玉井彰の一言 2005年9月 四国の星ホーム前月翌月

[2005/09/30]  油断

民主党の敗因はいくつもありますが、総選挙の時期についての読み違えも原因の1つです。

私も含めて多くの候補者(議員)が、来年の秋を目指していました。候補者(予定者)の本音として、選挙があると判断しても金がなければ動けないし、先行して金を使っても選挙がなかったとすると苦境に陥ります。

「解散はない」としておく方が余計な出費を抑えられるので賢明であるという判断に傾かざるを得ないのが実態です。

与党の候補者も準備不足のはずでしたが、官邸が完璧に仕切った選挙であり、選挙区ごとに相手陣営を見ながら準備をするという従来型の選挙ではなかったということです。

マスコミと企業総動員態勢の選挙を官邸主導で行い、個別候補者の対決というのとは別次元の戦いでした。

私の場合、来年秋より早まった場合は「空振り」でも仕方がないと割り切っていました。全てが来年秋にピークにもっていく計画でした。そもそも劣勢の戦いですから、「内角高めにヤマを張る」というのも許される作戦の1つだと思っています。


[2005/09/29]  対案は必要か

民主党が、郵政民営化法案についての対案を作成しています。「対案がない」という挑発に乗っているのではないかと心配しています。

政策を売りにしている政党ですから、政策で勝負するのは大いに結構ですけれども、情報の限られている野党が完璧な法案をつくることは不可能です。多額の費用を掛けてシンクタンクをつくれば別ですが。

「正確だったが、理解されなかった」というのでは、今回の総選挙の教訓を活かしたことにならないのではないでしょうか。

「対案」は、大雑把でいいから、政府案と対峙する、分かりやすくて明確なコンセプトを提示するものでなければならないと思います。研究の成果を競うのではなく、売り出し方の問題が重要です。

そういう観点からつくっているのだろうとは思いますが・・


[2005/09/28]  ファシズム(ナチズム)の研究が必要

今回の総選挙はマスコミ総動員の翼賛選挙であり、「民意」に基づく独裁政権樹立をもたらすものでした。

今回が例外であり、次回は揺れ戻しがあると考えるのは早計だと思います。今回の選挙で決定的な役割を果たしたのは、従来型の「無党派層」ではなかった可能性があります。

これまでは政治に無関心であり、選挙にも行かなかったが、今回は小泉さんの「改革」で何かが変わると考えた方々がいたということです。そしてこの層に向けられたキャンペーンが仕組まれ、マスコミが「幇助」の役割を果たしたということです。

「民意」が生んだ独裁者ヒトラーについて研究する必要があります。今回の「小泉劇場」は、「嘘も百回付けば本当になる」という、ナチスの宣伝大臣・ゲッペルスの手法そのものだからです。

このやり方なら、テーマ設定と舞台装置を変えれば何度でもやれる(皆さん、3〜4年で忘れてくれる)という「教訓」を学んだ方々がいるでしょう。「コイズミ」でなくてもやれるやり方が練られるでしょう。

もちろん、これに対する「ワクチン」の開発が急務であり、ファシズム研究が必要とされます。

もっとも今回は、「郵政民営化」に伴う特殊利益を期待した方々からの「営業経費」が大量に流れ込んだことが原因だとすると、次回は「買収原資」がないということは充分考えられます。


[2005/09/27]  憲法9条

9条の歴史は、解釈改憲の歴史でした。非武装中立。これが憲法9条の予定する我が国の姿です。しかし他方、日米安全保障条約があります。上位の規範は憲法ですが、政治力学的には「日米同盟」の論理が幅を利かせます。

「日米同盟」や世界の現実に反しないように9条の解釈を弾力化するのか、「日米同盟」と世界の現実を受け入れつつ国家権力をより強く縛る憲法規範を新たにつくるかの違いであり、国が実際にやらなければならないことは同じではないか。こういう疑問が頭をもたげます。

憲法が法規範として力を持つためには、弾力的すぎる解釈・運用は慎むべきです。憲法規範に国を従わせる力がないという見方が広がることにより、憲法の権威が損なわれます。憲法の力を維持するためには憲法改正が必要です。

