玉井彰の一言 2005年12月 四国の星ホーム前月翌月

[2005/12/31]  日はまた昇り、そして沈む

景気回復の掛け声とともに、株価が値上がりしています。今年末の終値は1万6111円43銭。前年末の終値1万1488円76銭から4割増。

構造改革の成果と喧伝したい小泉内閣ですが、「改革」とは無関係の景気循環+中国特需と考えるべきです。

「皆さん!日は西に沈みました。私の魔法で東から昇らせて見せましょう。」というインチキ魔術師。待つこと10時間あまり、日は昇ります。魔法ではなく自然現象です。小渕内閣時代の株価は2万円でした。来年以降、また沈んだということであってはなりません。

地方の中小零細企業では、景気回復というのが実感できません。「適者生存」ということで納得すべき事柄なのかどうか。

地方から日本が活性化するのが真の改革です。分権国家・日本が幾つかの地域の競争により活性化する姿を見たいものです。

「小さな政府」ではなく、「小さな中央政府」を目指すべきだと考えます。


[2005/12/30]  自民党政治家の苦悩

9.11選挙で大勝した自民党ですが、良識ある自民党政治家は苦悩していると思います。

バカボンのパパ(コイズミ)が「これでいいのだ」と言うと、「チルドレン」が「そうでございます、御主人様」という馬鹿げた政治が、この世のものとして実在します。

見識とか、歴史認識とか、大局観とかはどうでもいい政治。この風下に立たなければならない自民党の政治家諸氏に同情します。

もっとも、勇気がないんだよね。政治家は野党の方が面白いのに。(万年野党ではだめですけれども)


[2005/12/29]  団塊世代の退職金

(読売新聞より)

1947〜49年に生まれた「団塊の世代」の都道府県・政令市職員は、2009年度に定年退職のピークを迎え、同年度に自治体が負担する退職手当は5万1245人分、総額1兆4029億円に上る見込みです。

過半数の自治体が現時点では全額支給の財源を確保できるかどうか分からないと回答しており、団塊世代の大量退職が地方財政に打撃を与える実態が鮮明になりました。

(コメント)

公務員だけでなく、民間企業でも大量の退職者が出ます。雇っている側からすれば大変ですが、富が国・自治体・企業から退職サラリーマンに移転するのですから、大きなチャンスだという見方もなり立ちます。

団塊世代の財力と活力とを地域社会でどう活かしていくのかが問われます。彼等の世代から以降は、普通の年寄りにはならないだろうと思います。


[2005/12/28]  渡る世間は鬼ばかり

一連の耐震偽装問題や手抜き工事を見ていると、我が国の建築物で安全なのがどのくらいあるのか心配になってきます。

対策として考えられる一案として、買い主側の不動産審査義務付け制度(建築士がその任にあたるべきかどうかは別途考慮が必要でしょう)の創設があります。不動産の土壌、建築物の強度や居住快適性について審査します。

十重二十重に違法・手抜き工事対策を講じなければならないと思います。審査する人が姉歯さんのようだったり、あるいは今回登場した検査会社のようだったりという、万が一のケースに備えて、保険制度をミックスして、買い主保護につとめます。

「小泉構造改革」の行き着く先は、渡る世間は鬼ばかりの世界です。それを前提とした制度設計が必要です。公共工事にも適用すべきだと思います。


[2005/12/27]  靖国神社合祀

11月8日の「一言」で言いたかったこと。

(1)中国・韓国に批判されるからA級戦犯合祀がいけないのではない。

(2)極東軍事裁判が正当だから合祀がいけないのではない。

(3)我が国民に地獄の苦しみを味あわせ、多くの英霊達の人生を奪った無能・無責任指導者を英霊達と一緒に祀るべきではない。

(4)「指導者」達は、「生きて虜囚の辱めを受けるな」と檄を飛ばしていたはずなのに、「虜囚の辱め」を受けているではないか。この連中と英霊とを合祀すべきではない。

上記の点については、繰り返し主張していきたいと思っています。最近、新聞の投書欄で同様の趣旨の意見があったのを読んで、意を強くしています。

もっとも、A級戦犯の方々の方が、合祀を辞退したい気持ちなのではないでしょうか。

忘れられがちなのは、アメリカとうまく交渉したA級戦犯が、戦後華やかな政治生活を送ったということです。その意味では、靖国に合祀されているA級戦犯を気の毒に思います。


[2005/12/26]  公務員の人件費

(毎日新聞ニュース)

民主党の前原誠司代表が重点課題に位置づけている公務員制度改革をめぐり、同党が9月の衆院選のマニフェスト(政権公約)に掲げた「国家公務員の総人件費を3年で20%削減」との数値目標が、党内対立の火種に浮上してきた。目標堅持をうたう前原氏に対し、官公労系議員は「実現不可能」と強く反発。来年の通常国会への対案提出に向けた党内調整は難航しそうだ。

前原氏は24日の京都市での講演で「(数値目標を)見直すことはあり得ない。さらにどれだけ減らせるかを議論する」と語った。「3年で20%」の目標を上積みする可能性に言及することで、数値目標の骨抜きを目指す党内の動きを強くけん制したものだ。

同党が20日にまとめた改革案の中間報告は、数値目標に反発する官公労系議員に配慮する形で、原案にあった「3年で20%」の明記を見送ったうえで「政権公約の考え方を発展させる」との表記にとどめた。さらに「3年で20%」に対しては、官公労系以外からも「選挙中に政治判断で決めた目標。急激すぎて法案化は難しい」(幹部)との声が漏れており、執行部内では「20%削減は維持するが、3年の年限は外す」という案さえ浮上している。

