玉井彰の一言 2007年10月 四国の星ホーム一言目次前月翌月

2007/10/31(水) 全くない話ではない「大連立」・・自民党の策略ではあるが

参議院を野党が握っていることが、想像以上に福田政権を苦しめているようです。

自民・民主の党首会談は、ボクシングで言えばクリンチ戦術であって、民主党にとって迷惑な話です。しかし、これに応じないとマスコミの批判が湧いてくるので応じざるを得ません。すると今度は、公開の会談だと何の実もない話になり、非公開だと「密室」批判が展開されるという構図になります。

密室であるが故に、「大連立か?」という憶測が流れてしまいます。参議院の形勢が6年間変わらないとすれば、自民党サイドは何らかの手当をしなければなりません。「大連立」という手もないわけではありません。

【大連立「ない」 小沢氏、党首会談で対決姿勢崩さず】(産経)
民主党の小沢一郎代表は30日、新テロ対策特別措置法案をめぐる福田康夫首相(自民党総裁)との党首会談で、法案成立を目指す首相の協力要請を拒否し、対決姿勢を崩していない。小沢氏は党首会談を通じ、新テロ法案の扱いをめぐって首相や政府・与党に動揺があると冷ややかに見ている。大連立も「ない」と周囲に語っており、民主党内には「わが党を攻撃するための首相や与党の謀略か」といぶかしむ声も出ている。
 
「新テロ対策特別措置法案などいろんな問題を生じているので首相は行き詰まっているようだ。弱り切って困り果てているようだ」
 
小沢氏は30日夕、党役員会で党首会談のあらましを10分間説明した中で、首相をこう酷評。菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長との党3役懇談会でも小沢氏は「どうも政府は判断能力がなくなってきているのではないか」と指摘した。
 
また、役員会では党首会談について「申し入れを拒否すればマスコミが必ず批判する。党に迷惑をかけるから受けた。大連立や解散総選挙、国会の会期延長など政治的話は一切なかった」と強調した。
 
一方、民主党幹部は同日夜、「大連立なら、民主党に首相を渡す以外にありえない。それだけの覚悟は(福田首相に)ないだろう。だから、百パーセントやるべきではない」と明言。大連立が話題になるだけで民主党は打撃を受けるとして、大連立論構想は与党側の“謀略”だと不快感を表明。菅氏は3役懇で「党首会談はクリンチ(抱きつき戦術)で、できる限り努力した既成事実を作ろうとしているだけだ」と指摘した。
 
小沢氏はこの日、首相に「あなたはもっと(自衛隊海外派遣の)原理原則を持つべきだ。これから米国に呼ばれて何でもやる、という話ではまずいのではないか」と“説教調”で語っており、2日の再会談で、方針転換することはなさそうだ。


【コメント】
衆議院の小選挙区でしのぎを削る状況では、大連立は不可能に見えます。それを可能にするために、中選挙区制度と抱き合わせるという手法があり得ます。

しかし、それでは55年体制に逆戻りです。政権選択を行う選挙でなければ、次第に利害関係者だけの政治になってしまいます。

自民党が困っているから出てくる策略。民主党が悠然と構えていれば、熟柿が落ちる如く自民党政権は墜落してきます。

秋深し。自民党政権の最終章を見守る必要があります。


2007/10/30(火) 年金制度改革・・「全額税方式」での民主と同友会の違い

経済界から基礎年金を全額税法式にという議論が出てきています。民主党の案に近づいたという印象ですが、この違いについて民主党の長妻昭氏が述べています。

【民主・長妻議員、同友会の年金税方式案は「我々とは違う発想」】
経済同友会は29日、社会保障制度についてのセミナーを開き自民・民主両党の政策担当者から意見を聞いた。同友会が基礎年金の全額税方式を打ち出していることに関して、民主党の長妻昭衆院議員は「企業負担の面でわが党の(税方式の)発想とはかなり違う」と発言。制度を企業の負担軽減に直結させない点で同友会案とは狙いが異なるとの見解を示した。

同友会は2007年4月に基礎年金の全額税方式を提言。「65歳以上の全国民に最低保障として7万円を支給」「最低保障を超える部分は私的年金でまかなう」などとする案の制度化を訴えている。ただ、同案では企業の負担額が現行制度よりも減る。同じ“税方式”を提唱する長妻議員は「企業の拠出分は(最低保障に上乗せする)所得比例年金の財源に充てる」と述べ、同友会案との立場の違いをにじませた。

一方で自民から出席した衛藤晟一参院議員は「問題は国民年金」と述べ、まずは未払いの解決や一元化に取り組むべきだと主張。基礎年金の制度について保険料方式がのぞましいとの考え方を強調した。


【コメント】
私は零細企業経営者として、この議論に関しては同友会の議論に魅力を感じます。

中小零細企業において、社会保険の企業負担は過酷です。それ故に、非正規労働が増えているという実態を見なければなりません。また、社会保険に加入すべきであるのに加入しない例が多数あります。

「本採用」かどうかで大きなハードルを設け、結果として労働者が損をするよりも、ハードルを下げ、労働者全員が社会保険の適用を受ける方がいいのではないでしょうか。

健康保険、労働保険を含めた制度改正を検討すべきです。民主党案については、中小零細企業の立場にも配慮した手直しを求めたいと思います。


2007/10/29(月) 解消すべき「格差」とは何か・・・地方分権は格差を生じる

今夏参院選での自民党敗北の原因のひとつが格差問題でした。

地方保守層の反乱が自民党に打撃を与えました。都市と地方との格差を埋めるべく、自民党の政策が変更されようとしています。

しかし、中央集権を前提とした格差是正策には限界があります。むしろ、中央集権は地方間の格差をなくすために必要であると、霞ヶ関においては考えられています。

地方分権は格差を生じる。霞ヶ関の官僚はそう見ていますし、その判断は正しい側面を持っています。それぞれの地方がが自由にやれば、優勝劣敗となり格差が生じます。

それでは、そうして生じる格差が不当なものであるのかと言えば、そうではないと思います。補助金等を手段とした霞ヶ関のコントロールで地方は自由を奪われています。

自由を獲得すれば、能力差で格差が生じます。これは自然の流れです。しかし、スタート地点から格差があれば、結果として不当な格差が生じます。その不当な格差が生じないためには、スタート地点で適正な「ハンディ」が与えられなければなりません。

この地方は「ハンディ10」、この地方は「ハンディ20」といった有利な「持ち点」が与えられれば、あとは能力全開で戦うしかありません。適正な競争で生じる格差は甘受するしかありません。


