一環をなすものであるとともに、表現の自由として憲法上保障されるものです。

勿論、特定団体や個人の名誉を毀損する場合には問題があります。しかし、そうでない限りチラシ折込の拒否は出来ないはずです。

国民の政治離れは深刻です。然るに、民間企業とは言え、市民から政治を遠ざけ、議員の言論を封殺するような行為には憤りを感じます。


[2002/11/01] 迅速な裁判

憲法37条1項は、刑事被告人の権利として迅速な公開裁判を受ける権利を保障しています。しかしながら、現実には、裁判には長い時間がかかります。オウム真理教事件では麻原彰晃への判決は何時になるか分かりません。しかし、それでは何のための刑罰なのか疑問になります。また、一般的には、被告人にとっても刑罰以上の苦痛を与えることになります。

私は、裁判には3年以上掛けない(軽微なものはもっと短縮する)こととし、その代わり、判決後3年間は一事不再理(二重の危険禁止)の適用を制限すべきだと思います。後から判決を覆す重大な証拠が出ることもあるからです。

一事不再理とは、裁判が確定した以上、同じ事件は二度と取り上げない原則を言います。刑事事件の場合、被告人に二度も訴追の苦しみを与えるべきではないことを根拠とします。

しかし、人生を棒に振るほど長い裁判を1回だけ認めるよりも、変更があるかも知れないが、トータル6年で解放される方が苦しみは少ないと思います。


玉井彰の一言 2002年11月 四国の星ホーム前月翌月