しかし、労組寄りの姿勢が衆院選の惨敗につながったと判断している前原氏は、この問題での妥協はしない構えだ。「脱労組依存」を強調してきただけに、妥協すれば中堅・若手の支持も失いかねない。24日の発言の背景にはこうした事情があるが、官公労系議員の態度がさらに硬化することも予想される。

(コメント)

公務員が嫉妬の対象となっていることが背景にあります。そして、連合傘下の労働組合が恵まれた層の労働者を代表する組織であるとの見方も強くなってきています。このことへの怯(おび)えが民主党執行部にあります。

これまでも主張してきましたが、公務員の給与を減らすよりも給与の一定割合を地域通貨で受け取ることを公務員労組が積極的に提案すべきです。

地域通貨の制度確立にも労組が協力すべきです。むしろ、積極的に推進する立場に立ち、地域経済を地域通貨により積極的に防衛する旗振り役を労組が演じるべきです。

労組が自己の権利主張をする団体から地域での責任を負担する団体に脱皮したことを、市民にアピールできるかどうかがポイントです。

民間労組も同様の提案を行い、地域防衛の立役者となることを目標としていただきたいものです。民主党の路線は、このような方向をサポートするものであるべきです。


[2005/12/25]  「ルールはルール」なのか

女子フィギュアスケートの浅田真央ちゃんが国際スケート連盟(ISU)が定める年齢制限でトリノオリンピックに出場できないことが話題になっています。

シニアの大会に出場して、初戦の中国杯2位。シニア2戦目のエリック・ボンパール杯で優勝。3戦目のグランプリファイナルでも優勝。

日本スケート連盟は優等生的な立場を取っています。しかし、スポーツ界ではルール変更は頻繁に行われており、ルール、ルールと絶対視する必要などどこにもありません。

オリンピックが2年に1度ならそれほどの問題ではありません。しかし、4年は長い。女子フィギュアの場合だと、選手生活のピークがその間に過ぎてしまう可能性があります。

しかも、他のシニア国際大会に出場できてオリンピックは駄目という合理的な理由はありません。

日本主導で世界のルールを創る気概が必要です。政治の世界も同様。「優等生」でいることには何の意味もありません。 


[2005/12/24]  中国への親しみ

(日経ニュース)

内閣府が24日に発表した「外交に関する世論調査」によると、中国に「親しみを感じる」と答えた人は前年比5.2ポイント低下の32.4%となり調査開始以来、最低となった。

日中関係が良好だとする回答も19.7%と前年の28.1%から大幅に低下し過去最低。小泉純一郎首相の靖国神社参拝への中国政府の反発や、今春に中国内で起きた反日デモが影響したとみられる。

(コメント)

インド・パキスタン、独仏の歴史に見られるように、隣国との関係は難しいようです。

日中の関係は、日本の政治的傾向を映し出す鏡のような一面もあります。

中国は常に過剰反応します。かつては、それが日本側の自制につながっていましたが、小泉政権になって、相手が過剰反応すると、もっとやってやれというサディスティックな方向に向かうようになってきました。これを「ネット世論」が後押しします。

この循環を断ち切れるのは、日本側の大人のセンスです。現状では。 


[2005/12/23]  人口減少元年

2005年が人口減少の始まりになる可能性が濃厚となりました。政府の人口予想は、下へ下へとぶれています。

(朝日新聞ニュース)

05年に生まれる赤ちゃんの数が亡くなった人の数を下回り、日本の人口が自然減に転じる見通しであることが、厚生労働省が22日に公表した人口動態統計の年間推計でわかった。1899(明治32)年に今の形で統計を取り始めてから初めてで1万人減るという。少子化を背景に秒読み段階に入っていた人口の自然減の開始は、今春のインフルエンザ流行の影響で政府予想(中位推計)より1年早まった。

人口動態統計では、海外への移住や外国人の日本への定住など社会的な変動は含まれていない。総務省が近く、10月の国勢調査に基づく総人口の速報値を公表する。

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の見通しでは、現在1億2800万人弱の総人口は07年から減り始め、2050年に1億人になるとされ、日本社会は雇用や社会保障などあらゆる面で調整を迫られる。

推計値によると、05年生まれの赤ちゃんは前年比4万4000人減の106万7000人で過去最低を更新人口1000人あたりの出生率も8.5と前年の8.8から落ち込んだ

少子化が始まった70年代後半に生まれた世代が出産が多い年齢層である20歳代後半になり、母親人口の縮小が、少子化に拍車をかける構図だ。生まれる赤ちゃんの数は2014年には100万人を切ると予想される。

一方、05年の死亡数は前年比4万8000人増の107万7000人と1947年に次いで多く、3年連続で100万人超え

社人研による02年1月の中位推計では、外国人を含む日本の人口は05年は約2万人の自然増になる見通しで、自然減に転じるのは06年(2万3000人減)の予定だった。1年早まったのは、今春のインフルエンザ流行という一時的な要因で約2万人が死亡した影響と厚労省では見ている。

だが、高齢化の進展で死亡者数は、団塊世代が90歳代に入る2040年には170万人に達する見通し。一方、出生率の落ち込みに歯止めがかかる兆候はなく、人口減少の終わりは見えない。