2007/10/28(日) 身の丈に合った繁栄とは何か・・・自治体の連係が地域の活力を生む

昨日の続き。

愛媛県松前町で建設中の中四国最大の超大型ショッピングセンターに関する問題を取り上げ、同町が身の丈に合わない繁栄を目指していると批判しました。

県都松山市近郊の松前町は、松山市の繁栄があって同町の繁栄があるということを自覚した地域のグランドデザインを描くべきです。

「地域間競争」ということが言われます。それぞれの自治体や地域が地域振興を真剣に行わなければ、他の地域に後れを取り、地域の衰退を招くことになります。

ただし、「地域」を狭く理解し、自分の自治体以外は全て敵と考え、「何でもあり」の競争を仕掛けることには問題があります。

周辺地域との関係での自分たちの地域(自治体)という「地域」のとらえ方もあれば、より広域の「地域」を想定して地域のあり方を考えるという発想もあります。

松前町が周辺地域よりも繁栄したとして、県都松山市の地盤沈下を招いたり、南予地区崩壊の引き金を引くなどして、愛媛県全体の活力を削ぐようなことになれば、結果は自分に跳ね返るだけです。

愛媛県という単位での繁栄を考え、自らのポジションをどのように考えて自治体の将来設計をするのかが問われています。各自治体が自らのポジションをわきまえ、相互連係で愛媛という地域に活力が出てくるような地域戦略が求められる時代です(もちろん、もっと広域の戦略も必要になってきます)。競争と連係が必要なのです。

自治体は「身の丈」の判断を誤ってはなりません。


2007/10/27(土) 志の質が問われる・・赤福、白い恋人、そして隣町・松前町

身の丈にあった繁栄を目指したのか?

赤福や白い恋人などの食品業界での偽装問題を見ると、健全な廃棄率を前提とすると成り立たない経営拡大を目指し、廃棄率を引く抑えるために偽装を繰り返したのではないかと考えられます。

良質な商品を開発し、商品のブランド価値が高まるにつれ、経営規模拡大による利潤増加への欲求が強まります。賞味期限、消費期限の範囲内でしか生産計画を立てられない食品業界では、廃棄率を計算しなければなりません。一定以上の生産を行えば、廃棄率の上昇によるロスの方が利益を上回る限界線があるはずです。その限界線を越えての生産拡大が偽装に繋がりました。

企業が創立の原点に立ち返り、自らの志を点検することなく、企業規模の拡大に奔走した結果としての破綻。

このことを考えていると、私の居住地・伊予市の隣町である松前町に建設中の巨大ショッピングセンターのことが頭に浮かんできました。中四国最大の規模。

松前町が誘致したのですが、当初名乗りを上げた全国規模のスーパーに対抗する形で地元スーパーが逆転勝利し、ショッピングセンターの建設に漕ぎ着けました。地元スーパーとしては、存立に関わる防衛戦争だったのでしょう。

問題は、誘致した松前町の姿勢です。人口3万人、面積20平方キロの小さな町に年商300億円もの商業施設が必要なのかどうか。

自治体の規模を超えた商業施設を誘致建設することで、周辺自治体への影響は計りしれません。私が特に問題視しているのは、人口が急減し地域崩壊の危機に瀕するであろう南予地区への影響です。

同地区は、現在の人口が30万人。毎年1%人口が減ります(加速度が付いてきます)。この地区から年間30億円の消費流出が予想されます。1人当たりの年間消費支出が100万円と仮定すると、年間3000億円の消費の中から1%の流出が新たに発生するとすれば、人口減少と合わせて、2%のデフレ経済になるのではないか。地域経済の破綻に繋がりかねません。

そこまでして、ひとつの町が繁栄する必要があるのかどうか。

20万平方bの敷地に建設される商業空間で何が起こるかということを考えると、悪い想定が頭をもたげます。20万平方bの少年非行空間が発生するのではないか。そして、当然予想される交通渋滞。

一自治体の繁栄が多くの負の要素を封印してもたらされることをどう見るのか。このことが検討された形跡はありません。(自治体が繁栄するかどうかも疑問)

負の要素を封印し、あるいは偽装した上での、身の丈に合わない繁栄。

分野は違いますが、松前町行政の志の質の低さには暗澹たるものを感じます。食品偽装と同じだとは言いませんが・・


2007/10/26(金) 「民主党でもいいじゃないか」の声が広がる

自民党王国愛媛における自民党の岩盤・南予においても、「民主党でもいいじゃないか」という声が広がりつつあるようです。

自民党は、広く便益を提供することによって、長期に渡り政権の座に居続けることに成功しました。特に地方は、中央からのおこぼれ頂戴に与ることを期待して、この政権を支えました。

ところが、この便益提供が滞ったため、地方が離反して参院選惨敗の大きな要因になりました。

【次期衆院選:「民主勝ってほしい」44% 本社世論調査】 
毎日新聞が20、21日に実施した全国世論調査で、「次の衆院選で自民、民主のどちらに勝ってほしいと思うか」を尋ねたところ、民主44%、自民39%だった。「その他の政党」は11%だった。

この質問は、8月27、28日▽9月12、13日▽9月25、26日−−の調査に続き4回目。自民は37%→39%→41%→39%、民主は44%→43%→45%→44%と推移し、いずれも民主が上回っている。両党の差は前々回、前回の4ポイントからわずかに開き、5ポイントとなった。

福田康夫内閣支持との関係では、民主の勝利を望む人は不支持層では72%で、支持層でも28%に上った。支持政党別に見ると、自民支持層は自民88%、民主6%、民主支持層は自民3%、民主95%、「支持政党なし」と答えた無党派層は自民30%、民主41%。他党支持層で民主の勝利を望んだのは、公明支持層12%、共産支持層33%、社民支持層60%などだった。

男女別では、男性が自民37%、民主50%なのに対し、女性は自民41%、民主40%。「女性に人気が低い民主党」という傾向は変わらなかった。年代別では30〜50代は民主が自民を引き離す半面、20代、60代、70代以上では自民がリード。働き盛りの層の民主支持が厚いことも変わらなかった。【須藤孝】
   ◇  ◇
調査の方法 20、21日の2日間、コンピューターで無作為に選んだ電話番号を使うRDS法で調査し、全国の有権者1064人から回答を得た。


【コメント】
ムードというのは怖いもので、一旦ある空気が支配し始めると、どんな手を使っても止められない状態になってしまうことがあります。

年金問題に端を発した参院戦前の状況は、安倍政権が何をやっても裏目に出るという形で、押し止められない流れとなって自民党の牙城を崩しました。

福田政権誕生で小春日和と思われた政局も、不安定感を増しています。

明治維新前夜、「ええじゃないか」と呼ばれる大衆の狂乱状態が発生したと言われています。2005年の郵政選挙も、「郵政民営化ええじゃないか」という空気でしたが、それとは逆方向のうねりが発生している状況です。

「民主党でいいじゃないか」。自民党の岩盤とされる地域でも聞こえてきたこの言葉に、ひとつの時代が終わりを告げる雰囲気ないしはムードを感じてしまいます。


2007/10/25(木) かつて「学力偽装県」だった愛媛は?・・全国学力テストの結果を見る

43年ぶりに実施された全国学力テストの結果が公表されました。

私が小学生だった頃、学力テスト対策で補習が繰り返され、満点以外取りようがないような鉄壁の布陣を敷いた愛媛は「全国一位」の栄誉を得ていました。子供心にインチキだなあと思った記憶があります。

