玉井彰の一言 2005年6月 四国の星ホーム前月翌月

[2005/06/30]  自民党には語れない未来を語る

自民党が駄目政党であるということは、国民の多くが知っています。しかしながら、自民党をひっくり返せる野党が出現しませんでした。

自民党のここが駄目だ、あそこが駄目だということをいくら主張しても、政権交代にはつながりません。

自民党には語れない未来を語ることによって、有権者に信を問う。このことに重きを置いた政治活動を展開します。

自民党の劣化が著しい昨今、これに代わる政党の出現を国民が期待しています。少なくとも、潜在的なニーズがあります。党中央が言わないことも、地方民主党として大胆に提言する姿勢を持ちたいと思います。  


[2005/06/29]  地方自己責任の時代

地方主権型社会を目指すということは、国の権限を大幅に減らしていくということを意味します。国の権限は、外交・防衛、その他の事項に限ればいいと思います。官僚機構が大きなものである必要はなくなり、国会で審議する事項も大幅に減ることになります。

そうなると、官僚機構はリストラされて、個々の官僚の皆さんは地方でその能力を活かすことになります。国会議員の数も大幅に減らすべきです。一院制・定数100でもやれるでしょう。国会議員(候補)は、自らの職域を減らす覚悟が必要です。

地方主権型社会で重要になるのは、道州議会です。ここで利権型政治が蔓延(はびこ)れば、その地方は自滅します。各地方は、「板子一枚下は地獄」という民主主義を体験することになります。

地方自己責任の時代。


[2005/06/28]  常任理事国入り

国連の常任理事国入りが素晴らしいことであることを前提として、政府や外務省は動いています。マスコミの大半も常任理事国入りに賛成の立場で議論をしています。

私は、常任理事国入りを求められれば断る理由はないと思いますが、他国に足元を見られて、多大な「借り」をつくってまでなるほどの値打ちはないと思います。

我が国が国際社会で尊敬される立場になることを目標とするならば、為すべきことは外交能力の向上に尽きます。

戦略的な外交を展開して我が国の安全を保ち、他国の紛争に関して調停役をこなせるだけの外交手腕と国際的な信用を勝ち取ることが肝要であって、常任理事国はそのことの結果として自ずと与えられる地位であると割り切るべきです。

叙勲を欲しがる高齢者のような低い志で生きていくよりも、国際社会にどのような貢献ができるのかを考える思慮深い国家になることをまず考えるべきです。

常任理事国入りが自己目的となること自体、外交能力がないことの証明ではないでしょうか。


[2005/06/27]  整備新幹線

整備新幹線は各地域の「悲願」とされ、強い陳情活動の成果として、北海道、東北、北陸、九州で計画され、建設・起工が進んでいます。

財政面からの批判が絶えない整備新幹線ですが、そのことよりも私が懸念するのは、東京への時間短縮を競う発想です。現在進行中の高速鉄道網が、中央集権を加速するだけに終わらないのかということです。

来るべき地方主権型社会(道州制)においては、地域内交通網の確立が急務になります。

東京からの政治、東京に向かってのおこぼれ頂戴型の政治と決別することなしに、地方から富を生み出す仕組みを確立することはできません。

東京に向かって集中する交通体系の見直しをする必要があると思います。


[2005/06/26]  NHKは必要である

(ニュース)
NHKを「必要だと思う」人が5年前より大きく減ったことが24日、NHK放送文化研究所が5年ごとに実施している世論調査「日本人とテレビ」で分かりました。

NHKが「ぜひ必要」「まあ必要」と回答した人は過去4回は計86−89%で推移していましたが、今回は79%に落ち込んみました。一方、民放を「必要」と答えた人は前回並みの計87%でした。

NHKの番組評価では、「事件や災害への対応が速い」とした人が60%で、前回より6ポイント増加しています。しかし、「新鮮な番組がある」「報道番組の掘り下げ方が深い」「中立・公正」「地域の話題をよく伝えている」など、残る7項目は前回を下回りました。

(コメント)
元大関・貴乃花の死去に伴う若貴の対立報道など、どうでもいいような報道が繰り返し巻き返し行われる民放の姿勢を見ていると、民間放送の視聴率主義のマイナス面が出ていると思われます。

スポンサーや視聴率に影響されにくい放送局が国民にとって必要です。「視聴質」を重視した報道を多くの国民がNHKに期待しています。

それだけに、安倍自民党副幹事長による放送内容への介入疑惑など、政治家の圧力に対抗できる仕組みづくりが必要です。

「支持率」低下は、「必要がない」というよりも、批判票と見るべきでしょう。


[2005/06/25]  不公平

(ニュース)
神奈川県警の警察官が4月、横浜駅構内で女性のスカートの中をカメラ付き携帯電話で撮影したとして、県迷惑防止条例違反の疑いで書類送検されていたことが25日わかりました。県警は警察官を減給処分としたが公表せず、その後本人は依願退職しています

書類送検されたのは横須賀署の男性巡査長(36)。調べでは、4月17日午後6時15分ごろ、駅構内の上りエスカレーターで女性の後ろに立ち、スカートの中をカメラで撮影した疑い。警戒中の鉄道警察隊員に取り押さえられました。

(コメント)
経済評論家・植草一秀氏の場合と比較して、不公平であるとの感は否めません。

警察は、犯罪事実を氏名身分を明かして公表することにより、一瞬にしてその人物の社会的生命を奪うことができます。

このことの深刻さを考えると、警察発表のあり方はいささか恣意的に流れすぎていると思われます。

そもそも、氏名身分を公表する必要があるのかどうか。あるとして、公表すべき犯罪類型について検討が必要ではないでしょうか。

ちなみに植草氏の場合、当局が政府に批判的な評論家である植草氏のスキャンダルさがしをやっていたのではないかとの疑念を、私は持ち続けています。


[2005/06/24]  「報償費」予算の執行停止

(ニュース)
宮城県警の捜査報償費問題で浅野史郎知事は、2005年度の報償費(県費)予算のうち、7月からの配当分について執行を停止することを決めました。

報償費予算執行停止は全国初の異常事態で、「不適正な執行はない」との立場の県警側と「不正経理の疑いが強い」とする知事との対立は決定的となりました。
 

同県の05年度当初予算では、県警が要求した3000万円から700万円減額された2300万円が計上されています。執行停止は4月に配当された分を除いた半額程度になるとみられます。