今回の推計は、市区町村への出生や死亡などの届け出に関する10月分までの集計をもとにしている。過去にも実績値と1万人以上の誤差があった年があるため、厚労省は「来年6月の実績集計時点で自然増になる可能性はある」としている。

(コメント)

少子化故に人口が減るのではありません。死亡者が出生者を上回るから自然減となるのです。高齢社会到来でお年寄りが増えた結果、死亡者が増えてきました。

最近お葬式が多くなり、葬祭用の会館が増えてきました。今は参列者の多い葬儀が多いようですが、将来は参列する親族の数もめっきり減ってきます。団塊の世代が大挙してあの世に旅だった後は、相当寂しい社会になることを覚悟しなければなりません。

もちろん、技術の飛躍的な進展で、近い将来ドラえもんのようなロボットが一家に1台(いや1人)ということになるでしょう。ロボットと共存したり、自分自身がサイボーグ化したりと、科学技術の進歩とともに社会のありようが変化します。

変化に対応する気構えと、社会システムにおいて先手を打つ対応が求められます。


[2005/12/22]  頑張れ、矢祭町

(朝日新聞ニュース)

「市町村合併しない宣言」で知られる福島県矢祭町は19日、将来も合併しないことを明記した自治基本条例案をまとめた。人件費削減のため役場の定年退職者の不補充も盛り込んでおり、全国でも例のない内容。根本良一町長は「自立のためには財政健全化が不可欠。町が進めていることを後戻りさせないための条例化」と説明する。20日から始まる町議会に提案され可決される見通しだ。

条例案は、町政の基本理念をうたい「町の最上位の条例」と位置づける。前文には「法令をもって命令されない限り合併をせず、自主独立の道を歩む」と記した。

第1条で「人口減少に歯止めをかけ」と、町を挙げて少子化対策に取り組む目標を掲げた。第6条では「来たるべき団塊の世代の定年退職にも不補充で臨み」と、役場職員の新規採用に「縛り」をかけた。

矢祭町は、経費節減のため、03年度から職員の新規採用を停止した。職員数は現在77人だが、団塊の世代の退職が終わる8年後には40人台まで減ると見込み、役場OBらが運営する「第2役場」に業務委託をする準備を進めている。今年度から第3子以降の出産に祝い金を100万円支給しており、今後拡充する方針だ。町は約7000人の人口を10年度に7500人にすることを目標にしている。

総務省合併推進課は「合併しないという条例は聞いたことがない。こちらは、合併が必要という立場。こうした条例は想定しづらい」としている。

(コメント)

総務省の言う通りにすると、小さな自治体は潰れます。私が数年来言い続けてきたことです。

夢のある合併をなどとおだてられて、合併して新自治体の一地域となり、そのうち地域そのものが忘れられるというのが、お定まりのパターンです。

「第2役場」の発想が、これからの自治に必要です。第3子には、100万円出す価値があると思います。産める人に頑張ってもらうのが、最も実効性があります。

先進地・矢祭町の取り組みに、今後も注目していきたいと思います。全国各地で、「気が付いた自治体」が現れています。


[2005/12/21]  困ったことに、困ってない

政権交代は、2003年ないしはその次の選挙(結果として2005年)で行われなかったら手遅れであると思っていました。太平洋戦争での壊滅的敗北とは異なる形の破綻を回避したかったのですが、無理でした。

この原因のひとつは、多くの方が困っていなかったということです。このまま行けば破綻が待っているはずの人も、さしあたり何とかなるので、「小泉劇場」に拍手喝采する余裕がありました。

400万人と言われるフリーター、80万人と言われるニート。彼等もそれほど困っていません。「補給路」(=親の資産・資金、実家での生活援助)があるからです。

9割の人が何とかなると思える状況。1割の人に困難のしわ寄せがいっていても、9割の人の多くがそのことへの想像力を欠き、「自己責任」だと評論する立場になってしまいました。

「明日は我が身」の危機意識から解放され、「なんとかなるだろう」、「しかたがない」でその日を過ごしているのです。「政治」が介入する余地がありませんでした。

多数派は、困ったことに、困ってなかったのです。そして、「確かな野党」で現状固定を目指す方々も、それほどの危機意識は持っておられませんでした。

本当は、反ファシズム統一戦線を組むべき状況なのですが。 [2005/12/20]ジャイアント馬場、ボボ・ブラジル、オキ・シキナ

このタイトルを見て「ははーん」と思い当たる方は、40代後半以降か。「ジャイアント馬場対ボボ・ブラジル」のプロレス中継はなかなかのものでした。レフェリーはオキ・シキナ。

この3人がいるプロレスは、まるでスローモーションを見るようでした。馬場もブラジルもへとへと状態になり、体固めにはいるのも超スローモーション。カウントを取るオキ・シキナの「ワーーーーン」「ツーーーー」「スリーーーー」が長いこと長いこと。「スリーーー」の前に逃げる時間がたっぷり。

このオキ氏がレフェリーをつとめると、観客の方が選手より怒り狂う展開となりました。「外人レスラー」が行う反則は、全ての観客が目撃しているのに、オキ氏だけが気付かないのです。この人物が観客を盛り上げる「名レフェリー」だったのだと、あとから気が付きました。

検査会社以外の関係者の多くが疑問に思い、あるいは見抜いていた耐震偽装を見抜かなかった検査会社。姉歯氏の証言を聞いていると、「見抜けよ、イーホームズ」と言外に言おうとしているようでもありました。

