玉井彰の一言 2003年9月 四国の星ホーム前月翌月

[2003/09/30]  猪瀬直樹氏

作家の猪瀬直樹氏が小泉内閣の応援団をやっています。彼が主張してきた道路公団等の特殊法人改革に小泉氏が手を下しかけたことへの恩義かも知れません。

週刊文春9月25日号で面白い記事を見ました(ニュースの考古学)。猪瀬氏は、自民党総裁選挙で小泉氏以外の候補が、地方が疲弊していると主張し、駅前がシャッター通りだと述べたことを笑い飛ばし、駅前商店街は鉄道を中心とした旧世界であり、バイパスや高速インター付近のスーパーや安売り家電店が繁盛していることなどを挙げ、地方は寂れてなどいないとしています。

一面の真理を見ていますが、これは偏った見方ではないでしょうか。地方にも人が住んでいるのですから、どこかで買い物をします。大型店は出店に当たりそれなりの調査をしており、繁盛するのはある意味で当たり前です。

現在でも9割の人はそれなりにやっています。問題は、1割の人に痛みが集中している点にあります。痛みが集中している所の象徴として、駅前商店街があります。消費の減退が、最も弱い商業施設に顕著に表れていると考えるのがまともな解釈ではないでしょうか。

繁盛店があることを引き合いに出して地方が寂れていないと論ずるのは、論証として如何なものでしょうか。あたかも、平壌の市民を見て北朝鮮を論ずるようなものです。

地方経済が疲弊しているのかどうかは、地方経済における生産から消費にかけてのサイクルがどうなっているのかを総合的に観察することによって見えてくる問題です。商店街の問題もスーパーの問題も決め手にはなりません。いくら地方とは言っても、この先進国日本で、買い物をする人がいるから疲弊していないなどと言うのは、余りにも地方を馬鹿にした話です。

私のように、超高齢社会を見据えて、車社会に適応できない方々のための都市構造に関心を持つ者からすると、猪瀬氏の冷たい視線は、小泉内閣の地方軽視、地方切り捨て路線を象徴する発言としか受け取れません。


[2003/09/29]  ひどすぎる!劣化ウラン弾使用

28日のテレビ朝日系・サンデープロジェクトの特集「検証アメリカの戦争(1) 見殺しにされた兵士 〜米国が隠すイラク戦争『死の兵器』〜」を見ました。

イラク戦争でアメリカが使用した秘密兵器が劣化ウラン弾でした。「小さな核兵器」と呼ばれる核のゴミから作られた最強の対戦車用兵器です。湾岸戦争で使用して以降、使用された地域では住民のがんや奇病が急増しました。

米軍兵士たちにも被害が及んでいます。元兵士達がアメリカ政府に告発しても、政府は劣化ウラン弾が安全だと主張し、使用し続けます。劣化ウラン弾の危険性を警告するマニュアルを作った事実がありながらです。

アメリカのマスコミも及び腰のようです。国家が安上がりの強力兵器に頼ることを受けての「政治的判断」なのでしょう。「自由の国」の看板には偽りがありそうです。

イラクでは、バグダッドなどの都市部でも劣化ウランが使用されています。アメリカがイラクでの劣化ウラン使用を認めているにもかかわらず、日本の外務省はこれを認めません。

自衛隊がイラクに派遣されるということは、劣化ウランによる被爆の危険もあるということです。このことをもっと議論して欲しいものです。


[2003/09/28]  マニフェストと高速道路無料化

民主党のマニフェストに高速道路無料化が記載されていることが、総選挙で大きな争点になる可能性があります。

道路公団民営化とは全く路線を異にするものであり、対照的な政策となります。財源の問題を含め、議論を深めていくべきです。道路公団そのものが不要であることの説明、地方のインフラとしての高速道路の必要性と、高速道無料化の地域振興への波及効果を説得的に展開すべきだと思います。

課金の問題も検討すべきです。ナンバープレートに課税するのかどうか。私は、課金すべきだと思います。高速交通システムへのアクセス料金と考えるべきです。インターネットへの(使い放題の)接続料金と同じように考えます。