宮城県警は今年4月、03、04年度分の予算全般と1998−2000年度分の報償費と旅費について内部監査結果を公表しましたが、浅野知事は「監査の名に値しない」と批判しています。

(コメント)
仙波敏郎巡査部長の実名告発があった愛媛では、愛媛新聞が県警不正経理疑惑の特集を組んでいますので、多くの方が関心を持ちはじめています。

経済産業省でも、大臣官房企画室が外郭団体の研究委託費を流用して裏金を作っていたことが報じられています。

裏金は、組織の「潤滑油」として、多くの組織に存在すると見られています。表面には出しづらい諸経費が必要となった場合に備えて資金をプールしておくということなのでしょう。

そうは言っても、公金の流れが透明であるべきことは基本中の基本であり、言い訳は通用しません。

しかも警察の不正経理の場合は、上層部の「所得」とカウントされるべきものが大半と言われ、「組織のため」などという強弁は許されない性質のものです。

浅野知事の英断を強く支持します。


[2005/06/23]  スポンサー

公明党の神崎武法代表が6月8日の記者会見で、郵政民営化関連法案の国会審議に関連し、不成立で衆院解散・総選挙になった場合の対応について、「郵政民営化の是非で選挙になれば、公明党は民営化推進の立場なので、(選挙協力は)それを基準に考えざるを得ない」と述べ、自民党の造反議員への選挙協力は行わない考えを示唆しています。

自民党は、公明党の支援がなければ、小選挙区で数十議席しか取れないと言われています。このことを背景に、公明党が自民党の郵政民営化法案反対派議員を恫喝(どうかつ)したということです。

選挙での当落という、政治家の政治生命に関わる問題を持ち出して恫喝を加える。それも、自民党内部での引き締めではなく、他党である公明党がこれを行ったことの重大性を認識しておくべきです。4月の統一補選・福岡2区において、山崎拓氏が創価学会に全面屈服したことで辛うじて勝利したということもありました。

このこととの関連で、みのもんた氏の「失言」問題。TBSの朝のニュース情報番組「みのもんたの朝ズバッ! 」の中で、ビールの効用についてみの氏が語った際、「ビオフェルミンなんかのむよりビールを飲んだ方がいい」と発言し、同番組のスポンサー企業の1つであるビオフェルミン製薬が降板したというニュースがありました。

民放での表現の自由は、スポンサーによって実質的に制約されます。このことを考慮すると、スポンサー不足に悩む地方局で創価学会がスポンサーになることが多いという事実は、無視できない話です。

自民党の政治的スポンサーは創価学会。放送局(報道機関)のスポンサーも創価学会。有権者の皆さんには、この事実を受け止めて、政治的な判断をしていただきたいと思います。


[2005/06/22]  自分さがし

【親の人生に「価値」16% 05年版青少年白書】というタイトルの記事が気になりました。

(ニュース)
南野知恵子少子化対策担当相は21日午前の閣議で、2005年版「青少年の現状と施策」(青少年白書)を報告しました。それによると、自分の父親や母親の人生について「生きがいのあるものだ」と感じている青少年は、16%前後と6人に1人にとどまっている実態が明らかになっています。

仕事に就かず学校にも行かない「ニート」と呼ばれる若者が増加する中、学生・生徒や無職の青少年で過半数の52・9%が「希望の仕事があれば働きたい」と回答。これに対し、親の52・6%が「多少希望と違う仕事でも働いてほしい」と望み、親子間で職業観の落差も浮き彫りになりました。

(コメント)
親を見ていると自分の人生も見えてくる。別の人生があるのではないか。そういう心理状態でしょうか。

最近、「自分さがし」という言葉が流行っています。自分など探してどうする。哲学でもやるのか・・・

と言いたくなるのを押さえて文脈をたどると、人生を決定づける決断をしたくないという意味合いに読めます。モラトリアム人間(年齢では大人の仲間入りをするべき時に達していながら、精神的にはまだ自己形成の途上にあり、大人社会に同化できずにいる人間)という言葉もありますが、人生の「猶予期間」を無為にたたずんでいる光景に見えます。

別に探す自分などないはずで、具体的な経験の場を提供すると同時に、先輩である大人が背中を押してあげる仕組みをつくっていくべきだと思います。

以前述べた「青年国内協力隊」の創設を提唱します。地域で無給の「地域協力員」として活動してもらい、食事と住居を地域の人に無償提供してもらうようにするようにし、地域社会との関わりの中で、人生の「手応え」を感じてもらいます。

過疎地の場合には、地域振興につながります。


[2005/06/21]  酩酊宰相

(ニュース)
民主党・岡田克也代表は、17日夜に衆院本会議で55日間の会期延長が決定した後の代議士会における挨拶の中で、本会議に飲酒をして出席した小泉首相らを厳しく批判しました。

岡田代表は、「大事な延長を決める国会の投票において、小泉内閣総理大臣、森前内閣総理大臣が、赤い顔をして投票する」という事態が起きたことについて、「いかにいい加減な運用をしているのか」と厳しく批判。「国民の皆さんに、直接、しっかりと訴えていきたい」と述べるとともに、河野議長が、「議会の歴史を汚すような行為を黙認した」と指摘し、議長の責任追及も併せて行うとの見解を示しました。

民主党の懲罰動議を受けた小泉純一郎首相は、20日午前、「あの日、私は一滴も酒、アルコール類は飲んでいない」と飲酒の事実を否定しました。首相は民主党の対応について「随分いいかげんな政党になった。公党としてなんででたらめな発言をしたり、懲罰動議を提出するのか分からない」と厳しく批判しました。