そのイーホームズ社長・藤田氏の言い分は、下記(「伝言板」で教えていただきました)。藤田氏の意見は、聞いておくべきものだと思います。早々の幕引きには要注意。

http://www.ehomes.co.jp/ 


[2005/12/19]  NHKを守れ

深夜テレビを付けると、民放のおちゃらけ番組に辟易します。NHKの番組を見てほっとされる方も多いと思います。取り分け、アーカイブ方式で過去の映像資産の紹介があるときなど、暫し感動の時間を過ごすことがあります。

民放のゴテゴテした特大字幕スーパー。何度も何度も同じ映像を繰り返し、実質内容が時間枠の三分の一以下しかない番組(構造偽装ならぬ内容偽装番組)。こんなものしかないテレビでは、この国の文化も怪しくなってしまいます。市場原理万能では取り返しのつかないものの一つが、NHKの民営化です。

<以下、森田実氏のHPより>

12月15日付け東京新聞の「テレビ&芸能」欄(15面)に橋本元一NHK会長のインタビューが掲載された。見出しは「NHK会長インタビュー詳報/民営化論理理解できぬ」。

当然である。NHK自身は政府・与党に向かって発言しにくい立場に置かれているが、どういう形でもよい、「NHKは民営化には納得していない」ということを国民に常に知らせる努力をしてほしい。

心ある国民はNHK民営化に反対である。小泉・竹中民営化路線を阻止すべきだと考えている。ところが、郵政公社のように民営化論者が総裁というトップの地位についてしまったら、民営化を阻止することは困難になる。NHK自身が民営化の動きに屈服したら、どうにもならなくなる。

「NHKの民営化」は「日本の魂・文化・伝統のアメリカ化」に通ずると私は思っている。NHKは日本文化・日本的伝統の最後の砦である。

民放テレビはずっと以前から「日本の心」を失ってしまっている。民放で働いている記者、編集者、ディレクターには「日本の精神」がなくなってしまっている。民放テレビだけになったら、たとえ日本語の放送ではあっても、「日本の精神」が崩れてしまっているため、どこの国のテレビかわからないような無国籍的放送になってしまう。

現代社会において、テレビ・ラジオは非常に大事なメディアである。この重要なメディアが真面目さと道義と品位と日本的精神を失ったら、日本はお仕舞いである。

民放テレビにはもはや、真面目さ、道義、品位、日本的精神がない。大新聞からも失われてしまっている。いまなお、これを残しているのがNHKである。NHKのBSを見れば、NHKが日本国民にとって大切な放送局であることがよくわかるだろう。だから、われわれ日本国民はNHKを守らなければならない。

大新聞のなかには、NHKのわずかなミスを針小棒大に、さも大問題であるかのように大騒ぎするところがあるが、こういうのを「小を専らとして大を失う」というのだ。朝日新聞である。朝日新聞はこれからはNHK民営化を阻止するための世論喚起に努めるべきである。

(「森田実の時代を斬る」・12月19日分)

(コメント)

森田氏は、民主党前原路線批判の急先鋒です。氏の主張されるところの全てに賛同するものではありませんが、じっくりと耳を傾けるべき論説であると思っています。


[2005/12/18]  冷たい世論が冷たい政治を後押しする

(読売新聞より)

耐震偽装問題で、強度不足マンションの解体・建て替えや住民への公的支援策が打ち出されるなか、国土交通省や自治体に対し、「税金を投入するのはおかしい」といった意見が寄せられている。

新潟県中越地震の被災者などに比べて支援が手厚すぎるといった指摘も目立つ。一方、インターネットの掲示板では被害者のマンション住民を中傷する書き込みが相次ぎ、「まわりの人に敵意を持たれているようで怖い」と訴える住民も出ている。

国交省には16日までに、この問題についての意見が電話などで計約1300件寄せられた。マンションを自治体が買い取って解体、建て替え、住民に再分譲する枠組みが発表された6日以降は、反対意見が大部分になった。「住民の自己責任でやるべきだ」などの声が目立つという。

「グランドステージ東向島」がある墨田区では、当初は家賃減免の方針を示さなかった区への非難が多かった。だが6日からは一転し、「責任を問うべきはヒューザーやイーホームズ。税金を使ってほしくない」とする意見が大勢を占めるようになった。

「グランドステージ住吉」を抱える江東区にも、「阪神大震災を経験したが、あの時は住宅再建に税金は使われなかった。不公平だ」などとする意見があった。横浜市でも公的資金投入に反対する投書やメールが11件寄せられている。これを受け同市は16日、支援には市ではなく国の予算を使うよう求める要望書を国交省に提出した。

中越地震などの際の支援との違いばかりでなく、買い取りの対象が耐震強度0・5で線引きされたことなども不公平感につながっているようだ。

当の住民からは「自分が当事者でなかったら、手厚い支援はおかしいと思うから仕方がない」(「東向島」の女性)というあきらめのような声も。「住吉」の男性は「『私たちは被害者だ』と主張するだけでは本当の解決にならない。当然、我々もリスクを負うべきだと思う」と、批判を冷静に受け止めている。

こうした批判とは別に、住民たちを悩ませているのは一部のインターネット掲示板だ。住民の発言を「気にくわない」などとやり玉に挙げる心ない書き込みが多い。あるマンション住民は別の住民から、「ネットの掲示板に悪く書かれるので、マスコミに過激なことは言わないで」と頼み込まれたこともあったという。