高速道路を利用しない車には課金しないようにします。その代わり、ETC車載器設置(無料)を課金免除の条件とし、課金免除の車が高速道路を走った場合は自動的に課金されるシステムを導入します。この場合は、高い料金に設定しておきます。

道路公団民営化の路線は、骨抜きの為のたくらみが周到に練られてくるでしょう。石原大臣では荷が重いと思われます。


[2003/09/27]  貯蓄ない世帯・全世帯の2割 

金融広報中央委員会が22日発表した家計の金融資産に関する世論調査によると、貯蓄のない世帯が全体の21.8%となり、1963年の調査開始時(22.2%)に次ぐ40年ぶりの高水準となりました。また、前年より貯蓄が減ったと回答した世帯が51.1%となり、3年連続で増加しました。収入減で貯蓄を取り崩した世帯が6割に上ったためです。

金融資産を保有する世帯の保有資産の平均額は前年比38万円増の1460万円と過去最高を更新しています。平均額を下げていた少額貯蓄世帯が無貯蓄世帯になって資産保有世帯から外れたり、高額保有世帯が増えたためです。

持つ者と持たざる者の二極化が進んでいることが浮き彫りになっています。老後の生活については、60歳未満の約45%が「非常に心配」と回答しました。前年比、7.4%増。

格差の広がりが気になります。階層の固定化ということも問題になってくると思われます。このような世相の中で、名門中心の世襲政権である小泉内閣は、富める者がより豊かになる社会を目指します。

国民が痛みに耐えた後には、死屍累々の光景が広がってくるのかも知れません。マニュアルを見ながら趣味的な手術をする医師がいる昨今です。名門の閣僚の方々は、実験的な政策を楽しみながら行うのでしょう。


[2003/09/26]  石原慎太郎は万死に値する

「田中均なる者の売国行為は万死に値するからああいう表現をした」 

「片言隻句にバカなメディアがダボハゼのごとく食いついた」

東京都の石原慎太郎知事は、25日の都議会で外務省の田中均審議官宅の不審物事件に関し、「爆弾を仕掛けられて当然だ」などと発言したことについて質問され、こう述べました。 

石原氏は、「いかなるテロも容認できないことは法治国家にあっては論をまたない」と答えつつ、従来の外務省批判を展開しました。田中審議官については「売国だと思う。だから万死に値するということで、ああいう表現をした」と述べ、さらに、自分の発言について「ゴルフでいえばパーオン。国民はこれをきっかけに外務省が何をやったか認識し直してくれた」と自賛しています。 

屁理屈です。公人が、発言の意図と発言の効果との区別を理解できないのではどうにもなりません。石原発言は、意図はどうあれ、テロリストを勇気付ける可能性を内包します。

ピストルでイノシシを狙った。偶々人に当たった(あるいは当たる可能性あった)が、私の意図するところとは違っているので責任はないと言い張るのでしょうか。

どの様な形であれ、テロリストが喜ぶような発言を公人が行ってはいけません。自制心と反省がない人物。

石原慎太郎は万死に値する。私はそう思う。


[2003/09/25]  政権の選択

小選挙区制のメリットは、有権者が政権選択が出来るということです。11月に予想される総選挙では、自民党か民主党かの選択になります。

社民党、共産党については、自民党とセットで考えるべきでしょう。自民党政権を前提とした批判票として両党に投票することになります。

まず、自民党政権か民主党政権かを選択する。自民党でも良いと考えた上で、社民あるいは共産でバランスを取る、という順序で考えるべきでしょう。

各政党を均等に眺めて自分の考えに近い政党を選ぶのが本当だろうと言われるかも知れません。しかし、自民党政権を倒したいから社民党に1票入れるというのは、現在の党勢からして無理があります。社民党への1票は、政権選択という意味では自民党への1票とカウントされることになります。