岡田克也代表は20日午後、党本部で記者団の質問に答え、17日の衆議院本会議場で、民主党の議院運営委員会理事が自民党側の議運委理事に対し、小泉首相・森前首相ら3名が赤い顔をしているのではないかと確認の申し入れを行い、自民党側から確認する旨の返事を得た後、「今津代議士は、飲酒をしていないと言っている」という答えしか返ってこなかったと事実関係を説明。「我々は確認をしようとしたけれども、その確認を怠ったのは自民党側で、それに対して確認もせずに発言したというのはおかしいと言う総理の方が、おかしい」と指摘しました。

小泉首相側からの反論と抗議文について岡田代表は、「われわれが確認しようとしたところに答えなかったというのは、状況証拠としてそういう(飲酒の)事実があったのではないかと言われても仕方ない」との見解を示しました。

(コメント)
飲酒も度を越しており、見過ごせない状況だったようです。国民の負託を受けた国会の議事運営が「なあなあ」では困ります。

それにしても、小泉首相の国会答弁を聞いていると、飲んべえのオッサンと同じレベルです。質問に答えず、はぐらかす。破れかぶれの答弁。これが常習犯になっているにもかかわらず、マスコミが見識を持って批判してこなかったことが問題です。

報道機関の飲酒も調査して欲しいところです。赤提灯レベルの答弁と報道。品格の確立が急務。

国家の課題が山積しています。酩酊宰相などと笑っていられる、のどかな時代ではなくなっているのです。


[2005/06/20]  子供の意見

「総合的な学習の時間」や「少人数学級」など、義務教育改革の課題について、教員や保護者、子供などを対象に文部科学省が実施した全国アンケートの結果が18日、中央教育審議会(鳥居泰彦会長)の義務教育特別部会に報告されました。

その中で、オヤッと思ったこと。

「少人数学級の導入」は一般教員の95%、保護者も73%が賛成しているのに対し、小学生は21%、中学生は26%しか支持がありませんでした。

文科省は「友達が少なくなるからではないか」と分析しています。友達を選ぶ機会、交流する機会を奪われるかもしれないとの不安感が数字に出ているのかもしれません。

教育の受益者・消費者である子供が、少人数学級に否定的であるとは、考え及びませんでした。

子供時代を卒業してかれこれ。いつの間にか、教育サービス提供者の論理に染まってしまっていました。少人数制の是非論について、じっくり考えてみます。


[2005/06/19]  瞬間湯沸かし器型外交センスを超えて

(ニュース)
中国に対し毅然(きぜん)とした外交姿勢の確立を求める民主党の有志議員が16日、「真の対中外交を考える会」の設立会合を開き、2008年に予定されている北京五輪の開催中止を要求する国会決議を今国会で採択することを視野に、対中政策を議論していく方針を確認しました。

米下院でも同様の決議を採択する動きがありますが、同会メンバーらは「当事国の日本が率先して北京五輪の開催中止を訴える声を上げていくべきだ」と主張しています。

設立会合には代表世話人の松原仁、渡辺周、中津川博郷の各衆院議員や米沢隆副代表ら約20人が参加。靖国神社参拝問題や特定の歴史教科書に対する「内政干渉」などで反日姿勢を強める中国への対抗策を協議するほか、反日暴動による日本大使館への破壊活動の謝罪と賠償がない限り、北京五輪の開催中止を内外に訴えていきます。

(コメント)
反対。

「貴国の反日暴動により我が国が蒙った損害については、貴国よりの賠償が必要である。この権利を我が国が放棄することはない。」と主張し続けるべきです。同時に、「貴国との信頼関係を深める努力を我が国は惜しまない。」と付言すべきです。

深窓の令嬢が初めてほっぺたをひっぱたかれたときのような、大袈裟な反応をすべきではないと思います。

瞬間湯沸かし器型の外交センスの一例が、戦前国際連盟を脱退したときの松岡洋右・首席全権のパフォーマンスです。

冷静な判断力が長期国益を担保します。


[2005/06/18]  高止まり

小泉政権の支持率高止まりの傾向は、靖国神社参拝を強行し続ける対アジア向けの強硬姿勢と、国内での郵政民営化へのこだわりに見られる頑固なポーズが、ひょっとしたら信念ある政治家ではないかとの錯覚をもたらした結果であろうと思われます。

内容はないが頑固な姿勢。これを徹底的に批判するマスコミ報道も少ないため、4年に及ぶ政権への慣れも手伝って、とりあえず現政権支持ということになるのでしょう。


[2005/06/17]  愛国ポーズの売国政策

小泉政権は、靖国神社参拝に見られる愛国主義的なポーズを頑固に貫きます(実際には、「8月15日参拝」は腰砕け)。

ところが、政策レベルでは、アメリカの対日要求に100%忠実なサーバント(召使い)として行動しています。イラク派兵然り、郵政民営化然りです。

郵政民営化は、国富の売却とも言える側面があります。民営会社が(分社化され)、外資に売却される可能性も懸念されています。

担当大臣・竹中平蔵氏の「愛国心」がいかばかりのものか。「チラシ疑惑」の大臣がアメリカのエージェントではないのかとの疑いを消し去ることができません。

もし仮に、竹中氏が万難を排して自らの信念を貫き、郵政民営化を推進するタイプの人物だったとするならば、大切な時期につまらない疑惑を持たれるような行動は厳に慎むでしょう。

アジア諸国への配慮を欠く「愛国ポーズ」の陰で、売国的な施策が推し進められています。


[2005/06/16]  随意契約

(ニュース)
民主党は15日の衆院郵政民営化特別委員会で、政府が2月に配布した郵政民営化に関する新聞の折り込みチラシに関する約1億5000万円の随意契約に、竹中郵政民営化相の秘書官が関与した疑いがあると指摘しました。政府側は、これを否定。

民主党の海江田万里氏はチラシの受注に関し「竹中氏の秘書官が、知り合いのいる会社に口利きをしたことはあるか」と問いただしました。竹中氏は「秘書官に確認したが、(受注した会社の社長と)面識はあるが何も利害関係はない」と答弁しました。