その愛媛は今回、「全国並み」と地元紙は見出しに書いています。まあ、普通にやったんだろうな、というところです。

県別の正答率が新聞紙上に掲載されています。それを見ての感想。

これはひょっとすると、親の教育熱(=子供を地元から脱出させたい意欲)の表れではないでしょうか。暮らしにくく、将来の展望が開けない地域で親が子供を大都市に出してやりたいと願う気持ちが、教育投資という形で表れることがあります。

そうだとしたら、「不幸計数」としての意味を持つのかもしれません。沖縄の点数が低いのは、低所得にもかかわらず暮らしやすい(呑気にやっている)からではないか。昨今の移住者増からすると、そういう側面もあるような気がします。

この数十年、都市部に優秀な若者が吸引され、その結果として、その子供たちの能力が高くなり、地域間の学力差が顕著に出てくるという可能性もありました。

そうした傾向は、学力テストの数字からは見えてきません。しかし、都市部での家庭間格差の問題を含め、「平均」という名の下に多くの論点が隠されているような気がします。


2007/10/24(水) 渡れない橋、走れない道路・・・これからの公共事業を考える

瀬戸内海に架かる橋が3つ。無駄遣いの典型のように言われています。これらの橋を渡る度に、100年後はどうするのだろうかとの疑問が湧いてきます。

そんなことを考えていたら、今朝のNHKニュースで、全国で渡れない橋が700あると報じていました。

【NHKホームページより】
国内の道路の橋をめぐっては、定期点検が行われている国道の13の橋で鉄骨の破断や腐食などが見つかり、点検や保守管理の重要性がクローズアップされています。

これを受けて国土交通省は、これまで実態がわかっていなかった都道府県や市町村が管理する道路の橋について初めて全国調査を行った結果、700近い橋で通行止めや通行する車両の重量制限など老朽化の影響が出ていることがわかりました。このうち、80余りの橋ではコンクリートや鉄骨の劣化などが原因で通行止めになっているほか、およそ600の橋で通行する車両の重量制限が行われているということです。

道路の橋を保守・管理する全国の市町村のうち90%が過去に1度も橋の点検を行っていないことから、国土交通省では、把握できていない老朽化の影響がほかにも多数あるとみています。国土交通省は、調査結果を24日開く専門家らの検討会で公表して、定期点検の義務づけなどについて議論することにしています。

【コメント】
石橋を叩いて渡る。とは言いますが、橋は叩いて(点検して)渡らなければならないものなのだなと思います。

これまで全国で橋を含む道路網が築かれてきました。どんどん造る時代が続きました。それが、ターニングポイントを迎えた感じです。

保守する時代。この需要だけでも公共事業のニーズはかなりのものであると推測されます。

この橋、この道路は本当に必要なのか。既に造られたものでも、必要性の検討が必要です。


2007/10/23(火) 国の弥縫策(びほうさく)に騙されるな・・地方交付税を増やせ!

「格差是正」の声を受けて財務省が姑息な案で辻褄合わせをしようと企んでいます。下手をすると「朝三暮四」の現代版。地方自治体から反対の声が挙がっています。

【法人2税見直し 全国知事から反対噴出】(朝日)
都市と地方の税収格差を是正するための地方法人2税の配分見直しに全国の知事から反対の声が相次いでいる。税収減が見込まれる神奈川県の松沢成文知事は22日、増田総務相に「断固反対」と伝えたが、税収増が予想される地方からも反対の声は出ている。自治体同士での税収の移譲を狙う財務省への反発や、交付税削減につながることへの懸念が背景にある。 

松沢氏は、東京や神奈川など都市部から1兆数千億円を移す財務省案に反対し、増田氏に「歯止めをかけてほしい」と要請。「交付税を削減しておいて、格差を埋めるため地方税同士で調整しなさいというのは本末転倒」と批判した。 

18日には千葉、新潟、京都、岡山、徳島5府県の知事らが「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)の会議で「再配分案は中央集権の強化につながる」と、減額した交付税の復元を求める緊急アピールを出した。21日には宮城、山形、佐賀、徳島、鳥取5県の知事も反対を表明した。 

総務省は、地域間の偏りが小さい消費税1%分を地方に回す代わりに、同額程度の法人2税を国に移す「税源交換」を主張し、3000億円程度が地方に移譲されると試算する。このため、この問題では消費税に手をつけようとしない財務省との間で調整が続いている。 


【コメント】
法人2税なのか、消費税なのか。財務省と総務省とで考えが別れますが、この「論争」に目を奪われていると、「三位一体改革」と同様、国のペテンに引っ掛かり、結局、地方交付税が削減されただけだったということになりかねません。

中央集権体制における「中央」の高コスト体質にメスを入れる改革をせず、「あっちのものをこっちに」という弥縫策ではどうにもならないところに来ています。

防衛省の幹部がテロ特措法に関して、給油量の間違いに気付きながら秘匿していた問題が明らかになっています。これを一部官僚の不心得と解釈するのは間違いです。

現在の官僚は、嘘を付くことが重要な任務になっているということです。防衛省に於いては、アメリカの国益に反する事実を秘匿し、日本の国益を売り渡すことが任務の本体です。植民地政府の官僚とはそういうものなのです。

それ以外の「霞ヶ関」は、あらゆる「改革」の骨を抜く作業が大きな仕事になっています。
彼らにとって、高コスト体質の官僚機構の温存それ自体が目的です。

国益より省益。省益(官僚機構の利益)を「国益」の名で語れる官僚が出世頭になります。


2007/10/22(月) 福田内閣支持率46%(毎日)・・年内解散は無理筋

福田内閣の支持率が当初高かったことから、12月16日解散説が流布されましたが、これは無理筋になりました。

防衛省の不祥事もあり、自民党としてはテロ特措法に対する国民世論の高まりを期待するだけの展開になりそうです。

【毎日新聞調査:内閣支持率は46% 11ポイント下落】(毎日)
毎日新聞が20、21の両日に実施した全国世論調査(電話)で、福田康夫内閣の支持率は46%で、発足直後の9月25、26日に実施した前回調査から11ポイント下落した。

「支持しない」と答えた人は前回比5ポイント増の30%だった。男女別では、男性は支持39%、不支持37%、女性は支持51%、不支持24%で、前回比の支持率下落幅は男性13ポイント、女性8ポイントだった。また、不支持理由で「首相の政策に期待できないから」が11ポイント増え46%になったのが目立った。

政党支持率は自民党が前回比5ポイント減、民主党が1ポイント増で、ともに27%で並んだ。【古本陽荘】

◇政府・与党は冷静に受け止め

福田康夫内閣の支持率が11ポイント下落したことについて、政府・与党は「発足に伴う『ご祝儀相場』が終わっただけ」と冷静に受け止めた。政府高官は「当初予想の支持率に戻った。巡航に入ったということだ」と指摘。公明党の太田昭宏代表も「現実的に落ち着いた数字だ」と前向きに評価した。