しかし今回の総選挙を経験して思うのは、国民が単純なスローガンの連呼に弱かったということです。複雑な憲法論議をするには機が熟していないようにも思えます。

あえて改正の議論を巻き起こして国民が政治的に成熟する道を選ぶのか、一時の熱狂で60年近く維持してきた国民の財産である9条を葬り去る危険を回避すべきなのか。

私は、改正の議論はタブーを設けず行われるべきであるとしても、現状では憲法改正を行わないことが賢明であろうと思います。今回の選挙がマスコミや企業(トヨタに代表される勝ち組企業)を総動員して行われた翼賛選挙であったという認識から、改正の時期について慎重な判断が必要だと思うからです。

ただし、政権交代への捨て身の戦術として憲法改正を仕掛け、憲法改正を問う国民投票とともに衆議院の総選挙に持ち込む(2年後に衆参同時選挙)という戦略はあり得る判断であろうと思います。現在進行形の「独裁」を打ち破ることの利益が優(まさ)るという判断です。4年後だったら意味がありません。


[2005/09/26]  男女共同参画型社会

男女共同参画型社会の推進は、現代社会の合意事項であり、実行が迫られる課題です。

かつて男は仕事、女は家庭という社会通念を背景として、一家を扶養するに相応しい給与が男性に支払われました。この給与体系を前提として女性が男性と同様に働くとすれば、家計は大幅に楽になるはずです。実際、そういう例もありました。

しかしながら、男女共同参画を推進することと引き替えに起ころうとしている現実は、賃下げです(年収300万円以下時代の到来)。女性が働かなくては家計が維持できない状態におかれることにより、女性が労働市場に放り出されるという形で「男女共同参画」が実現するとすれば、これは不幸な事態です。

これでは、個別資本の論理とは裏腹に、少子化に歯止めが掛からず人口減少スパイラルによる社会の衰退しか見えてきません。

男女共同参画型社会を実現する前提として、労働の価値と子を産み育てる価値とが等価であることを確認し(あるいは、労働<家庭(出産、育児))、全社会の労働により出産・育児を支援する労働と税の体系をつくる努力が必要になってくると思います。

出産・育児を法律的・経済的に支援する制度と、地域社会が子育て・教育の場となっていくネットワーク社会の形成とが車の両輪として必要です(後者だけを追求するのは、虫のいい話です)。

これは、「小さな政府」では無理なテーマだと思います。


[2005/09/25]  アジア向け愛国心

世論の右傾化が懸念されます。中国・韓国での「反日」に対する過剰反応や、靖国参拝への世論などを見ると、我が国の歴史を無条件に肯定する結果、アジア諸国に我が国のことをつべこべ言って欲しくないという心情がくみとれます。

ところが、対アメリカになるとからっきし駄目。郵政民営化の問題も、突き詰めればアメリカに日本国民の資産(郵貯・簡保の340兆円)を自由に運用されて黙っているのかという問題でしたが、これは盛り上がらず仕舞い。

アメリカに対しては、国益も何もなし。愛国心の欠片も発揮できず。ところが、アジアに対しては、国益を高らかに論じ、愛国心の高揚を図る。

要するに、植民地根性。2005年9月11日は、我が国が米国の経済植民地になった記念日ということになってしまうのでしょうか。


[2005/09/24]  民主党と労組との関係

官公労が次の焼き討ち対象ですが、連合傘下の(民間)労働組合も、かつて自民党が立案した労働組合費を給与から天引きするチェックオフ制度を全面禁止する労働基準法等の改正案が国会に上程される(かもしれない)ということで揺さぶられる可能性が出て来ました(憲法改正以外何でもできる国会)。

嫉妬感情が支配する世論の動向からすると、上記法案上程を自民党が決断すれば、拍手喝采で自民党支持率・小泉政権支持率が当座跳ね上がるでしょう。

ところが、これで労組を揺さぶり、自民党支持へと引き付けることに万一成功したとしても、民主主義が機能する限り、翼賛的な政治体制は長続きしません。

ただし、労組の組織率低下は深刻であり、労組が労働者の正当な代表であることを主張するためにも、民主党との適切な連携が模索されることになるでしょう。視点を変えると、労組が新たな国民政党・民主党を支援する市民団体の1つとしての自己イメージを形成するということになります。これが労組と民主党の成長のために避けて通れない道筋です。「労組を切る」などという話では決してありません。

じゃあ、「もう民主党のために頑張らなくてもいいのか」という労組幹部の声が聞こえてきそうですが、全ての国民が政治に責任を負うのが民主政治ですから、意識の高い人にはそれなりの道義的な責任が発生することは論を待たないことであり、そこから逃げ出すことはできません。