民主党の辻恵氏は、独自に入手した資料に基づき、竹中氏が契約を競争入札ではなく随意契約とする意向を示していたのではないかと指摘し、政府側に契約の経過を説明するように求めました。これに対し、政府広報室側の答弁は契約の日時などが二転三転したため、審議は断続的に中断しました。

(コメント)
秘書官の友人と1億5000万円の随意契約を結ぶ。税金を投じての話。説明責任が果たされなければならない場面です。

この話自体は、郵政民営化の議論の本筋ではありません。しかし、多くの方々の人生にも関わってくる民営化推進の責任者が公私の区別が付きにくい人物であることは(税金逃れの話も有名)、見過ごすことのできない問題を含みます。

郵政民営化が郵貯340兆円を外資に委ねる陰謀であり、アメリカの対日政策を実現するものであると言われている中での不明朗な話は、郵政民営化も竹中氏の個人的な利害に関わっている話ではないかとの疑念を与えることになります。

郵政民営化が売国的な政策であるとの疑惑を深めることになるチラシ疑惑。実態解明を期待します。  


[2005/06/15]  極東軍事裁判

首相の靖国神社参拝が、日中、日韓の外交問題となっています。靖国神社にA級戦犯が合祀されていることが問題であるとされます。

極東軍事裁判で戦勝国側が一方的に行った不当な裁判により「A級戦犯」が認定されたのであり、「A級戦犯」であるということを判断の基準とすることは不条理であるとの考え方もあります。

確かに、他国に裁かれるのは屈辱的です。しかし、そのことを含めて我が国はポツダム宣言を受諾したのです。即ち、ポツダム宣言には、日本国民を侵略戦争に駆り立てた権力・勢力の「除去」がうたわれており、極東軍事法廷は日本が受諾したポツダム宣言に基づいて設置されたものです。

これを否定しようと言う方々は、「もう一度『リング』に上がって決着をつけよう」とでも言いたいのでしょうか。

もちろん、他国に判定された「戦争犯罪者」をそのまま追認していいのかと言えば、これは釈然としません。戦後60年。我々の手で「戦争犯罪者」の「犯罪事実」を認定し、「罪状」を明らかにして、「判決」を出したいものです。

しかしこれも、墓穴を暴くだけのような空しさを伴います。「時効」という概念がちらついてきます。そうだとすると、極東軍事裁判の判決の中で不当であると思われる部分、判断がなされていない部分についてのみ問題にするしかないということになります。

広田弘毅氏については、気の毒だという意見もあるでしょう(私は、責任ありとの見解です)。その他、A級のはずなのに上手くすり抜けた連中もいると思います(天皇の戦争責任については、少なくともA級戦犯ではないというのが私の見解です)。

原爆投下の責任は問題です。この点では、極東軍事裁判には不備があります。ここに、「勝者の裁判」であったという意味での偏りがあります。ここはきちんと主張し続けないといけません。


[2005/06/14]  言い換え

「反省」「自省」を「自虐」と言い換える。市民運動を行う人達、戦前「アカ」と呼ばれた人達を「プロ市民」と言い、「国賊」を「反日日本人」と言う。

言い換えにより、戦前の差別的な言葉、全体主義を称揚する言葉を新たなイメージで復活させようとする試みが進行しています。

「自虐」という言葉はヒット商品らしく、中山成彬文部科学相も好んで使っています。このレッテル的用語を使った瞬間に思考停止が起きるようです。

中山文科相は11日、教育改革タウンミーティングで訪れた静岡市で、今春行われた中学校教科書検定に合格した社会科教科書から「従軍慰安婦」の表現が消えた点について、「従軍慰安婦という言葉はそもそもなかった。これまでなかったことがあるということが問題」などと述べました。

(中山文科相は昨年11月にも、従軍慰安婦や強制連行について「そういう言葉が減ってきてよかった。自虐史観に立った教育だけはしてはいけない」などと発言し、「個人的な発言だった」と修正した経緯があります。)

細田博之官房長官は13日午前の記者会見で、中山文科相の発言に関し、「問題は言葉ではなく実質だ。実質的に従軍慰安婦の存在があった以上、政府の考え方は変わらない。これまで官房長官談話などでおわびと反省の気持ちを表明しているところだ」と述べています。

これは官房長官の考え方が正当。不都合な事実はないと思いたい。(ガダルカナル島)「撤退」ではなく「転進」であるとした大本営発表型メンタリティを克服しないと、真に尊敬される大国にはなれないと思います。

懐が深くないと横綱にはなれません。「突っ張り」だけでは、大関止まりです。

(中山氏は13日、都内で記者団に対し、従軍慰安婦に関する11日のタウンミーティングでの発言について「そういう方々が日本人も朝鮮半島出身の方もいっぱいいて、筆舌に尽くし難い苦労をされたことはよく知っている。ただそういう用語はなかったということだ」と述べ、慰安婦におわびと反省を示した政府見解と、立場に違いはないことを強調しました。

「用語がなかった」ことだけを取り立てて言いたかったのだとすると、ただの馬鹿な政治家だったということになりますが、どうなのでしょうか。)


[2005/06/13]  退屈

青山学院高等部が行った一般入試の英語の中で、沖縄県への修学旅行でひめゆり学徒隊の女性から沖縄戦の話を聞いた生徒が「退屈で飽きた」と感じたという趣旨の英文を出題していたことが物議をかもしました。

同校によると、英文は生徒が書いたものではなく、同校の教諭が試験用に作成したものです。沖縄県で生徒は、防空壕に入った後、ひめゆり学徒隊の女性から体験談を聞いて「退屈で飽きた。彼女が話せば話すほど、私は防空壕で受けた強い印象を失った」と感じ、「(女性が)いろんな場所で証言をしてきて、話し上手になっていた」との感想を書いたという内容になっていました。

そのうえで「なぜ筆者は聞いた話が気に入らなかったのか」という問題を出し、「彼女の話し方が気に入らなかった」という選択肢を正解として選ばせていました。

沖縄県の稲嶺恵一知事は10日の定例記者会見でこの問題に触れ「がく然とした。ひんやりとしたものを感じるしショックだ。ひめゆり(学徒隊)のみなさんは多くの人に体験を話すことで平和な世界にする努力をされてきた方々。そのご苦労と気持ちを理解してほしい」と述べました。