勿論、民主党が自民党に勝つことが予想されるならこの逆になりますが、政権党に対するチャレンジャーとしての野党・民主党という捉え方が一般的だろうと思います。

社民党、共産党の支持者は、突き詰めると、自民党政権の方が安心だという方が多いようです。政権交代に慣れていない国民ではあります。


[2003/09/24]  世襲内閣

世襲政治家が主流の内閣。国民の痛みが最も分かりにくい人達が内閣の主要メンバー。

自民党幹事長・安部晋三氏は、核武装論者です。ポケットマネーで核シェルターを買える御身分の彼は、この国が唯一の被爆国であることには何の思いも感傷も持ちません。

「悪役」・野中広務氏が戦争体験の中から平和を叫び続ける姿をあざ笑う、異質の政治家達がこの国の舵取りをしています。

この国は、経済の面でも治安の面でも15年前とは別の国になっています。今のところ、痛みが一部の人に集中しています。大多数の人は、自分は逃げ切れると思っていますが、「不幸の籤(くじ)」を明日引いてしまうかも知れません。

国民は、小泉家・安部家の末永い繁栄のために「清き一票」を捧げるのでしょうか。


[2003/09/23]  人事圧力

小泉内閣の改造人事を見ていると、従来の党内的人事圧力からはある程度自由であるとの評価が可能です。

政権交代ということを気にせず、党内のバランスだけを考えた人事が行われた時代は去りました。

民主・自由両党の合併効果の1つと見ることも可能です。


[2003/09/22]  安部幹事長

人気の高い安倍晋三官房副長官が自民党幹事長に抜擢されました。この人事は自民党にとってプラスになるでしょう。しかし、小泉政権がマスコミ対策だけの政権だということを如実に示した人事でもあります。

高支持率内閣での総選挙は、一般論としては与党にとって有利です。国民の多くは、収入を減らしながらも、「しかたがない」という諦めで毎日を過ごし、みんなが支持している内閣だから、他に良い人がいないから、という理由で小泉内閣を「支持」しています。

内閣にも「目玉」をつくるのでしょう。「改革」の言葉だけが踊る小泉政権。マスコミ誘導型でこの国が衰退の道を決定的にしていくのか、小泉氏の本質を国民が見極めるのか、この国の真の力量が試されています。


[2003/09/21]  おこぼれ頂戴型の自治

私は、地方議員・首長を内野手、国会議員を外野手であると考えています。国民・住民に近い場所に居て、身近な問題を解決するのが地方政治です。これに対し、国の外交・防衛問題に取り組むのが国政です。

ところが、我が国の政治は、国が地方の事務を侵害し、事細かに規制します。地方政治が国政に従属し、「おこぼれ頂戴型」の自治になっています。このことが問題であるということを自覚できる地方政治家は少数です。国が全ての事柄を決めてくれる。国に付いていくのが地方政治であると心から思っている方が多数です。

この部分を根本的に変革することが国にとっても地方にとっても大切です。地方政治に携わる者がプライドを持ち、地方のことは地方で決めるという当たり前の気持ちになることなしに地方の自立はありません。

おこぼれ頂戴型自治からの脱却が必要です。しかし、現実は合併特例債というおこぼれに涎を垂らし、自主的な判断を放棄する自治体が多数派です。


[2003/09/20]  人口減少と地価下落

2006年以降に予想される全国的な人口減少は、地価下落をさらに推し進める要因になるでしょう。

既に人口減少が始まっている地域で人口減少が折り込まれているのかは不明ですが、地価を見るとまだまだ高めであるとの印象を持ちます。

多くの地域では、人口増加社会のイメージから脱却できていません。人口減少社会のイメージが定着すると、地方での地価下落は決定的になるのではないでしょうか。

大都市部で予想される「逆バブル」解消とは対照的な地方の地価下落が、地方の人々の意識改革に結びつけば、土地にしがみつく意識が改められることにより、プラス面も期待できます。