マンションの住民代表は「最初は倒壊の恐怖や生活の変化によるストレスが大きかった。ところが、最近では公的支援への批判が高まっていることで、『周囲の人たちに敵意を持たれている』と外出を怖がる人が増えてきた」と、心理的圧迫の深刻さを明かす。

(コメント)

救済方法の公平性の問題はさておき、被害にあったマンション住民が困っていることは確かなのですから、この方々に余分なストレスが掛かるようなことだけは避けたいものです。

ネット掲示板の心ない「世論」、冷たい発想は、現在の社会の病理を端的に表しています。

小泉政権の冷たい政治を、冷たい世論が後押しする図式です。今回は、政府よりも「ネット世論」が冷たいということです。

もっとも、今回の政府の「温かさ」は、幕引きしなければならない事情からくる自分達への温かさのような気もします。  


[2005/12/17]  姉歯氏意外の人

姉歯氏意外にも構造計算を偽造した設計士がいると報じられています。木村建設の篠塚氏が姉歯氏に言ったとされる殺し文句からも推測されましたが、この問題がどこまで広がるのかしばらく目が離せません。

構造計算書偽造×手抜き工事というパターンもあるようです。手抜き問題も含めた徹底的な事実解明が必要です。


[2005/12/16]  自民党、お粗末の巻

耐震データ偽造問題をめぐる証人喚問における自民党の喚問に対して、14日から15日にかけて、自民党本部に「追求が甘い」などという抗議電話が数百件あったと報じられています。キーマンの姉歯氏にほとんどしゃべらせず、独演会をやってのける場違いな委員に、テレビの視聴者は辟易したのではないでしょうか。

民主党・馬淵議員が、総研のチーフコンサルタントである四ケ所猛一級建築士の自筆メモを提示し、幹部が鉄筋量も含めた技術指導を現場で行っている事実があると信憑性を突いたところは、圧巻でした。与党側に「白け鳥」を飛ばされた後での質問というのは、大変だろうと思います。

与党の「質問」は、証人喚問の値打ちを下げ、ひいては国会の権威を低下させるだけではないでしょうか。

15日の毎日新聞社説「偽造証人喚問 『ぐるみ』の疑惑は強まった」の一節。

<久しぶりの証人喚問で、各党の「追及力」も注目されたが、自民党は余りにお粗末だった。まさか、業界批判を遠慮しているのではあるまいが、材料も乏しく、演説のような話をだらだらと続けられては時間の無駄だ。その分、質問時間を野党に配分した方がましだった。>

質問時間の均等配分に加えて、野党が先に質問し与党が後から質問するようにして、冒頭から「消化試合」を国民が見せつけられることのないような議会運営を期待します。

ちなみに、自民党の質問トップバッター・渡辺具能氏。何処の選挙民が選んだのかと調べてみたら、福岡4区でした。民主党・楢崎欣也氏の選挙区。楢崎氏の復活を期待しています。


[2005/12/15]  菅直人の「一言」

(菅直人氏のHP、「菅直人の今日の一言」・12月14日より)
http://www.n-kan.jp/

前原代表の下の民主党について、心配のメールをたくさんいただいています。

私自身、代表選では自民党との対立軸を民主党として明確にすることを主張しました。新代表に就任した前原代表にもフレッシュな感覚で自民党に対抗する民主党の姿を示してくれることを期待していました。

この点で前原代表の昨今の言動が、自民党との差がなく、二大政党としての存在理由が無くなっているという多くの人の指摘に、前原代表自身、真摯に耳を傾けてもらいたいと考えています。

(コメント)

前原路線は、植民地内政権奪取路線だと思っています。少なくともここ10年は、アメリカの許容範囲内でしか日本の政権は持たないとの前提で、親米非自民政権を樹立する。「民主化」した後で、真の改革に取り組む。こういう路線であることを前提に、私は支持しています。

菅氏の路線が最も民主党らしいと思います。ここを着地点とした政権戦略なのかどうかがポイントです。前原路線が、「ミイラ取りがミイラになる」という過ちを犯さないことを願っています。

選挙はまだ先なので、インコース(速球orシュート)、インコース(速球orシュート)=(前原路線)、アウトコースのスライダー=(菅路線)、という「配球」もありかな、というところです。 


[2005/12/14]  国勢調査・速報値

国勢調査の速報値が発表され、愛媛県の人口が、国勢調査時点(本年10月1日)で146万7824人であることが分かりました。私の想定より若干少なめの数値。毎年5千人減少しています。これから加速度がついてくるものと予想されます。

(朝日新聞より)

県は12日、国勢調査(10月1日現在) の速報値を発表した。県内人口は146万7824人で、00年の前回調査に比べて2万5268人、1・69%減少した。 人口減は4回連続で、減少率は前回の0・9%より広がった。 県統計課は「少子高齢化による自然減と、県外への人口流出が続いている」 とみている。 (中略)

市町別では、人口が増えたのは県内20市町のうち松山、東温、松前、砥部の2市2町のみで、松山周辺への人口集中をうかがわせる結果となった。

人口増加率は東温市が最も大きく1・67%。砥部町1・59%、松山市1・31%と続いた。 一方、減少率が最も大きかったのは伊方町で10・65%。 次いで、愛南町9・20%、久万高原町7・92%の順だった。 東予地区より南予地区の減少率が比較的高い。

世帯数は58万2645世帯で、前回より1万6499世帯、2・91%増えた。 ただ、1世帯当たりの人数は2・52人で前回比0・12人減となり、担当者は「単身世帯が増えているようだ」 とみている。