青山学院高等部はホームページ上に10日付で大村修文部長名で「お詫び」を発表。

(コメント)
戦争体験を語り継ぐことは、大変重要です。テレビゲームのような感覚で戦争を論ずる方々が自民党の中枢部をしめる状況になっている現在、体験者の言葉により多くの人が耳を傾ける必要があります。

戦後60年。敗戦時15歳の方は75歳。よほど意識していても、戦争の記憶の風化は避けられません。

当該入試問題に象徴される感覚は、多くの方が持っていると想像されます。このことを前提として、戦争の悲惨さ、平和の重要性を繰り返し繰り返し認識していく努力が必要であり、取り分け学校教育の分野での努力が求められます。

この入試問題の教訓として、一言。政治家の言葉は退屈であってはならないと思います。キラリと光る切り口で勝負したいと思います。


[2005/06/12]  地方公務員への攻撃

このところ、地方公務員の厚遇問題が集中的に報道されています。26兆4千億円に及ぶ地方公務員の報酬に国民の目を向けさせる意図を感じます。

現在我が国では、「貧しきを憂えず、等しからざるを憂う」という戦前型雰囲気が充満しつつあります。この機運に乗じて公務員叩きをする。大局観なきマスコミを動員しての「賃下げ大キャンペーン」が展開される可能性が濃厚となっています。

地方においては、公務員の給与は地域経済を支える重要な構成要素です。私が市町村合併に反対する理由の1つがそこにあります。ところが、地域住民の嫉妬感情の方が上回りそうな勢いです。公務員はウチの店では買い物をせず、大型店や他の地域の店で買い物をする。連中に給料をやっても、ろくに仕事もしないし無駄だ、という俗論が支配しつつあります。その店で買い物をしなくても、お金は地域を循環するものなのに。

とは言え、公務員への過剰な攻撃を先手を打って抑止し、ないしは回避することを考える必要があります。戦線を縮小し、攻撃力と守備力との均衡点を模索すべき段階だと思います。戦線維持のための玉砕戦術では、全てを失います。

私は、公務員の給与の一部を「地域通貨」で支払う合意を労組が提案すべきだと思います。この「一部」を思い切って大きくすることが必要です(数字をあげると誤解を生ずるのでやめます)。そうすると地域住民は、公務員の給与削減を喜ばなくなります。公務員も単なるサラリーマン根性ではやれなくなります。

労組の方は怒るかもしれません。しかし、「四面楚歌」の客観状勢を認識する必要があります。「国鉄民営化」は、サービスに対する国民の不満、ストへの感情的反発をうまく利用して行われた強力組合・国労、動労潰しだったことを忘れてはいけません。味方を増やす。このことを戦略的に追求すべきです。そのための一案として御考慮願いたいと思います。

こんな柔らかい頭を持ってるよ、というだけで宣伝効果ありです。


[2005/06/11]  石原都知事を支える「迎合の構図」

毎日新聞「記者の目」(6月10日)で、日下部聡記者の<石原都知事を支える「迎合の構図」> という一文が掲載されていました。

以下、その要旨。

知事の「求心力」を生み出してきた構造に根深い問題がある。浜渦武生副知事や特別秘書ら側近、都庁官僚、都議会、そしてメディアなど、石原知事は、あらゆる周囲の「迎合」に支えられてきたのではないか。

都庁官僚の場合。

都教育委員会が教育現場での「国旗掲揚・国歌斉唱」について、全国有数の厳しい締め付けをしているのは、知事が逐一指示しているわけではなく、教育長以下、都庁官僚が主導している。その横山洋吉教育長は6月23日付で筆頭副知事に就任する見込みだ。

石原知事や浜渦副知事に疎まれ、定年前に都庁を去った元都幹部の発言。

器用な役人は、知事が喜びそうなことを先取りしてやってしまう。知事は『対立』が好きだから、円満にやると『妥協した』と見なされる。だから、わざと現場と衝突するやり方をしてアピールする」

「多くの都幹部は、最初は違和感があっても、次第に進んで適応するようになった。それができなければ都庁を去るしかなかった。『自分』を持たない人が多いということでしょう」

都議会と「迎合の構図」。

浜渦副知事に辞職を迫った調査特別委員会(百条委員会)を主導した自民、公明両党は、石原知事の責任を問わないばかりか、「まれに見る政治家」などと称賛

百条委設置も、都議選を前に利権疑惑を持ち出して自民党をけん制しようとした浜渦副知事に、自民党が逆襲したというのが実情で、議会のチェック機能が働いたというより、権力闘争と見るべきだ。

そしてメディア。

新聞、テレビ、週刊誌の各メディアは、石原知事を「ポスト小泉」のキーマンか、「ご意見番」として取り上げるばかりで、地方自治体の長として適格なのかという視点ではほとんど検証してこなかった。

そうした反省から私(日下部氏)は東京都に対し、知事交際費や出張旅費、勤務日程表、公用車の運転記録などの情報公開を請求。開示された公文書を精査した上で、都政関係者への取材を重ね合わせた結果、知事の日常的な“公私混同ぶり”が浮き彫りになり、昨年初めに記事にした。

飲食への交際費支出が他の道府県に比べて異常に多く、しかも相手は石原知事の旧知の人物が目立った。支出相手の全員が記されていないなど、記録が不十分なケースも多く、公務員の接待を禁じた都の基準にも違反。勤務日程が「庁外」の日はごく限られた人物しか動静を把握しておらず、公用車を選挙応援に使った疑いも浮上。

海外視察も豪華。01年には南米ガラパゴス諸島で4泊5日のクルーズに乗船。計8人で1590万円の公費を使用。

昨年5月には、石原知事に交際費や旅費の返還を求める住民訴訟が起こされ、東京地裁で係争中。

近年の地方自治の大きな流れは、公金の使途や政策決定過程の透明化である。この中に石原都政を置いてみると、その「不透明性」は一層際立つ。

石原知事は3日の記者会見で、登庁が少ないことについて「毎日毎日同じ机に座っているのが能じゃないだろう」と言った。その通りだろう。だが、問題は、どこでどういう公務をしているのかを、有権者にきちんと説明していない点である。