しかし、現状では、市街化(調整)区域の線引きをゆるめて都市の拡大を進めようとする時代錯誤的主張がまかり通っています。

頭を打ってから、「痛い!」と言ってもらうしかないのが、地方の実情です。


[2003/09/19]  地価下落

今年7月1日現在での全国の基準地価が発表されました。大都市圏と地方都市とでは様相を異にしており、また「地価の個別化」という傾向も見られます。

19日付日本経済新聞・社説に注目しました。「地方都市の中心部の空洞化」の問題です。

「人口10万人以上の114地方都市の最高価格地の平均下落率は13.6%で、商業地の同10.5%をかなり上回っている。大型店の撤退などにより、中心部の下落率が周囲より大きいことを示している。」と、地方都市中心部の凋落ぶりを指摘。

「人口増加を背景に公共施設を郊外に分散させるなど無秩序な拡大政策を推し進めた付けが回っている。中心市街地の活性化策も地価を押し上げるほどの効果を上げていない。人口が減少へと向かう過程で、地方都市が軒並み衰退する恐れがある。」との警告を発しています。

「地価を通して見れば、経済の回復も東京一極繁栄型になっている。政府の都市再生策は大都市中心だが、地方都市の再生も重い課題である。」との結論には同感です。

中心部に魅力のない都市は、地域間・都市間競争に後れを取ります。地域の中心都市が凋落することになれば、その地域の全体の衰退に繋がることにもなります。「まちづくり」の重要性を再認識します。


[2003/09/18]  国民年金の未納

国民年金の未納率が4割近くあるということで、年金制度の将来が危惧されています。

しかし、不思議なことがあります。未納者が過去に遡って支払いたいと言っても、2年分しか受け取ってくれないのです。

どういう理由なのかは分かりません。金利のことを気にしているのなら、例えば5年前の銀行の貸し出し金利が5%なら、割増保険料を金利5%+αで計算して、その分余計にもらえば良いと思います。ペナルティのつもりなのかも知れませんが、もっとセンスの良いペナルティがあるのではないでしょうか。

人生色々あります。あるときは金がなくても、仕事が上手く行って収入が増える場合もあります。「そうだ。未納の年金を支払おう」と思っても、2年分しか受け取らないよ、と言われると、2年分支払ったところでそれ程のこともないから、今後は支払うのをやめようということになりそうです。

「未納率が4割で年金制度崩壊だ!」などと大騒ぎしている割には、理解しがたい話です。

(理由を調べるのが私の仕事かな?)


[2003/09/17]  クリーンな軍部

ここ2年半の政治情勢を考えると、戦前の政党政治が行き詰まり、軍部への期待が高まった時の状況が重なって見えます。

小泉氏の人気の少なくともある部分は、クリーンな政治家であり、私利私欲で行動しているのではないという風に見えるところにあるのだろうと思います。

この「クリーン」というところが曲者です。戦前の人々も、政党政治の腐敗ぶりに辟易して、クリーンな軍部に期待しました。

軍部の支配により、表面的にはクリーンな政治が実現しましたが、国の運命は大きく狂いました。小泉政権が自民党の表紙としてあと3年存続するとすれば、日本の運命はどうなるのでしょうか。

本当は、ここで歴史的使命を終えた官僚機構に政治が切り込む必要があります。しかし、小泉氏にはその意思も能力もありません。「構造改革」の呪文の効能が切れる頃には、小泉氏の役割も終わります。自民党が政権党で居続けられたということだけが小泉政権の業績であったということになるのでしょう。目的のない自民党にとっては、政権を維持できたことだけで大きな功績になります。

98年の自民党総裁選挙で、田中真紀子氏は小渕恵三、梶山静六、小泉純一郎の立候補者3人を評して、「凡人、軍人、変人」と言いました。しかし、今になって思うと、小泉氏が「軍人」だったのではないでしょうか。

次の総選挙で国民が小泉氏を信任するとすれば、ここで失う3年間で国家の運命が大きく狂うのではないかと思います。

クリーンというけれども、百戦錬磨の野中広務氏が憤激するほどの裏取引が総裁選挙で行われています。「クリーンな軍部」も裏で機密費を自由に使いましたが・・・


[2003/09/16]  カリスマペテン師・小泉純一郎

一国の総理をペテン師呼ばわりするのか、と言われるかも知れません。しかし、賞味期限切れの自民党を延命させることのみを目的とした小泉政権は、国民に期待感を与える言葉を連発しながら、実行段階では足踏みを続けています。