県内人口は1955年の154万628人をピークに減少。 75年からいったん増加し、85年には約153万人まで回復したが、90年から再び減っている。

(コメント)

50年後は、愛媛の人口・90万人程度と予想しています。南予は6割減、東予5割減。中予も減少します。松山市に一極集中するでしょう。

人口減少は、1人当たりGDPを同じとすると、県内総所得の減少を意味します。高齢化という要素も忘れてはなりません。経済の規模が縮小します。

9.11選挙で地方斬り捨て路線が結果として承認されました。限られた資源を有効活用する地域振興策が必要です。

もちろん、生産力の飛躍的拡大、移民受け入れなど、全く違うステージに入る可能性もあります。


[2005/12/13]  五島正規衆院議員辞任

(毎日新聞ニュース)

「(検察は)アホ」。政策秘書らの公選法違反事件を受け、12日夕、衆院第1議員会館で記者会見して辞職表明した民主党の五島正規衆院議員(66)は、激しい捜査批判を展開した。

鳩山由紀夫幹事長との会談後、グレーのスーツ姿で会見に臨んだ五島氏は硬い表情で語り始めた。捜査に話題が及ぶと、選挙違反を否定し、「でたらめな捜査」「勝手で、恣意(しい)的」「まったく不当」「狙われてやられた」と過激な言葉が口をついた。

さらに、高知地検が政策秘書を選挙運動の「総括責任者」と認定し、自身が連座制の対象となる可能性があることについて「(検察は)アホやなあと思ってます。東京の秘書は選挙全体を指揮できない」と吐き捨てるように言い切った。

また、前原誠司代表が辞職を促す発言をしたことについて「あれは前原さんの個人的な感想だと思う。若い代表だからしゃあないなあ」と不満を漏らした。

(コメント)

五島氏の気持ちはよく分かります。今回の選挙では、民主党が狙われるだろうと言われていました。県警疑惑との絡みです。

もっと警戒すべきだったという批判はあるでしょう。しかし、選挙になると、何がなんだか分からなくなってしまう面もあります。候補者にもよりけりですが、選挙の全体像を把握することは困難です。

もっとも、お金に関するところだけはきちんとしなければならないでしょう。地域性もあります。ある地域の方から(私の選挙ではありません)、あっと驚くような申し出を受けたことがありました。選挙で動けば必ず金になると思っておられるようでした。

けじめを付けきれなければ、選挙違反で捕まる。けじめを付けると、あとで悪口三昧になる。それが選挙の実態です。


[2005/12/12]  比例代表

(日経新聞ニュース)

小泉純一郎首相は8日、現在は小選挙区比例代表並立制を採用している衆院の選挙制度について「政党が順位を決める比例代表よりも一般有権者が直接選んだ方がよい」と記者団に述べ、比例は廃止すべきだとの考えを示した。同時に「変えるなら衆院と参院を一体でやった方がいい。衆院と参院の制度が同じではあまり意味がない」と語った。

(コメント)

比例復活への批判が最近強いようです。意図的な世論誘導の気配が気になりますが、私も比例代表を廃止することには賛成です。

現行制度では、2票を使い分けることで、有権者の煮え切らない思いがそのまま投票行動に反映されるため、本当の意味での決断ができないのではないでしょうか。

1票で自分の意思を表明することにして、有権者に本当の決断をしていただきたいと思います。


[2005/12/11]  憲法改正と野党・民主党

(毎日新聞ニュース)

民主党の前原誠司代表は9日午後(日本時間10日午前)、記者会見し「憲法改正を必要だと考えている政党にとって与野党はない」と述べ、与党との改憲協議には前向きに応じる姿勢を示した。

小泉純一郎首相が9日夜、自民・民主両党の「大連立」に関連し「近い点は多々ある。前原代表は憲法改正論者。今後自民党と協力できる点があると思っている」と述べたのに対するコメント。

前原氏は、憲法改正を発議するには衆参両院で3分の2以上の賛成が必要であることを強調。「国民の関心を高めていく責任は、与党だけではなく民主党も負っている」と述べ、与野党協議を進めることで改憲論議を盛り上げるべきだという考えを示した。

前原氏は「大連立」の可能性については「99.99%ない」と否定しているが、連立論の最終目標である改憲では、与野党の協調に積極的だ。

(コメント)

憲法改正については、野党民主党も一定の責任を果たすべきであるというのが、前原・民主党代表の考え方のようです。

私は、政権交代先行論です。政権交代を決断できる国民であってはじめて、憲法改正を自分の頭で考えることが可能だと思うからです。

臆病な国民性が変わることが、成熟した民主主義社会の第一歩です。その指標が政権交代です。


[2005/12/10]快・不快の感情が表現の自由を上回る価値か

自衛隊のイラク派遣に反対するビラを立川の防衛庁官舎に配って住居侵入罪に問われ、一審で無罪となった市民団体の3人に対し、東京高裁が逆転有罪の判決。

被告の3人は「自衛官・ご家族の皆さんへ 自衛隊のイラク派兵反対!いっしょに考え、反対の声をあげよう!」などと書いたビラを部屋のドアの新聞受けに入れたため逮捕され、75日間も身柄拘束されました。

3人が官舎に入ったのは、門扉のない出入り口からで、他の配達員も立ち入る共用部分だと一審判決は認定し、「刑事罰に処するほどの違法性は認められない」と判断しました。

二審判決は、官舎を管理する自衛隊幹部らが居住者に「反自衛隊的なビラの配布を見かけたらすぐ110番通報を」という文書を配っていたことをなどを理由に、問題のビラ配りがいかに官舎の管理者らの意思に反していたかを強調しています。