ただ、2ケタの下落に「下げ幅が大きい。新テロ対策特措法案ばかりがクローズアップされることに違和感があるのではないか」(自民党政調幹部)という受け止めもある。参院自民党幹部は「会期延長への反対論が勢いを増してくるのではないか」と語った。

一方、民主党の山岡賢次国対委員長は「『減点さえしなければいい』という福田政権の姿勢への不満が表れてきた」と指摘した。

【コメント】
内閣支持率46%という数字は、「上々」の数字です。福田内閣成立時に予想された数字よりもいい数字です。

これまでの自民党なら、解散を打っても、個々の議員や候補者の頑張りで楽々過半数を制することが可能です。

ところが、「個々の頑張り」では勝てない自民党に変質してしまいました。小泉・安倍の6年半で自民党の地方における地盤がズタズタになってしまっています。

加えて、自公政権で3度の総選挙を戦ったことが、個々の候補者を「頑張れなく」しています。創価学会の支援は確実かつ強力であり、この支援の味を覚えると、麻薬の味を覚えたに等しい状態になり、自力では立てなくなるのです。

民主党の支持率と自民党の支持率が同じになったというのも脅威です。「平時」の野党支持率は低く、選挙モードになると上昇するのが一般です。現時点で同じだということは、自民党としては普通には戦えない状態であるということです。

舛添厚生労働大臣の「解散」発言が注意指導を受けたというのも、政権側の認識の一端を示すものです。

大芝居を打てるリーダーでない限り、現時点での解散は無理筋。来春の解散総選挙でどうなるかと言えば、自民党が地方にどれだけバラマキをやれるか、それが都市部有権者にどう映るか、の2元方程式の「解」の問題になります。


2007/10/21(日) 低コストの国家・地域経営は、地域コミュニティの再生から

マスコミが先導する増税論議には、国民を誤った方向に誘導するという意味で、太平洋戦争への道をひた走った当時と同様の責任があります。

彼らの不見識は、高コストの国家・地域経営を無条件に前提として、それに見合う税収がなければ増税しかないので、増税論議に踏み込まない政治家は卑怯であるという論法に結びつきます。

方向性が全く逆です。行政の高コスト体質をどうやって改めるか。これが現時点で政治が最優先課題として考えなければならない論点です。

出発点は、地域コミュニティにあります。社会の最小単位であるコミュニティがしっかりしていれば、自治体や国家の経営にコストが掛からなくなります。

行政支出の中で大きなウェイトを占めるのが、福祉に関する分野です。この項目を金銭で割り出そうとすると、膨大な支出が必要です。社会の相互扶助。ここをベースにしなければなりません。

ただし、現時点での地域社会は相当程度破壊されています。しかも、国民の暮らし方が多様化しており、ひとまとまりに地域ということで括ることが不可能になっています。

そうしたことを前提として、縦・横・斜めからコミュニティを再構築していく努力が必要です。そのためには一定程度の公務員が地域に張り付く仕組みが必要になります。

それだけだと経費の増大になります。それとの対極で、高コストの官僚機構を変革しなければなりません。官僚機構が金食い虫(特別会計や特殊法人等によって国家財政を食い荒らしています)だということをしっかり認識し、これを是正する必要があります。

ひとつの方向性として、補助金等で拘束されている地方を開放し、各地域が能力全開で地域間競争によって低コストの体質をつくれる仕組みにします(地方主権)。

もうひとつ挙げれば、過去の予算と予算執行との整合性のみを追求する会計検査院が、高コスト体質を温存する装置になっています。重箱の隅はつつくが、本質的な無駄は見過ごしてしまうのが現在の会計検査院です。こうした組織は解体して、民間のオンブズマンに委ねればいいのです。

無駄を省く。その観点から行政機構の再構築が必要になっています。要するに、地域コミュニティの再構築と高コストの行政機構の再構築とが表裏一体となった改革が必要です。


2007/10/20(土) 「怪しい人物」が冤罪事件に巻き込まれる・・植草一秀氏の事件を考える

植草一秀氏の「痴漢事件」を扱うと、あまり評判がよくありません。そうであるが故に、繰り返し主張しておきたいと考えています。

これまで冤罪事件であることが確定した事件の多くは、周囲から異質な人物として見られ、同種の前科があるなど、「あいつならやりかねない」、「あいつならやるだろう」と見られていた人物が捜査線上に上がり、捜査機関も「こいつに違いない」と「確信」を持って捜査に臨んでいたケースです。

この手法、即ち、犯人→捜査というあり方は、必然的に自白追求に熱心な捜査を助長します。自白しないと、社会的生命が断ち切られるところまで長期に勾留されます。これと対極をなす、捜査→犯人という手法は、証拠収集に膨大な労力と根気とを必要とします。目の前に「こいつだ」という人物が現れると、どうしても前者の手法に傾くのが人間心理です。

一般の方が見ても、どう考えても怪しい人物が「犯人」として報道されるのですから、当然ながら、裁判に至る前から「犯人」であることが前提となる議論が横行します。

「怪しい人物」を擁護しようとすると、激烈な拒絶反応を示す方も出てきます。当然と言えば当然です。

植草一秀氏に関する「痴漢事件」も、彼が怪しいポジションにいたことを前提として、なお、彼の主張に合理性があるかどうかが客観的に判断されるべきです。

私の疑念は、繰り返し述べているように、話題性に富む事件の割には、マスコミ報道が「大本営発表型」に終始しており、例えば「逮捕者」の詳細について、突っ込んだ取材が行われようとしていないところにあります。

言い換えれば、植草氏側の「挙動不審」もさることながら、捜査機関とマスコミの「挙動不審」にも目を向ける必要があります。

裁判員制度が施行されようとしています。刑事司法においては、「怪しい人物」が「黒」であるかどうかを慎重に見極めることが「肝」になるということを強調しておきたいと思います。

≪独言≫
東京にいた頃、満員電車で女性の体に触れてしまうことがありました。意図せざることとは言え、客観的事実としては問題のある話になります。

そうした経験からすると、誰かがグルになって自分を陥れようとすれば実に簡単だと思います。逆に、植草氏ほどの人物なら、そうした局面に自らを置かないことこそが求められます。そういう意味で、彼を非難すべき事情はあります。

ただし、ある人物を陥れようと企む側からすると、その人物の弱点を徹底的に調べ上げ、仮にその人物に妙な性的嗜好があるなら、その筋で突破していけば比較的容易に目的を達成できると考えるであろうということも言えます。

多面的な思考が必要です。


2007/10/19(金) 増税論議に踏み込むのが政治家の勇気か?・・・うそを言うな!