改革遂行をアナウンスしながら裏で抵抗勢力と手を握る手法については、多くの人が見抜いていることでしょう。政治資金の透明性を高めることについては消極的な態度を取り、「利権派」の居心地を悪くしないようにして妥協を図る。官僚のシナリオに乗ったパフォーマンスで(ということは、官僚機構には手を付けず官僚主導の政治を継続する)「改革」を演出する。これが小泉政権の任務です。

しかし、国民は、他の選択肢が見えないとして小泉支持を継続しています。マスコミが小泉政権を暗黙裏に支持していることが、支持の空洞化を生じながらも高支持率を維持している理由です。

国民の9割は、給料が下がってもデフレにより物価が安くなったということもあり、自分達がとりあえず安泰であると思い、阪神フィーバーを満喫できますが、1割の国民には痛みが集中しています。自殺者が3万人を超え、内8千人が経済的理由であると言われます。治安が大幅に悪化し、9割の国民の側も突然犯罪の被害者になるという形で平穏が脅かされています。

公約違反を屁とも思わないタイプの政治家に期待を持つことの愚かさに国民は気付かなければなりません。気付くのが遅れると、日本は国家として衰退の道を不可逆的に歩むことになります。

ペテン師が人気者になるという危険な風潮に警鐘を鳴らしたいと思います。


[2003/09/15]   超高齢化

65歳以上の人口が全人口に占める比率を高齢化率と言います。我が国の高齢化率が、前年を0.5%上回り、19.0%になったと報じられています。

高齢化率が7%以上になると「高齢化社会」、14%以上になると「高齢社会」と言います。

「超高齢社会」の要件についてははっきりしませんが、7→14→と来ると、21%かなという気がします。「超高齢社会」間近の情勢です。地方では、大半が超高齢社会に突入しています。

75歳以上の「後期高齢者」も1千万人を突破しました(比率で8%程度)。ほとんどの人が職業に従事できなくなる後期高齢者の比率が今後重要になります。後期高齢者の比率が20%になる時代がやがてやってきます。

時代の先行きを見据え、超高齢社会における地域社会のあり方を考えておくべき時期だと思います。「敬老」と言っていればすむ時代は終わりました。


[2003/09/14]  朝三暮四・・・合併特例債

平成の市町村合併は、合併特例債への期待から行われることが多いようです。そこには、数十年先まで見通した地域戦略より、とりあえずの見返りに対する期待が全面に出ています。

中国の故事に「朝三暮四」の話があります。猿の飼い主が、餌が少ないので朝はドングリ3つにする。その代わり夜は4つにする、と言ったところ、腹が減っていた猿たちは怒りました。そこで飼い主は、朝は4つにしようと提案しました。その代わり、夜は3つにして欲しいと言いました。猿たちは、ひれ伏して感謝しました。

十数年後に訪れる返済の苦しみを思うと胸が痛みます。平成の合併とは、問題の先送りに他なりません。とりあえずは腹が膨らむのでしょうが・・・


[2003/09/13]  朝日新聞社説(9/12)

12日の朝日新聞社説、「野中氏引退――時代の風を読めずに」を読み、朝日新聞社の際立った小泉政権よりの姿勢に驚きました。

野中氏の発言を、「捨て身で同情を買い、反小泉勢力を勢いづかせられると本気で考えたのだったとしたら、それは勘違いとしか言いようがない。」と冷たく切り捨てます。

「連立政権の時代になって10年。小選挙区制の定着、そして党内よりも国民的な人気に支えられた小泉政権の登場によって、派閥はかつての求心力を完全に失った。野中氏の退場はその生きた証しである。」として、野中氏の引退が時代の流れであることを強調。

「野中氏の政治姿勢と手法は、もともと派閥に強固な地盤を持たない小泉首相のそれとは対極にある。そして、時代の風を受けているのは、小泉氏の方なのだ。」 と小泉内閣を持ち上げます。