処罰するほどの違法性があったか、という点では、「表現の自由が尊重されるべきものとしても、そのために他人の権利を侵害してよいことにはならない」と述べています。

(コメント)

迷惑だという人がいれば、表現の自由は尊重されなくてもいい、ということでしょうか。

常識的に考えて、ビラ入れが本当に迷惑なら、配布された文書の責任者に強く抗議し、それで収まらない場合には、「次回このようなことをすれば告訴します」と警告しておけばいいのです(内容証明が適当)。このような措置を取ったのにあえて侵入したのなら、これは刑事罰相当です。

この話でおかしいのは、公僕たる自衛官が政治的なビラに対して刑事罰を加えるべく積極的に行動したということです(住居侵入罪は親告罪)。彼等は国民の批判に耐えなければならない存在であり、自らが関与する問題に関して、単なる一国民として振る舞うことが妥当かどうかという視点でも考えてみるべきです(もちろん、宿舎に投石をする者がいたりする場合は別論です)。

もっとおかしいのは、こんな軽微な事件を「犯罪」だとして貴重な税金を浪費することに、何のやましさも感じない感覚です。よほど暇なのではないか。自衛隊、警察、検察、二審裁判所はグルじゃないかと言いたくなります。

未解決の重要案件が山積する司法当局が、力こぶを入れるべき事案ではないと思います。


[2005/12/09]  懲役100年

女児殺害事件がつづき、社会不安が拡大しています。犯人を死刑にすべしという意見が当然出てくるでしょう。これに反対するつもりはありません。

問題なのは、無期懲役や懲役10年というような刑の場合です。「無期」といっても、十数年で出所することが多く、出所後の再犯の心配をしなければなりません。満期に近い形で出所すると、仮釈放になった場合でもすぐに完全な自由の身となって問題を起こす余地が出てきます。

犯罪者の改善・更生を目標とする現在の行刑思想は大変立派です。長期の刑罰は受刑者の人格破綻を招いたり、出所後に社会への適応が困難になることなどが指摘され、短い刑期できちんと更生させ、社会の中で真っ当な人生を送らせていこうとする考え方にも正当性があると考えます。

しかし、性犯罪のように再犯の可能性が高く被害が深刻な犯罪類型では、短期で出所して犯罪を繰り返されたのでは社会不安を除去できません。思い切った長期刑を科し、全人生をもって償わせるという発想もあっていいのではないかと思います。

「懲役100年」の刑を科しつつ、改善が見られれば仮釈放することにして、問題があれば残りの刑期に服する(5年で出所して問題を起こせば、残りの95年間刑務所に戻る)ということにすれば、かなりの心理的な効果が期待できると思います。


[2005/12/08]  忘れるな、真珠湾

64年前の未明、連合艦隊ハワイ真珠湾奇襲。日米決戦の緒戦は、アメリカに衝撃を与えました。

ABCD包囲網により開戦を余儀なくするようにし向けられたという説が有力です。しかし、その後半年にわたり西太平洋の制空権、制海権を保持した日本の実力はそれなりのものだったと思います。

問題は外交能力。最後通牒を真珠湾攻撃後に提出する不始末を60年以上たっても指摘され、「リメンバー・パールハーバー」の一言で米国民が一つになれる契機をつくってしまいました。

それ以前に、西太平洋での安全保障を確立するための外交努力をすることなく、何の力にもならないヨーロッパのファシスト国家と同盟を結ぶ世紀の愚策を犯してしまいました。

信頼できる調停者(国)をつくらずに始めた戦争。緒戦で戦意を喪失させ和平に持ち込む作戦だったとも言われますが、「レフェリー」なしのバトルを何故やったのか、センスを疑います。

安全保障の問題を戦力云々の問題だけに矮小化しようとするのではなく、外交という広い視野でものごとを考え、「真珠湾を忘れるな」という命題を、日本国民が肝に銘ずべきものとして確認したいと思います。


[2005/12/07]  アメリカの意思か国民の意思か

政権交代を可能にするには、アメリカの許容範囲内の政策を掲げる方がいいのか、それとも国民のニーズを重視する方がいいのか、現代の日本政治を考える上での大きな分岐点になります。

これが商業の場合なら、供給者サイドの発想ではなく消費者サイドの発想でなければならないということが言えますが、政治の場合にそう簡単に言えるのかどうか。

小泉政権は徹底的にアメリカの立場で政治を行い、アメリカの対日要求に添った「郵政民営化」を掲げて9.11総選挙に臨み、アメリカの意を受けた財界とマスコミの力で圧勝しました。

気持ちとしては、国民の立場に立った政治を行うべきだと思いますが、国民の意思が鰻をつかむようにつかみづらいことと相俟って、財界、マスコミという因子を考えた連立方程式の解を求めるには、二段階三段階の戦略が必要であると思われます。

民主党前原路線には様々な解釈が可能ですが、単純にネオコン路線と非難すべきではないと思います。政権交代に向けては様々な道があり得ます。ここは柔軟な頭が必要です。

我が国の主権を維持し、国民の意思に忠実な政権を目指すべきであるという大目標の下での戦略戦術であることが、もちろん出発点になります。政権交代がない国よりもある国の方が、はるかに民主的であり構造的な腐敗が起こりにくいという、単純な真理も忘れてはなりません。