石原知事の大胆な政策や言動にばかり着目して、石原都政の実態をほとんど報じてこなかったメディアの責任は大きい。

都知事は絶対権力者ではない。都民が税金を預けて仕事を委託しているのである。石原知事がそれに見合った仕事をしてきたのか、有権者が冷静に見極める時ではないか。

(コメント)
国政を放り出した元人気作家が都知事に。異様なほどの迎合に支えられた権力者像でした。

都の役人の行動様式と心理状態は、ファシズムの尖兵に似ています。絶対権力者は、「自分」を持たない人間を好みます。

議会が持ち上げ、マスコミが賞賛する。権力の暗黒部を指摘する社会的責任を放棄しての翼賛機関化。元人気作家を絶大な権力者に仕立てる「迎合の構図」がそこにあります。

この国にもう1人いる裸の王様。小泉純一郎氏の翼賛機関としてのマスコミ(政治部記者、ワイドショー関係者)は、何時目を覚ますのでしょうか。


[2005/06/10]  人口減少と市町村合併

平成の愚策・市町村合併。私はこれに反対し続けてきました。何故か。理由の1つは、人口減少です。

人口減少を先取りした国策として、平成の合併が行われたという見方も可能です。しかし、そうだとすると、これは見通しを誤っています。このまま行くと、人口減少どころか地域崩壊を助長することになります。

人口減少を防止し、過疎地を崩壊から免れさせるために、積極的に小規模自治体が存続できるあり方を研究すべきでした。従来は、過疎地優遇でした。これが過疎地甘やかしの施策であり、逆に過疎地を駄目にしました。近年の施策は、単純にこの逆を行こうとしただけです。

自治体があるということ、役場があるということ、これが過疎防止に必要です。それだけでは止められなかったのが、これまでの現実です。

役場プラス地域の意識改革が必要だったと思います。おまかせ主義を廃し、自らが立ち上がる。この決意なしに、どんな優遇策も無効です。意識改革の1つのあり方として、昨日の「一言」を述べてみました。

閉町・閉村した首長の皆さんに一言。何故、自治体職員と徹底的に話し合い、職員の大半に辞めてもらい、「NPO法人・○○村」の職員になってもらおうとしなかったか。

職員が、「公務員」として自らの生き残りを策するのか、「民間のNPO職員」として地域発展に尽力するのか、決意を確認してからでも遅くはなかったのではないでしょうか。


[2005/06/09]  町、村、逆転の秘策

私が過疎地のリーダーなら、以下の提案をします。

首長、議員を公募して、無投票当選させる。その前提として、住民評議会を創り(構成員は無報酬、選挙で選ぶ)、住民評議会が首長・議員候補を選定する。

現在の過疎地の陣容では、どうやっても地域再生は困難です。地縁血縁型議員では、議会が何かをなし得るということを期待する方が無理というものです。住民評議会は、地域の将来を委ねるべき「人物」の評価は適正にできるでしょう。これができなければ、「ジ・エンド」。

全国公募。試験をすることも考えていいでしょう。議員は常勤とし、職員が果たす業務もこなしてもらいます。予算の大枠と決算については、住民評議会の議決を得ることにします。

任意の機関として住民評議会を設けること、住民評議会の議決を強制力を伴わないことにすれば、条例で可能ではないでしょうか。地方自治法は「地方自治規制法」ですが、この程度のことはできると解釈したいものです。

ときどき、「名村長」「名町長」が出現します。しかし、それを待てないのが多くの地域の実情です。

奇策であることを承知で、提案します。もっとも、これを受け入れることができる地域なら、その時点で再生可能。


[2005/06/08]  松山・広島・福岡

四国・中国・九州の西日本ブロック(西国さいごく)を「州」とし、地方主権型社会を構想するとして、中心となる都市は、松山市、広島市、福岡市だと思います。東アジアの玄関・福岡。本州の拠点・広島。そして、これら2都市と連携が取りやすい松山。

このトライアングルを基軸として、政治経済を組み立てていきます。東京の磁力から自由になるには、複数の都市の連携による地域磁場の形成が必要となります。3地域鼎立構造、3都市鼎立構造が安定のある形です(3地域鼎立については、5月30日の一言「新天下三分の計」)。

ポイントは、キーステーションの獲得です。中央集権体制の下で、東京にのみテレビのキーステーションを認める仕組みを抜本的に改め、地方主権を象徴するキー局を創ります。

松山、広島、福岡にそれぞれキー局を置き、3つの地域から東アジアに向けて情報発信を行います。

松山市は、アジア諸国憧れの都市として、東アジアの拠点都市となります。南予は、松山市を支える後背地、取り分け食糧基地としてその存在が重要になってきます。

以上が、「南予崩壊→松山凋落」という自民党政治継続による愛媛衰退シナリオに対抗する構想です。

松山という都市は、南予という土壌に根を張った「花」です。南予という土壌が枯れればしおれる運命にあることを自覚して、「地域100年の大計」を立てるときがやってきました。


[2005/06/07]  南予の崩壊と松山市の凋落

私は最近、街頭演説などで南予(県外の人への注:愛媛は新居浜市、西条市等、県東部の「東予」、松山市を中心とする「中予」、宇和島市、大洲市、八幡浜市等、県南部の「南予」に3区分されます。愛媛の旧国名が「伊予」であることからの地域区分です。)の人口減少について述べるようにしています。産業の乏しい地域の将来を代表するものだからです。

宇和島市の将来。合併によって人口9万3千人となる宇和島市の50年後は、人口3万人。100年後の人口は8千人。

八幡浜市の将来。合併により人口4万2千人となった八幡浜市の50年後は、人口1万人。100年後は2千人弱。(国立社会保障・人口問題研究所HP参照。なお、東予は50年で人口半減のペース。松山市は、ここ20年間はそれ程人口が減らず、20年後から人口減少が本格化します。)