節操なく小泉氏に群がる自民党の腰抜け議員への言及はなし。政策の全く違う人物を支持することの矛盾を指摘する叙述もなし。

「ときに、時代の気分を映すような言葉で政敵を攻撃してきた野中氏が、時代の流れを読めなかった。そこに、政治家としての退場時期が見えていた。」との結び。その通りですが、「時代」の表層のみを追った論説です。


[2003/09/12]  抽選で選出される議員

現在の法制度では認められませんが、地方自治体の場合、検察審査会と同様、選挙人名簿から抽選で何名かを議員とする方法を考えるべきではないかと思います。

1期限りとすれば、選挙で選ばれる議員のように余分なことを考えることなく(次の選挙を考える必要がありません)、市民の目線で市政を監視し、また提言をすることが出来ます。

ひとつ見方を変えれば、様々な可能性が地方自治にはあります。中央で一律に地方を規制する発想を克服すべきです。


[2003/09/11]  こんなものいらない・・・議員?

各地の市町村合併協議で、住民が関心を持つものの1つが議員の在任特例です。

在任特例を認め、多くの議員が合併後も居座ることへの反発は強く、リコールに発展する場合もあります。

「あいつらはいい思いをしている」という感情が平素からあり、合併を契機にその感情が吹き出しているような気がします。

この原因の1つとして、自分達とあまり違わない能力の人物を地縁、血縁等のしがらみの中で選出しており、代表者として相応しいかどうかという視点で投票行動を行っていないことが挙げられます。

地域によっては、おまえのような者を議員にしてやるのだから「分け前をよこせ」という感覚で、買収選挙が地域の「常識」になっている場合もあります。

議員の在任特例における議員のお手盛り感覚と住民の嫉妬感覚の批判。同じ穴の狢という気がしないではありません。勿論、批判は正当です。ただし、「正論」の中に潜むある種の感情に気を付ける必要はあります。

立派な議員も沢山います。どうかすると、いい議員の方が選挙が弱く、合併後の議会のレベル低下が心配されます。


[2003/09/10]  野中広務氏政界引退表明

自民党・野中広務氏の政界引退表明が波紋を呼んでいます。

野中氏は会見の中で、橋本派の村岡兼造氏や青木幹雄氏が総裁選で小泉首相支持を表明したことについて「目先のポストに惑わされているのではないか。政治家として許すことはできない」などと強く批判し、同派の藤井孝男氏の支援に全力をつくす考えを表明しました。

古いタイプの政治家が、自民党議員等の無節操かつ軽薄な態度に業を煮やしたという感じもします。

しかし、元々「何でもあり」の政党だし、ポストに惑わされる人が入る政党なんですから、どうかなと思う批判ではあります。

もっとも、彼が言いたいのは、自民党の「芯」の部分が溶けているということなのでしょう。政党内政党である派閥のルールより、自己保身の論理が優越する事態は、政権党としての誇りの欠片もない状態ではあります。小泉自民党の軽佻浮薄ぶりが度を超している、という意味では同感です。


[2003/09/09]  賞味期限

食品については異常とも思われるほど敏感な日本国民が、政党の賞味期限について寛大であるのは不思議です。

自民党の賞味期限は1991年でした。この年、ソ連が崩壊。冷戦構造の下で保守合同により成立した自民党は、本来なら、ソ連崩壊後に新たな国家目標を掲げてリニューアルを図らなければなりませんでした。

しかし、細川政権の成立により初めて野党となった自民党は、野党でいることの哀れさを学んだだけでした。社会党との連立以降、政権党で居続けることが自己目的化しました。

今回の総裁選も、自己保身に走る議員心理からの小泉支持ということだけが明白になっています。

賞味期限を大幅に過ぎ、元々「保身党」的であった自民党の体質が、「自己保身だけの政党」へとさらに劣化した事実を見据えておくべきでしょう。


[2003/09/08]  派閥の機能

小泉氏は、かつて「自民党をぶっ壊す」と述べ、実際に橋本派の団結に亀裂を生じさせることが出来ました。彼の言う「自民党」とは、橋本派だったということでしょうか。

橋本派に象徴される派閥の凋落は、小選挙区制度の帰結です。しかし、派閥が果たしてきた役割については、確認しておくべき点があります。

55年体制時には、自民党だけが政権を担当でき(政権担当能力)、国民の自由は与野党の対立と自民党内部の派閥の均衡によるバランスの中で保障されていました。特に、自民党の派閥には、権力の横暴を抑止する機能がありました。自民党から議案が提出される前のチェックが一番の関所だったからです。