[2005/12/06]  詐欺の被害者か災害の被害者か

耐震性偽装マンションの被害者に対する政府の公的支援の概要が決まりました。

詐欺の被害者には公的支援はありません。災害の被害者についても、見舞金はともかく、個人財産への補償はありません。今回の事件に対しては、迅速な決定がなされました。

偽装マンションの被害者は、欠陥マンション販売詐欺の被害者のようでもあり、耐震強度が著しく不足している点で災害被害者予備軍のようでもあります。これが、公的支援をためらわせる要因になります。また、耐震性不足の古い建物に住む人との均衡も問題になります。

しかし、現行建築基準法での建築物の生命である耐震強度についての建築確認が、検査の民間開放のやり方に遺漏があったことから生じた事件であるという点で行政にも落ち度があるところが、公的支援がなされるべき根拠となります。周辺住民への配慮、退去命令を出すこととの均衡ということもあるでしょう。

被害者救済という観点から見れば、残ってくる多額のローンについて、期限の伸長や金利の優遇等、弾力的な措置がさらに望まれます。そして、詐欺や自然災害など、他の類型の被害についても、今回の支援を契機として新たな発想をすべき時期に来ているのではないかと思います。

ところで、巷間言われているように、迅速な支援決定の陰には、某コンサルタントや業者等の資金がその筋に流れていたのではないかとの疑念も湧いてきます。疑惑封じの公的支援と言われないよう、徹底的な事実解明が求められます。


[2005/12/05]  スキャンダル

週刊文春による谷垣財務大臣のスキャンダル記事。

民主党・西村真悟議員、弁護士法違反で逮捕。植草一秀氏の事件。社民党・辻元清美氏、田中真紀子氏の秘書給与疑惑。造反者への「刺客」、除名・・・

自民党内で、もの言えば唇寒し、という雰囲気が漂っているということです。ものを言うのが政治家の仕事です。ものを言わずに世渡りをするのであれば、サラリーマンでいればいいはずですけれども。

かなり怖い状況であるとの感想を持たざるを得ません。 [2005/12/04]  任期制公務員

構造計算書偽造問題は、検査・確認業務の民間開放に遠因がありました。しかも、検査会社は天下りの職員が大半であるということも指摘されています。

役所に検査ができる専門職員が少ないので民間に業務を委ねるのだというのが、民間開放の論理です。

私は、国や自治体が必要な時期に必要な業務を遂行するために、任期制公務員を採用すべきだと思います。例えば、任期10年で建築士を公務員として採用して建築確認の任務に当たらせるのです。

公が責任を持つべき勘所は、徹底的に公が担当するという姿勢が必要です。「官から民へ」の安直スローガンの下で、官庁の天下り先がちゃっかり確保されるだけという、インチキ構造改革に騙されてはいけません。  


[2005/12/03]  普通にやっていれば民主党の勝ち

次回衆院選挙は、普通にやっていれば民主党の勝ちです。

現政権党の勝利は、曲芸を駆使して獲得したものであり、一見すると堂々たる政権のようでありながら、崩壊寸前の危うさが漂っています。

「景気回復」は、企業利益の拡大を意味するだけであり、国民の豊かさにはつながりません。地方切り捨ての影響が、徐々に住民心理に反映されてきます。大企業と中小零細企業との矛盾も拡大します。生活が苦しくなってくる「小泉」支持層も、騙されたことに気付きます。

無理に改革競争をしたり「対案」を出したりするよりも、野党として堂々と対決した方が、勝つ確率は高くなると思われます。

懸念されるのは、いまだに「得意科目」で勝負しようとする傾向から抜け出せないことです。3回先の選挙で自民党王国を制覇するというような、大戦略が必要です。


[2005/12/02]  インチキなビル

12年前に社屋兼自宅を新築しました。そのローンに追われる日々です。

鉄骨3階建てですが、鉄骨が予想以上に太いので驚いた記憶があります。建築中の他のビルを見たところ、ウチの建物よりも高い建物なのに鉄骨が細いので、これだったらウチのは100年持つだろうとという感じがしました。

構造計算書偽造問題は、魑魅魍魎(ちみもうりょう)跋扈(ばっこ)の様相を呈してきました。しかし確実に言えることは、骨組みが細ければどうしてだろうかと気になるのが施工主であり建築の責任者です。

観念的に誰に責任があるかを問い質す前に、骨組みが気になる人間が誰もいない建築物はない、という常識を忘れてはならないと思います。


[2005/12/01]  公務員叩きと地方の教育

自民党がやる「改革」は、労組潰し、賃下げというフィルターを通してみると分かりやすくなります。

国鉄民営化とは、国労潰し。郵政民営化とは、郵政公社職員の賃下げ。そして、公務員制度改革は、官公労潰しと公務員の賃下げ。

リストラが進み、民間のサラリーマンの給与が減ってきたことから、公務員の給与が相対的に高くなりました。一般の国民の嫉妬心が煽られ、公務員叩きが激しくなっています。

しかし、冷静に考えれば、地方においては我が子が公務員になるのは親の夢ではなかったでしょうか。真面目で優秀な子供に教育を施し、公務員としての安定した人生を送らせたい。あるいは、自分の娘は公務員に嫁がせたい。

公務員の地位が相対化し、不安定なものになることは、地方における教育への情熱を冷まし、地方での生活を不安定化させることにつながります。


玉井彰の一言 2005年12月 四国の星ホーム前月翌月