50年、100年単位で見れば、南予は崩壊します。このことを松山市民に告げても、関係ないという反応が返ってきます。

しかし、南予という地域は、松山市の人的資源の供給地であり、様々な資源の供給地であって、松山市という都市の後背地として重要な地域です。この地域が崩壊するということは、松山市の地盤沈下を意味します。いや、「地盤沈下」などという生やさしいものではないでしょう。

愛媛というエリアが崩壊する可能性すらあります。どうすればいいのか。その処方箋を提示するのが政治です。

5月30日に述べた、「新・天下三分の計」が解答の一端です。地方主権型社会・地域主権型社会を構想し、地方で富を生み出す仕組みを創出すべきです。

東京中心の自民党政治、東京に向かっての自民党スタイルの地方政治に未来はありません。政権交代は、地方の崩壊を食い止めるために必要です。


[2005/06/06]  警察不正経理・毎日新聞の社説

<警察と「裏金」 一課長の責任追及で済むか>

北海道警が、会計検査院の検査を受ける際に領収書などを偽造したとして、北見方面本部の前警備課長を偽計業務妨害容疑で書類送検した。警察の一連の組織的な裏金問題に関連しての立件は、全国で初めてだ。

容疑は悪質で、業務上横領容疑などで告発された道警幹部の1人でもあるから、前課長の送検は当然と言っていい。だが、釈然としないのは、警察の裏金工作は個人犯罪ではないからだ。領収書の偽造なら数えきれず、多数の警察官が加担したはずだ。組織の責任が問われているのに、トカゲのしっぽ切り式に解決を図ろうとするなら心得違いだ。警察は組織も運営も教育も全国均質。裏金も全国の警察に共通することは、多くの警察官の証言からもうかがえる。裏金の存在が明らかになった警察本部だけが特別なわけはあるまい。

正当化するつもりはないが、警察が組織ぐるみで裏金に頼らざるを得なかった事情は理解できないわけではない。薄給で警察官の生活が苦しかった時代もある。捜査や情報収集に必要な目に見えぬ出費を支給する予算も慣行もなかったから、優秀な警察官ほど職務のために自腹を切った。見かねた上司がやむを得ず手を染めたのが裏金作りの発端ともいう。その後も警察署には、捜査本部が設置されても、深夜まで聞き込みに当たる捜査員の夜食を賄う予算さえない状況が最近まで続いていた。今も時間外手当は打ち切られ、出張旅費も満足には支給されない、というのが警察部内の常識だ。

予算増額を求める警察庁の交渉が、旧内務省時代の警保局と地方局の対立が尾を引いて難航、同じ公務員でも警察官は諸待遇で割を食わされた面もある。都道府県の知事や議員は、汚職摘発など自分たちに不利な事態を招きたくないので警察の予算に冷淡だ、との指摘もまんざら見当外れではない。

だからといって許されるはずはないのに、捜査上の秘密などを口実に裏金作りをエスカレートさせてきた傾向さえ認められるのだから、警察当局の責任は重い。警察署や部課ごとに裏金をひねり出し、本来は正規に支給すべき捜査員への手当だけでなく、幹部の飲食代金にまで充当させてきたのが実態だろう。罪深いのは、自らは文書偽造などの不正には直接かかわらず、役得として裏金の恩恵を受けた上層部である。

組織的な不法行為だったことを認めぬまま、一部の警察官を訴追したり、退職者から裏金の一部を返納させて解決を図るだけでは、市民は納得できない。まだ裏金の存在が露呈していない警察本部も「バレなければよい」との考え方を改め、きちんとした説明と謝罪をすべきである。警察庁が指導力を発揮し、一連の問題の決着を図るべきことも言うまでもない。

問題解決が長引く間に、警察への信頼が薄れていることを憂う。治安にも影響する。潔く組織全体の旧悪にけじめをつけ、再出発することを市民だけでなく、人一倍正義感の強い全国の警察官が望んでいることを忘れてはならない。

(コメント)
要約しようとしましたが、よくできているので全文掲載させていただきました。

裏金に頼らざるを得なかった事情はあると思います。しかし、組織犯罪であり、悪質な犯罪であることを確認することが、この問題の解決の第一歩です。

警察と知事・議員との利害対立の面は無視できないものがあります。「裏金疑惑追及」がある種警察権力との駆け引きになる面があることを認識しつつ、これからの疑惑追及を注視したいと思います。「選挙違反立件」での意趣返しを含めて。


[2005/06/05]  泰阜村・村長の私案

(ニュース)
長野県泰阜(やすおか)村の松島貞治村長は4日、村道の維持管理や森林整備などの行政事務を県などに委託し、村の業務は在宅福祉など一部事業に絞るという私案を公表しました。地方自治法は市町村を総合行政の主体と位置づけており、私案はこの役割を一部放棄する内容です。立法措置がなければ実現できませんが、合併しない小規模町村側が提案した生き残り策として注目されます。

新潟県関川村で開かれた「小さくても輝く自治体フォーラム」で報告。合併せずに自立の道を目指す自治体など約50市町村の関係者が参加しました。

泰阜村は人口約2100人。合併せずに生き残る方策を検討してきました。松島村長は「地方交付税がさらに削減されることが予想されるなかで、小さな町村が総合行政を続けることは無理だ」と述べました。

松島村長によると、道路建設・維持や河川管理、砂防などの事務を大幅に県に委託し、介護保険やゴミ処理などはこれまで通り広域連合で扱う。そのうえで、村の業務を戸籍管理など窓口業務のほか、村が重点的に推進してきた在宅福祉事業や村税徴収業務などに絞り込む、としている。

首相の諮問機関の地方制度調査会が2003年にまとめた答申では、小規模町村の業務を限定し、大半を都道府県に代行させる制度の導入を「引き続き検討する必要がある」としました。そのもとになった西尾勝副会長(=当時、国際基督教大教授)の私案は、小規模町村の事務を「窓口サービスなど一部」に限ったため、全国町村会などから猛反発を受けた経緯があります。