派閥間の合従連衡による疑似政権交代は、政権の行き過ぎをチェックし、国の進路を若干変更することが出来ました。

派閥の弱くなった自民党は、党内のブレーキ装置を失うことになります。与野党間の政権交代が真に必要になっています。政権交代に不慣れな国民が、おっかなびっくりの心理を克服することで、我が国の政治史に画期的な転換点が来るでしょう。それが普通の国家なのですが・・


[2003/09/07]  ナニワ金融道

漫画「ナニワ金融道」の作者、青木雄二氏が死去しました。

お世辞にも上品な作風ではありませんでしたが、コテコテと細部を描く画法により、庶民の日常や気分を活き活きと表現していました。

「ナニワ金融道」は、街金(まちきん)を通して社会の底辺、裏側の人物像を描いた傑作です。読み出すと止められない面白さがありました。こんな狡い手があったか、と感心しながら読んだものです。テレビでドラマ化され、SMAPの中居君が主人公・灰原青年を熱演していました。

彼の著書も何冊か読みました。古典的なマルクス主義を自信たっぷりに展開するのが、ミスマッチのようでありながら、妙な説得力を持っていました。

「小泉のインチキ話法ぐらい、ハヨ見ぬかんカイ。どうしてこんなに騙される奴が多いんかナア。このままやと、庶民は益々ビンボーになるでェ。」と、あの世でお嘆きのことでしょう。

「ナニワ金融道」全巻持っています。ご冥福をお祈りします。合掌。


[2003/09/06]  街頭演説・・・関ヶ原前夜(昼?)

5日の昼、松山市駅前で民主党・菅直人代表、自由党・小沢一郎党首の街頭演説を聴きました。見物人多数。なかなかの迫力でした。ふいに肩を叩かれたので振り向くと知り合いの松山市議。保守で自民党嫌いの人物(この点では同好の士)。

トップリーダーが街頭演説することで、関心を持って聞いている人は大いに勇気付けられるし、地方組織を活性化させ、党勢拡大のテコ入れにもなるのだろうと思います。

小泉内閣の支持率は依然高水準です。しかし、改革勢力対抵抗勢力の紙芝居もネタが尽きつつあります。ネタが尽きれば失速することは先刻ご承知でしょう。

今後考えられる芝居として、道路公団・藤井総裁の解任(吉良上野介退治の小芝居)、北朝鮮拉致被害者達が残してきた家族の帰国(「北朝鮮カード」による大芝居)などが考えられます。

北朝鮮カードには裏金(何十億円もの身代金と引き替え)があり得るとの雑誌記事を読みました。魑魅魍魎の世界を垣間見る思いがします。

際どい演技でしかしのげなくなった賞味期限切れの自民党政権。末期的状況下で騙しのテクニックを駆使してくるでしょう。

大野党が出来、「関ヶ原前夜」の様相を呈しています。


[2003/09/05]  マンション反対運動と建設予定地の購入

秋田市でマンション建設計画をめぐり、地元に住む秋田商工会議所会頭のグループ企業が、仙台市のマンション業者から建設予定地を購入しました。

建設予定地は、緑の多い住宅街にあり、1983年に市の都市景観賞を受賞、90年には通り沿いの教会が市有形文化財に指定されていています。

7階建てのマンション計画に「景観が壊される」と住民が今春から反対運動を展開。住民は予定地の購入希望者を探しましたが見つからず、家族が反対運動に参加していた会頭に嘆願書を提出したところ、会頭の傘下企業が購入を決断したのです。