このところ、報道機関が増税(消費税)を煽る論調に傾斜しているのが気に掛かります。地方に配慮し、弱者に手厚い政策を採ると、即、「バラマキ」コールが起こります。現在の歳出構造を見直す議論は煙たがられ、「増税決断こそ政治家の勇気」と言わんばかりの話です。

財務省主導の政策に迎合する議論です。中央集権を前提として国の予算(補助金等)で地方を統治する。この仕組みにどれだけ国と地方の公務員が縛られ、特に地方公務員の発想が固定化し、地域のグランドデザインを描く能力を失わせているのかが省みられていません。

金と人材を地方に振り向け、地方が国の縛りから解放されることによって得られる経済効果と経費削減効果を完全に無視した発想です。

現在の社会福祉を継続すると、少子高齢化の中で支出は限りなく増大する・・

この国民恫喝の論理が先行します。ここに欺罔行為があります。ローコストの福祉のあり方は、現在の硬直した行政の仕組みを変えることによって可能です。

特別会計を含めた歳出構造を徹底的に見直し、ローコストの国家経営、地方経営のあり方を議論すべきです。そこから、もはや時代遅れで高コスト構造になっている官僚制度=中央集権体制の是正ということが、あぶり出されるはずです。


2007/10/18(木) 農園付き宅地で団塊を呼べ!・・受け入れ態勢が課題

団塊世代のニーズにマッチした自治体の企画です。まだまだ若い団塊世代は、「農」への憧れもあれば、それを実践していく馬力もあります。

その第一歩としての農園付き住宅というのは、手頃な冒険であって、奥さんの了解も得やすいだろうと思われます。

【農園付き宅地:「タダで貸します」団塊殺到 茨城・大子町】(毎日)
造成が進む宅地用地を前に将来像を描く人は後を絶たない=茨城県大子町で、若井耕司撮影 農園付きの宅地を無償で貸します−−。茨城県最北部で過疎化に悩む大子(だいご)町が町有地15区画(800〜1700平方メートル)を20年間無償貸与(更新可)する制度を作り、首都圏の団塊の世代を中心に、半月で1000件の問い合わせが殺到している。

貸与対象は、JR水郡線常陸(ひたち)大子駅から車で10分、同町山田の1万6430平方メートルの遊休町有地。応募条件は町内の業者を利用して住宅を建て、定住や年間90日程度以上居住することで、おおむね65歳以下が対象だ。他に▽建築費を50万円交付▽住民票を移せば家屋の固定資産税額を3年間交付▽町営浄化槽の設置費8割負担−−などがある。町は10年間で4億7000万円の経済効果を試算する。

町議会で9月下旬に議決し、10月16日までに町への問い合わせは1000件を超えた。首都圏の1都3県からが8割を占め、多くが団塊の世代。町企画課担当者は「ここまで忙しくなるとは」と声を弾ませている。

貸与予定地では連日のように、現地を見に訪れた人の姿が見られる。

さいたま市から夫婦で訪れた伊藤東作さん(63)は、周囲の自然を見て「空気も空も違う」と顔をほころばせる。伊藤さんは60歳の定年後も会社の嘱託として都会で働く。「故郷の山形を出て35年間、埼玉で生活してきた。最後は田舎で、という思いはある」と話す。

山田地区には約370人が暮らす。農業を営む益子一男区長(74)は「1人でも人口が増えるのはうれしいし、こちらは生きていく力が倍増する思いだ」と話す。

12月28日まで募集し、応募者多数の場合は町が選考して、早ければ08年2月に決める。問い合わせは同町企画課(0295・72・1131)。【若井耕司】

 ▽NPO法人ふるさと回帰支援センター事務局長の高橋公さん(59)の話 団塊の世代の人々は、地方から都会に出てきた人が多い。安全、安心や自然と触れ合う暮らしへのあこがれが強まり、普通の人が当たり前に田舎暮らしを選択するようになっている。大子町の取り組みは、話題作りの点で大成功。今後の課題は、移り住んだ人が自分に合ったライフスタイルを作り上げられるかだが、それには町や地域住民の協力が欠かせない。町の活性化にまでつながるか注目したい。

【ことば】◇大子町◇ 福島、栃木両県に接し、人口約2万2000人。東京都心から直線距離で約130キロあり、電車で約3時間、高速バスで約3時間半。人口は17年前から約5000人減り、65歳以上の高齢者が35%を占める。奥久慈温泉郷や袋田の滝があり、アユ釣りの名所の久慈川が町の中央を流れる。

【コメント】
ポイントはその地域の政治風土です。都市部住民の政治意識や自己主張は、ともすれば田舎の住民とは懸け離れています。

相互の歩み寄りは必要ですが、田舎の住民が政治的に垢抜けしていかないと、愛想を尽かされるという展開もあり得ます。

都市部から帰ってきたり、新たに居住を開始した新住民から、市町村議員が出て来やすいような政治的環境整備が必要です。

政治の民主化と風通しの良さ。地方自治活性化の王道でもあります。


2007/10/17(水) 植草一秀氏に対する東京地裁判決・・原告側主張で一貫

植草一秀氏に東京地裁で有罪実刑判決。事実認定が捜査機関側の捜査を完全追認する形になっています。

それにしても不自然な事件。あれほどマスコミに騒がれながら、警察発表以外の報道が極端に少なく、報道機関になにか規制が掛かっているような気がします。

時の権力に目障りな言論を展開していた植草氏に対する国策捜査ではないかとの疑念も湧いてきます。

判決内容は、産経新聞のウェブサイトに載っています。

原告側証人の主張をそのまま認めた判決としか言いようがありません。複数の証人がそうだと言えば痴漢の犯罪者になるわけですから、そういう局面に居合わせたことの問題性を植草氏に投げかける必要はあります。

被害女性や逮捕者を直接見ていない者としては、何とも言えないというのが率直なところです。

逮捕者に関する情報が乏しく、何故マスコミが独自視点での取材に躊躇しているのかが不明です。そういった全体を眺めると、不自然な事件であるという印象を持たざるを得ません。

参考:AAA植草一秀氏を応援するブログAAA


2007/10/16(火) 国と地方の格差論議に関する産経新聞の記事を読む

参院選での自民大敗は、地方における保守層の反乱が一因です。このことを重視した自民党は、政策のスタンスを変えつつあります。

こうした動きを苦々しく見る向きもあります。産経新聞に面白い記事があったので引用します。

<【土・日曜日に書く】論説副委員長・岩崎慶市 おかしな地方再生論議>(産経)

◆増幅される地方の怨嗟

 「地方は弱者」「構造改革の行き過ぎ」「地方予算の増額を」と、まあ地方の格差論議が喧(かまびす)しい。それらをすべて否定するつもりはないが、あまりに偏った議論が多いので少し整理したい。

 地方格差論議が一気に高まったのは夏の参院選からだ。民主党の大勝は農家の戸別補償などの地方向け対策を打ち出したからで、自民党はそれが不十分で大敗したといわれる。それはその通りだ。