少なくとも言えることは、「労組が最大のスポンサーである民主党」のイメージでは小選挙区で勝つことは困難であり、労組と民主党との「適正車間距離」が模索されなければならないということです。民主党サイドから見れば、国民のための開かれた政党として成長するために、政党としての自律性とアイデンティティーを再確認する必要があるということです。

民主党が国民の多数を占める勤労者の側に立つ政党であるということを放棄する議論ではなく、勤労者のため、生活者のための政治を目指すための議論です。


[2005/09/23]  嫉妬

これからの日本政治を動かしていく負のマグマが、大衆の嫉妬心です。「郵政民営化」の議論に拍車を掛けたのが有権者の嫉妬心でした。「いい思いをしている連中」の中でターゲットになったのが、「郵政」の方々でした。

大衆の嫉妬感情を煽り、安定した中間層を「焼き討ち」することにより二極分解した社会をつくる。そのことによりローコストの経営を実現して、グローバル化した世界の中での勝ち組になる。これが、小泉自民党と財界の戦略です。

「下層」に転落しつつある方々が、手っ取り早くやっつけられるターゲットを焼き討ちする快感に酔いしれることで満足感を得ることになります。

「貧しきを憂いず、等しからざるを憂う。」というのが平等主義だとも言われています(毛沢東が言ったのか?)

しかし、これは危険な発想でもあります。「下層」の人達が「上層」に目を向けることなく、「中間階層」への焼き討ち政治を支持する感情面での支えになりうるということをしっかりと認識しておく必要があります。

次の「焼き討ち」対象は、公務員です。


[2005/09/22]  国論二分

今回の選挙、議席数だけから言えば小泉自民党圧勝で、「郵政民営化」が支持された形になっていますが、選挙区で与野党に投じられた票数を見ると、「国民投票」としては否決ないしは国論二分という状態であったと思われます。

しかも、民主党を支持していただいた方の中には、真剣に日本の将来を憂いた方々が多かったことを、選挙運動を通じて感じました。

国民の不安・憂慮の声は議席数に反映されず、地下のマグマとして蓄えられることになりました。このマグマが次回の選挙までどういう動き方をするかがこれからの政治を動かす重要な要素になります。


[2005/09/21]  「日本を、あきらめない」

民主党の総選挙スローガン、「日本を、あきらめない」が不評でした。

「今回の総選挙では、声の大きい奴が勝つ。」 私は周囲にそう言い続けました。ドラ声をあげろという意味ではありません。強いメッセージです。小泉自民党のメッセージ力にまさるメッセージを党本部に期待していましたが、見事に裏切られました。

岡田氏の気持ちはよく分かりました。しかし、前提なしには分かりづらいメッセージでした。

「郵政」のリングに駆け上がり、劇画「あしたのジョー」のクライマックス、矢吹ジョー対力石徹のノーガードの撃ち合いを岡田代表がやってくれていたらどうだったか。

「民主党を、あきらめない」そして、「日本を、あきらめない」 

巨大与党による専制政治に対抗するために、民主党の再生が必要です。


[2005/09/20]  チラシ折込

選挙期間中、「プレス民主号外」が送られてきました。ポスティングもチラシ折込も許されるものでした。

農林水産業関係の政策が掲載されていたので、地域を指定して折込をお願いしようとしましたが、愛媛では無理だとの回答を得ました。

党本部に問い合わせたところ、地域で対応が異なっており、現状ではその地域でのチラシ折込の基準に従わざるを得ないとのことでした。

チラシ折込に対する様々な社会的圧力との関係で決まってくることなのだろうと思います。

自民党王国・愛媛を象徴する話ではあります。


[2005/09/19]  次の選挙で揺り戻しはあるか

自民党が勝ちすぎたという意見もあるようです。だからと言って、次の総選挙で揺り戻しがあるのかと言えば、そう簡単ではないでしょう。

今回の選挙では、終始自民党優勢が伝えられていました。しかし、流れはそのままでした。「勝ち馬」に乗りたいという心理状態が支配したものと見られます。

このままであれば、翼賛政治への流れができる可能性もあります。これからの3〜4年で、どのくらい社会の二極分解が加速していくかが大きなポイントになります。

これではいけないのではないかという気持ちと、諦めてしまう気持ちとが交差する中で、民主党がどのような世論を形成していけるのかが問われてくると思います。

支援団体の意見を聞くという受け身の政治姿勢ではなく、積極的に一般有権者に対してアピールし、世論を形成していく姿勢が必要です。世論形成能力の問題になります。


[2005/09/18]  新代表

民主党代表選挙の立合演説会、そして開票。なかなかスリリングでした。新代表・前原誠司氏に民主党の改革を期待します。

菅・元代表にはお世話になっており、また国民的人気を考えても、菅代表・前原幹事長(or代表代行)がいいのではとの思いがありました。他方、民主党の危機、国家の危機を乗り越えるには、若い力が必要であるということも十分理解できました。