松島私案は西尾私案よりも広い権限と業務を小規模町村に残す内容。松島村長は「業務を削りながらも一人前の成人として生き残る道を探りたい」としています。

(コメント)
基礎自治体とは何なのか。このことが問われる問題です。

基礎自治体を総合行政の主体と考えると、合併によって財政力を強化しなければならないという方向性がでてきます(もちろんそれ以前に、自治体ごとのリストラが必要でした。それより前に、国のリストラが必要です)。

総合行政の主体というところを放棄することにより、「自治」(=住民自治)を護りたいというのが、泰阜村の村長の発想だと思います。

私は、基礎自治体が上位者であって(住民が最上位者)、県は下位の機関として基礎自治体を補完すべきだと考えます。

こういう思想を根幹に据えた、地域主権型社会を構想すべきときです。これを実現するためには政権交代が必要であるというのが、衆院選立候補の動機でした。


[2005/06/04]  高齢化の現況

(ニュース)
政府は3日、2005年版「高齢社会白書」を発表しました。65歳以上の高齢者人口は2004年10月1日現在、2488万人で、高齢化率は19.5%。高齢化率は2015年に26.0%2040年には33.2%に達すると見込まれています。

2004年10月1日現在の総人口は1億2769万人で、前年同期と比べ6万7000人(0.05%)増加しましたが、増加数、増加率とも戦後最低でした。一方で、65歳以上の高齢者人口は、前年同期と比べ57万人(2.3%)も増加しています。

90歳以上の人口は101万6000人に達し、初めて100万人の大台を超えました。100歳以上人口も2万3000人。

独居の高齢者が急増しています。全高齢者人口に占める割合は約14%。1980年当時の約8%から急増しています。

年金・医療・福祉などの社会保障給付費のうち、高齢者関係給付費は約58兆円(2002年度)で、全体の69.9%を占めています。

愛媛県の場合。高齢化率・23.3%で、全都道府県中、13位(所得水準がこうだといいのに)。

(コメント)
10年後は4人に1人。35年後は3人に1人が高齢者。こうなると、「高齢者」の定義自体が変わる可能性があります。

75歳までは、労働ないし社会貢献をしてくれ。90歳になったら、社会が全て面倒を見る。だから、生活設計は90歳まででいい。それまでに貯金を使い切った方が幸せだ。

こういう構想も面白いと思います。堺屋太一氏は、70歳まで働ける社会、85歳になったら社会が全て面倒を見る社会がいいと主張されています。

私もこれに倣いたいと思っていますが、まだまだ長寿が進行しそうなので、念のため、「75歳、90歳」説にしておきます。

最近、90歳でも結構元気です。人生のゴールデンゴール・90歳を目指して頑張ろう!


[2005/06/03]  男はつらいよor弱いよ?

(ニュース)
昨年1年間に自殺した人は3万2325人にのぼり、7年連続で3万人を超えたことが、警察庁のまとめで分かりました。

男性が2万3272人で全体の72.0%。年代別では60歳以上が1万994人で最も多く、7年連続の1万人台。50歳代が7772人、40歳代が5102人で、40歳以上の中高年が全体の73.8%を占めました。

自殺の動機では、健康問題が45.7%、経済・生活問題が24.6%など。

自殺者の高年齢化が進むとともに、経済的に追い詰められた中高年男性が自殺に走るケースが目立っています。

(コメント)
自殺者の多数は、中高年の男。経済的な重圧を感じやすい立場、そして、女性と比較しての精神的な脆さ。

1997年までの我が国での自殺者が2万人から2万5千人だったことを考えると、1998年を境に社会のありようが質的に変化したと言わざるを得ません。

社会の二極分解が進んでいます。一部の人達に重圧が掛かってくる状況が継続しているということです。


[2005/06/02]  快傑ハリマオ

真っ赤な太陽燃えている
果てない南の大空に
轟き渡る雄叫びは
正しい者に味方する
ハリマオ ハリマオ
ぼくらのハリマオ

三橋美智也の唄う主題歌。

怪傑ハリマオは、ターバンのような帽子とサングラスの出で立ちで、腰には拳銃を下げていました。昭和35年から36年にかけての放送だったようです。そのころ私は7歳。

日本海軍からインドネシア・ジャワ島に派遣された一人の情報将校が、途中で軍の命令に背いて「ハリマオ」=マレーの虎となり、ジャワ独立運動に身を捧げ、現地民衆とともに闘うというドラマでした。

これもあとから調べたもので、当時はかっこいい正義の味方として見ていました。頭に手ぬぐいを巻いたり、おもちゃのサングラスをしたりして、正義の味方の気分にひたっていました。

フィリピン・ミンダナオ島の旧日本兵の話は、なんだか分からない話になりました。旧日本兵の話を聞いて、「ハリマオ」が脳裏に甦って、インターネットで調べました。下記は、主題歌のメロディー。 

 http://hccweb1.bai.ne.jp/kakinoki/midi/midi301.html


[2005/06/01]  側用人

(ニュース)
東京都の石原慎太郎知事は5月30日、側近の浜渦武生副知事を更迭する意向を固め、都議会側に伝えました。浜渦氏は都議会の調査特別委員会(百条委)での証言が、同委員会で「偽証」と認定され、都議会自民、公明両党から辞職を求められていました。

石原知事は都政の混乱を収拾するためには、浜渦氏の辞職は避けられないと判断しました。

浜渦氏は石原知事が国会議員時代から秘書を務め、2000年に副知事に就任。知事側近として政策や人事に大きな影響力がありました。同氏が了解しないと担当者が知事に事業説明もできない状態になっており、都議会からは「独断専行」などと批判されていました。

(コメント)
ほとんど都庁にいない石原氏に代わって、浜渦氏が側用人政治を行っていたことの矛盾が噴出した形です。

君臨すれども仕事せず。このスタイルで東京都のトップが務まるのか疑問です。前任者が青島幸男氏なのだから、どうにでもなるポジションなのかもしれません。

嗚呼10年前。大前研一氏が東京都知事になっていたら、違った国のかたちができていた可能性があります。  


玉井彰の一言 2005年6月 四国の星ホーム前月翌月