 だが、これを民意として、与野党が競うように地方になびくのは、どうにもおかしい。誤解を恐れずに言えば、これは選挙制度など現在の政治構造による産物であり、国民全体の民意とはかけ離れているのではないか。

 いまさら一票の格差を持ち出すまでもなく、現行の選挙制度は大都市より地方に有利だ。その地方政治の中枢は土建業者や商業、農業団体の幹部らが占めている。自民党の支持基盤は、そうした既得権益者だった。

 彼らを潤したのは公共事業や各種補助金、地方交付税である。交付税は地方公務員の高給与にも流用されており、これも立派な既得権益者である。小泉構造改革はこうした既得権益を守る利益誘導型政治にメスを入れたのだ。

 確かにそれは国に頼ってきた地方と大都市の格差を広げた。だが、それを地方の怨嗟(えんさ)の声として実態以上に増幅したのは既得権益者たちだったのではないか。しかも、その声を国に向けている。

 国はこの10年だけで50兆円も地方の財源不足を補填(ほてん)し、地方よりはるかに財政を悪化させた。国債残高が国内総生産(GDP)を上回る異常水準に達した国の財政が破綻(はたん)すれば列島全体がもたない。増幅された声に政治が引きずられるのは極めて危険である。

 格差は地方と大都市間にある。とくに地方法人2税(法人住民税と法人事業税)の1人当たり税収格差は東京都と長崎県で6・5倍だ。ならばこれを調整に使いたい。限定的なら寄付金税制を活用する「ふるさと納税」も可だ。

 財政的な手当てとしては、これで十分ではないか。あとは地方が自立に向けどう依存意識を改め、自助努力を重ねるかだろう。
 
◆自助努力はどこにある

 地方の衰退を象徴する現象として、シャッター通りと地域産業の空洞化が語られる。それは事実だが、誰がそうしたのか。自助努力不足と無関係ではあるまい。

 かつて商店街は大型店の出店に猛烈に反対した。そして郊外出店を強化した大型店に客を奪われシャッター通りと化した。強調されるのはその影の部分だけであり、大型店が消費者への利便性提供や雇用創出で地域経済に貢献している光の部分は無視されている。

 しかも、今度は大型店を商店街に誘致するための中心市街地活性化法などいわゆる「まちづくり三法」をつくり、さらにその強化・見直しに入っている。このちぐはぐな経緯から商店街の自助努力をみつけることはできない。

 ちぐはぐさは新幹線や高速道路建設にも言える。便利になったがゆえに逆に主要都市に客を吸い取られる「ストロー効果」現象があちこちで起きている。地域産業の空洞化にしろ、中国への生産シフトなど抗(あらが)えない世界的うねりであり、構造改革の結果ではない。
 
◆大木を養うのは市町村

 いくら財源を確保しようが、それを再生産に結びつける知恵と努力なしにただ手をこまぬいていては、とても活性化は望めまい。

 観光産業でもいい、地元大学との協力で地場技術を新たなビジネスにつなげる方策だってあろう。企業誘致にしてもやみくもに行うのではなく、まず東京に移転した地元出身大企業の本社回帰を促すことから始めたらどうか。大企業の本社が一極集中している国など欧米にはない。自治体独自の税制や住宅施策などを企業と一緒に考えればいいではないか。

 「私はよく国を大木にたとえるが、この大木を育てるものは根です。この根を養うものは即(すなわ)ち市町村です。ところが、現状では大木を養うべき市町村は自分の務めを忘れ果てて、ただ大木によりすがっているではないか」(『随想録』)

 首相、蔵相を歴任した戦前の経世家、高橋是清がこう嘆いたのは昭和10年のことだ。翁の嘆きが今も通じるのは実に情けない。

 もちろん、大木によりすがらないよう努力している自治体もある。公共事業に頼らずに自然保護を観光資源とする北海道のニセコ町と倶知安町は、オーストラリアから観光客が殺到し地価上昇率も日本一だ。大分県豊後高田市は取り残された昭和30年代の街並みを、逆に観光に利用している。

 大木を養うために地方自らが活性化策を競い合いたい。

【コメント】
産経新聞らしい「正論」です。ただし、この主張に欠けているものがあります。

今年は、「明治140年」。この間、アジアの出遅れ国家・日本は、欧米に追い付くため、中央集権体制で「富国強兵」の道を進みました。この路線が破綻した後も、戦後、中央集権を維持して奇蹟の復興を遂げました。

分権国家であった江戸幕藩体制を覆し、東京中心に国の形を変えた明治政府以降、地方からあらゆるものが奪われました。産業基盤は太平洋ベルト地帯に集中し、人材も吸収されました。

国から地方への施策は、全てを奪い尽くした後での「施し」にすぎません。そうした中で、小泉政権による「三位一体改革」なる国家的なペテンで、地方財政は急激に悪化しました。市町村合併などの地方切り捨て策と相俟って、地方の地盤沈下が加速しました。

中央集権を維持したまま、「地方は甘えず頑張れ」といくら叱咤激励しても、そもそも「地力」がないのです。地方のハンディは生半可なものではありません。多くの地方で行われている活性化策も、中央から見て「微笑ましい」というレベルでしかありません。

強い地方を創るためには、産業基盤が整備されなければなりませんが、その前提として、一挙手一投足を「国」=東京=霞ヶ関から指導されている現体制を変革する必要があります。即ち、地方主権です。

その前提抜きに「頑張れ」と言ってみても、路上生活者に向かって「かつての偉人は艱難辛苦を乗り越えた」と御高説を垂れるに等しい作業になります。


2007/10/15(月) 強迫観念で突っ走る自民党・・「給油反対はテロリストだけ」発言

アメリカの意向には逆らえない。この一点で自民党は突っ走っています。「ノー」と言ったらどうなるのかというイマジネーションが欠落しています。これが従属外交路線の特徴と言ってもいいでしょう。

【自民・中谷氏、給油反対「テロリストだけ」=鳩山民主幹事長は反発】(時事通信)
自民党の中谷元・安全保障調査会長(元防衛庁長官)は14日、フジテレビの番組で、民主党がインド洋での海上自衛隊の給油活動継続に反対していることに関し「(給油活動は)国際社会の中で非常に評価され、ぜひ続けてくれと要望されている。反対するのはテロリストしかいない」と批判した。さらに「民主党はテロリスト集団か」との質問にも「(反対するのは)僕には理解できない」と語った。
 
これに関し、民主党の鳩山由紀夫幹事長は同日、和歌山市内のホテルで記者会見し、「国民の3割は給油活動、テロ対策特別措置法に反対しており、日本(国民)にも3割のテロリストがいるという話になる。こんなむちゃくちゃなことをテレビの前で発言するのはとんでもないことだ」と強く反発した。  

【コメント】
無料で給油すれば、評価され感謝されるのが普通です。そのことが給油延長の理由になること自体滑稽です。

日本という国家において、自衛隊という実力部隊がどういう原理で行動するのかが問われている局面で、町内会の行事に参加するかしないかの家庭論議のような議論しか展開できない自民党という政党の質の低さには閉口します。