多くの民主党議員が迷ったのでしょう。その結果が2票差という数字に表れたのでしょう。

新代表には、失敗を恐れず大胆に切り込んでいただきたいと思います。


[2005/09/16]  無党派

今回の総選挙は、一定程度無党派層の取り込みに成功した自民党に軍配が挙がりました。

民主党には、無党派の多くが自分達を支持してくれるものであるとの、根拠なき思いこみがあったのだと思います。

しかし、特定政党を支持しないから無党派であって、その時々の選挙で無党派の動向が変化することを計算に入れておかなければなりません。

今回の選挙では、自民党が自らの支持基盤を切り崩してでも「改革」(にせ改革だが)を行うというイメージ形成を行い、無党派層の共感を得ることに成功しました(実際には、特定団体の影響が強まっています)。

これに対し民主党は、労組がバックにいるから思い切った改革に取り組めないとの執拗な攻撃を自民党サイドから受け、これが大きなダメージとなりました。

(明日は東京。代表選挙のオブザーバー。)


[2005/09/15]  地域防衛を

格差拡大型社会が総選挙で承認されました。これから、個人間での格差拡大と大都市と地方での格差拡大が顕著になってきます。

各地域の防衛が急務です。地方都市の衰退に拍車を掛けないために、中心市街地の戦略的な整備が必要です。

人口が減少するという冷厳な事実および予測を受け入れ、それに対応する地域づくりを行わなければなりません。

先手を打つ発想が求められます。


[2005/09/14]  トヨタの選挙運動

今回の選挙で、トヨタが自民党支持を打ち出して選挙運動を行ったことが注目されます。

従来政治と距離を置いてきたといわれるトヨタが選挙運動を行ったのは何故でしょうか。

「国益」という概念が小泉自民党からなくなり、多国籍企業となったトヨタの利害と一致したということではないでしょうか。


[2005/09/13]  自民党はなくなった

かつて地方重視の政策を展開していた自由民主党はなくなりました。同じ看板を掲げるのは、「小泉自民党」。

「小泉自民党」は、アメリカの世界戦略で行動し、アメリカ資本の利益を護る政党です。

日本が経済植民地になる選択をしたのが今回の選挙。主観的な意図はどうあれ、国民の選択です。

地方の利益、国民の利益を護るのは、新たな国民政党民主党です。民主党の再出発は厳しいですが、国家国民の利益を護るために立ち上がらなければなりません。


[2005/09/12]  格差拡大型社会が承認された

個々の有権者の皆さんは、それぞれの思いで投票されたのでしょう。

しかし、「郵政民営化」は1つの象徴であり、今回の選挙の結果、個人における格差拡大、大都市と地方における格差拡大の路線が支持されました。郵政民営化は、勝ち組がもっともっと勝てるアメリカ型弱肉強食社会への一里塚であり、「勝ち組の勝ち組による勝ち組のための政策」です。

次のターゲットは公務員。既得権益をはぎ取る、小さな政府の実現という名目で、国民の嫉妬心を焚きつけて公務員へのバッシングがなされるでしょう。中間的な安定層が「焼き討ち」に合います。

公務員の皆さんへの忠告。公務員の労組が積極的に提案して、「地域通貨」を給与の一部に組み入れ、お金が地域を循環することに一役買うことが必要です。住民を見方にする戦略が必要になってきます。

常識的に見て、3年間は衆院選挙はないでしょう。有権者の皆さん、取り分け地方の皆さんは痛みに耐え、これからの政治の流れを見つめて下さい。自民党政治家のリップサービスで癒やされる程度の痛みであれば幸いです。

これからの国政選挙は、党首が有権者に伝えるメッセージが重要になります。そして、党主導の政策の選挙になります。従来のつながりで政治家を選んでも、その政治家が党の政策に反して何かをするということはありません。

このことが確認できたとしたら、今回の総選挙は有意義であったと思います。


玉井彰の一言 2005年9月 四国の星ホーム前月翌月