かつて、我が街にもマンション建設に対する反対運動がありました。私もその一員でした。景観を害するということが論点の1つでした。

当時、お金があれば買ってやるんだがなあ、と切歯扼腕したので、このニュースに注目しました。今回の話は異例中の異例というべきでしょう。

景観を守ることが期待されている地域でのマンション建設はもっと問題視されるべきです。法的な規制が必要です。法的な規制が間に合わない場合には、市民が基金を募ったり、公的に買い上げたりすることも考えておくべきだと思います。

都市の開発を抑制すべき場合についての研究が必要です。「何でもあり」ではいけません。


[2003/09/04]  シティマネージャー

昨日述べた志木市長の提案は、自治体組織の簡素化と住民の行政事務への参加、およびそれに伴う自治体のローコスト経営を目指す考え方が前提にあります。

首長制度についても、首長に替え、議員の中から行政事務の執行を担当する委員会を組織し、委員の中から統括代表者を選任するシティマネージャー制度の創設を考えています。

議員は、自治を積極的に推進する役割と行政をチェックする役割とを持つことになります。

議員はかなりの量の仕事をすることになります。文句を言うだけという態度では務まらなくなります。

地方自治法の改正が必要です。しかし、地方が自分で決定してもいいことではないでしょうか。


  [2003/09/03]  議会が予算を編成

埼玉県志木市の穂坂邦夫市長が、またまた面白い提案をしています。議会が来年度の一般会計予算を編成してはどうかというものです。2日に行われた市議会全員協議会での発言です。

議員は戸惑っているようですが、積極的にチャレンジしてはどうでしょうか。

地方自治の欠陥として、議員が「部分利益」しか見ようとしないことが挙げられます。この原因の1つとして、市町村合併があります。昭和の合併で出来た自治体では、旧村の利益を代表する議員が現在も出て来ます。平成の合併により、このことがもっと顕著になる可能性があります。

予算を編成することは、議員が「全体利益」を考える良い機会になると思います。


[2003/09/02]  政治へのスタンス

「政治家」というと何か悪いことをする人、支持しておくと自分に有利な取り計らいをしてくれる人、というイメージを持つ人がかなりいます。

このイメージ通りの政治家が沢山いたため、政治を嫌悪し、自分とは別世界の事象であると感じたり、逆に、「何をしてくれるのか」という要求型政治のイメージしか持てない有権者が量産されました。

右肩上がりの時代では、どのような政治センスを持っていても、ある程度の「利益配当」はありました。しかし、これからは放っておくと「無配当」になる人や「損失」を蒙る人が出て来ます。

若者達が声を挙げない我が国では、若者達に不利益な施策が大手を振ってまかり通っています。国民が政治を「監視する」というスタンスが必要になっていると思います。

もう一歩進んで、「担う」という発想も必要です。「対価」や「配当」を期待するのではなく、社会の構成員として応分の負担をする。税金の支払いや金銭的負担をするだけではなく、社会的な活動に時間を振り向ける、汗を流す、という発想です。

御輿の担ぎ手が不足しています。「社会人」として、何かを担うということが老若男女を問わず求められている時代です。もっと言えば、社会に対する負担を総称して「政治」と言うのだと思います。

観客席から高みの見物をする「お任せ民主主義」は卒業すべきではないでしょうか。「担い手」のトップリーダーが「政治家」であると私は考えています。


[2003/09/01] 9月5日、菅・小沢両氏が松山で街頭演説

9月5日(金)、12:20〜13:00、松山市駅前で民主党代表・菅直人氏と自由党党首・小沢一郎氏が街頭演説をする予定。全国遊説の一環です。

自民党、公明党も、ようやく民主・自由の合併が脅威であることを認めるようになりました。

我が国でもっとも遅れた愛媛で新民主党が善戦すれば、政権交代の可能性が高くなります。

もう少し気楽に政権を替えてみたらいいのです。窓を開けて空気を入れ替える程度の感覚で。日本国民は生真面目すぎるのではないでしょうか。

「古い上衣(うわぎ)よ、さようなら。さみしい夢よ、さようなら・・・・」 (「青い山脈」より)


玉井彰の一言 2003年9月 四国の星ホーム前月翌月