周囲の状況から行動を決めるのが自民党。原理原則から考えていこうとするのが小沢民主党。この違いを国民が理解できるかどうかが、これからの日本の政治を決める大きな分水嶺になるでしょう。

状況主義の自民党は、「国際世論」(=アメリカの意向)が実力行動を期待する方向に転換すれば、たちどころに実力行動に軸足を移すでしょう。原理原則なき政党に実力部隊を任せていいのかどうかが問われます。

「テロリスト」発言の中谷氏。思考水準が著しく劣化ないしは低下しています。強迫観念が度を超している有り様は、政治家としては危険な傾向です。


2007/10/14(日) 官僚主権体制から国民主権体制への転換・・参議院与野党逆転の意義

今夏の参院選で与野党が逆転したことの意義は、通常思われている以上のものがあります。

テロ特措法の審議を見ても、様相は様変わりです。政府による国民への説明責任が厳しく問われる展開になりました。

国民の税金が、「インド洋上の給油によりアフガンでのテロとの戦いを支援」という名目で、実際にはイラク戦争に使われていたのではないかという疑惑にきちんとした説明がなければ、「政府による横領・背任行為」になります。従来のような情報開示なき政策遂行は困難になりました。

6年間は与野党逆転の解消が困難な現体制は、自公政権による強行採決で官僚主導の政治がまかり通ってきた体制から、野党による国民意思の代弁で、国民の目による厳しいチェックができる体制に転換したことを物語ります。

現体制で民主党が信任を得れば、民主党による政策遂行が迅速に為される体制(民主党政権)への移行になります。

自公体制(官僚主導体制)→ 野党によるチェック体制(国民主権体制)→ 民主党政権(国民主導・地方主権型システムの構築)という流れになります。


2007/10/13(土) 生活保護は現物支給中心にできないか

生活保護を打ち切られ、あるいは生活保護の認定が受けられず、餓死するという事例が社会に大きな衝撃を与えています。

かつての貧しい時代なら、米や味噌を貸したり借りたりで凌げたものが、隣近所の付き合いが乏しくなってきた昨今では、餓死や孤独死につながりやすい状況が生まれています。

生活保護費が暴力団の生活費になっている事例もあると聞きます。生活保護を受ける側の問題点が指摘される場合もあります。そのような視点で見直すと、「行政の過酷な姿勢」を糾弾するだけでいいとも思えません。

誤解を恐れず率直な議論をさせていただくならば、金銭支給ではなく現物支給中心にすべきです。その方が、一定の予算でより多くの人を救済できるし、食材提供ないしは安価な弁当支給を合理的に行い、現物支給の要件を緩和すれば、少なくとも餓死は防げます。

このブログでは繰り返し、生活保護は国や自治体が貸し付ける形で行い、返済をすることを建前にすべきだと主張しています。現物支給も一定基準で金銭評価して貸し付けた形にすべきです。

自主自立を基本とする。しかし、困った場合は社会が救済すべきです。公が救済することは勿論必要ですが、社会的な連帯で個人を守れるような地域コミュニティーの育成も図られるべきだと思います。


2007/10/12(金) 四国アイランドリーグが6チームに・・「西日本ブロック」への発展を!

私は民主党時代、四国、中国、九州の「西日本ブロック」を形成してアジアを睨む地域国家による産業政策樹立を提唱していました。

4チームで始まった四国アイランドリーグが、来季は九州の2チームを加えて6チームになるというニュース。

これに中国地方が加われば、野球における西日本ブロックの成立です。

【四国アイランド、来季は九州2チーム加え6チームに】 
野球の独立リーグ・四国アイランドリーグを運営するIBLJ(本社・高松市)は、経営難の高知ファイティングドッグスを存続させ、来季から長崎セインツ(長崎県佐世保市)と、新たに発足する福岡県のチームを加えた計6チームでリーグ戦を行う方針を固めた。

【コメント】
四国410万人、中国地方770万人、九州1470万人。合計2650万人のブロック形成により、相当程度のボリュームがある単位ができます。

四国で「州」をつくった場合、410万人という単位で特色ある産業政策をつくれるかというと、地形的にまとまりがあればともかく、四国山地で分断されていることを考えると難しいように思われます。

では「中・四国州」ではどうか。この場合、四国は「半島」となり、ストロー効果で富が中国地方に吸い寄せられます。

アジアの玄関口である九州を加えた西日本ブロックを形成し、「天下を三分」すれば、バランスが取れ、四国に活路が出てきます。

九州はそれ自体で独立可能な勢力ですが、朝鮮半島の7000万人(韓国4700万人)のボリュームに対抗し、近畿ブロック2100万人に対する優位を確保するという観点からは、「西日本ブロックの中心地・九州」というポジションを確保することが有利です。

「首都」は福岡。広島、松山を「副首都」として、3つの地域が連携することによるメリットを最大限追求します。

野球をはじめとするプロスポーツは、経済という「下部構造」の上に咲く花(文化)です。しっかりした下部構造の形成こそが、野球発展のためにも必要だと思います。


2007/10/11(木) 民主党内にも従属外交路線があるのか?・・小沢氏への「違和感」

アフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊派遣についての小沢・民主党党首の見解に対し、民主党内で異論があります。

これをどう見るか。

【毎日フォーラム:前原民主副代表ら、テロ新法案を討論】(毎日) 
毎日新聞の政策情報誌「毎日フォーラム」が紙面と連動して開催する第4回シンポジウムが10日、東京都内のホテルで開かれた。「混迷政局の行方」と題し▽自民党の山崎拓前副総裁▽同党の加藤紘一元幹事長▽民主党の前原誠司副代表▽毎日新聞の岸井成格・特別編集委員が、今国会の焦点の新テロ対策特別措置法案などを討論した。

前原氏は、同党の小沢一郎代表が、アフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への参加を表明したことについて「(党内が)まとまっているとは思わない。(小沢氏が党首だった)自由党と、民主党が合併する以前からの民主党議員は違和感を感じる人がかなりいる」と指摘。小沢氏がISAF参加の理由に国連決議を挙げたことについても「国連決議があれば何でもできるという考え方はとらない。日本の外交の選択肢を狭める」と批判した。


【コメント】
自民党と小沢民主党との違いは、アメリカの言うことなら何でも聞きますというのか、国連を尊重した自主独立の外交を貫くか、という違いに尽きます。

少しだけ聞くと、自民党はアフガニスタンに自衛隊を派遣せず、給油だけにしようというのですから、控えめな主張をしているような気がします。しかも、小沢見解は違憲だというのですから、厳格な護憲派のようでもあります。

しかし一歩踏み込むと様相が違ってきます。アメリカが「この際給油だけでいいよ」と言ってくれているから「給油」と言い張っているだけで、もし「派兵してくれ」という要請があれば、憲法解釈もなんのその、派兵に傾くでしょう。

こうしたアメリカの植民地路線では、「しばし安全」という意味での「国益」は守れるかもしれませんが、中長期的な国の安全確保は不可能です。しかも、「日米同盟」維持のための経済的な犠牲を考えると、真の国益を犠牲にし続けることになります。

民主党内の「異論」が自民党と同根の発想に基づくものであれば、情けない話だと思います。ただ、前原氏の「国連決議があれば何でもできるという考え方はとらない。日本の外交の選択肢を狭める」という発言を率直に理解すれば、アメリカからも国連からも自由な自主独立路線とも受け取れます。

私は、国連が不完全な国際組織であったとしても、日本は国連中心の行動を取るのだと内外に示すことこそが、日本が来るべき世界国家に向けてリーダーシップを発揮する道だと考えます。そういう意味で、小沢氏の見解に賛成します。


2007/10/10(水) 「普通の生活に戻りたい」・・木村隆秀衆議院議員の引退

「普通の女の子に戻りたい」と言ったのは、かつてのキャンディーズ。

働き盛りの現職国会議員が何故なのかという向きもあるのでしょうが、なんとなく分かるような気がします。

【引退:木村隆秀衆院議員「政治家に不向き。普通の生活に」】
次期衆院選不出馬を表明する木村隆秀衆院議員=名古屋市中区の愛知県庁で9日午前9時53分、大竹禎之撮影 自民党の木村隆秀衆院議員(52)=愛知5区選出=は9日、愛知県庁で記者会見し、「普通の生活に戻りたいという気持ちが高まった。こういう状況で、激しい選挙戦を戦い抜くのは困難と思った」と述べ、次期衆院選に立候補しない意思を正式に表明した。

木村氏は、元県議の父昭一氏が52歳で死去したことに触れ「同じ年齢になり、これからどのように生きていこうかと考えた」と説明。政界引退は参院選前の今年6月下旬に決意したという。

「おとなしく、受け身」という自身の性格から「政治家として不向きではないか」と判断したことも明らかにした。木村氏は27歳で県議初当選。96年に衆院議員に転身、現在4期目。津島派に所属し安倍内閣では副防衛相を務めた。

【コメント】
愛知県で自民党の衆議院議員が次回の選挙を含めて勝ち抜くのは極めて困難です。それも要因だと思います。しかし、戦うのが政治家ですから、ご本人が言われるところを率直に受け止めるべきでしょう。

政治に携わった経験からすると、政治家とは自転車操業の最たるものです。著名で確固たる地位を築いた政治家でない限り、政治家で居続けるためには、常に漕ぎ続けていなければなりません。

その先に自分の理想とする世界が見えていれば、それなりに頑張れます。しかし、ともすれば目先の現実に追いまくられます。しかも、政治家が交わる人の多くは、政治に何かを期待しています。その期待には正当なものもあれば不純なものもあります。特に政権党の場合、擦り寄る人の中に不純な人が多いであろうことは容易に推測されます。

普通の生活がまばゆく見えることもあるでしょう。自分自身を見つめ直すと、生き方に疑問を持っても不思議ではありません。木村氏が普通の生活で幸せになられることを祈念します。人生は100年ある。


2007/10/9(火) 社会保険の事業主負担をなくせば、中小零細企業は救われ、労働者も守られる

基礎年金に関する議論ですが、自民党の中川秀直氏が興味深い意見を述べています。

【基礎年金、全額税方式検討を=自民・中川元幹事長】(時事通信)  
自民党の中川秀直元幹事長は8日午後、広島県府中町で講演し、民主党が主張している基礎年金の財源を全額税金で賄う全額税方式について「国民負担がいくらになるかなどの問題もあるが、税方式にして事業主の負担が軽くなる分を非正規労働者の待遇改善につなげるという議論もあり得る。真剣に考えないといけない」と述べ、前向きに検討すべきだとの考えを明らかにした。 

【コメント】
非正規労働者が多くなっている要因として、社会保険料の企業負担の問題があります。多くの企業で、正規の労働者としての労働時間があるにもかかわらず非正規の扱いで社会保険料負担を免れようとする傾向があります。

実際、中小零細企業で社会保険を負担することは、「過酷な税金」としての意味が強く出てきます。善良な事業主は「過酷な税」に泣き、悪徳事業者は「税」を免れて負担を軽減することになります。労働者が泣く結果になります。

この際、社会保険制度全般につき、基本設計を大幅に変更していくべきではないでしょうか。企業負担がなくなれば、非正規の労働者も本人さえ納得すれば社会保険に加入することができます。

「扶養家族」となっている専業主婦についても、夫が負担する社会保険料の一部を妻が負担したものと見なすという考え方が必要ではないでしょうか。夫が2万円の社会保険料を負担しているとすれば、内訳として、夫が1万円、妻が1万円負担したと見なすのです(共働きの場合は、妻が負担する社会保険の半額を夫が負担したものと見なすことになります)。

家庭に入るのも社会で働くのも女性が自由に選択でき、しかも不利のない仕組みを確立すべきだろうと思います。


2007/10/8(月) 自民党政治家は付和雷同型になったのか?・・・森・元総理の懸念

没落直前の貴族政治。自民党政治が末期現象を迎えています。安倍退陣に関し、森・元総理が興味深い見解を示しています。

森氏は、安倍氏が昨年自民党総裁に立候補することに対し、懸念を示していました。

【安倍退陣「心配、全部当てはまった」…森元首相が講演で】(読売) 
自民党の森元首相は6日、青森県弘前市で講演し、安倍前首相の突然の退陣について、「心配していたことがすべて当てはまった」と振り返った。

森氏は、安倍氏の昨年の総裁選出馬の際、「心配したことがいくつかあった」と語り、その一つに健康問題を挙げた。「前から良く知っているが、安倍さんは腸が丈夫ではなかった。私は安倍さんの体調を非常に心配し、完全に体を治してから(総理・総裁を)やるのでも遅くないと思っていた」と語った。

さらに、安倍氏が総裁選出馬の決意を森氏に示した際、「私は世論の支持を一番受けている」と強調していたとして、「安倍晋太郎・元外相の子息として一目置かれて育ってきたが、本当の苦労をまだまだ体験していなかった」と指摘。

安倍氏の首相就任は人気先行で、準備が不十分だとの懸念を当初から抱いていたことを明かした。

また、自民党内の空気についても、昨年の総裁選では「安倍さんが『広告塔』に良さそうだと判断し、支持の流れが出来た」とし、「付和雷同型」議員が多かったと論評。先の総裁選でも福田首相支持に雪崩を打ったため、「今も危険な兆候がある」と懸念を示した。


【コメント】
選挙の顔になりそうな人を選ぶ。小選挙区制度の影響ということでしょうか。小泉政権以来、選挙に勝てるかどうかから逆算して党首を選ぶということが自民党で顕著になりました。

勝ち馬に付和雷同的に同調する自民党政治家が激増しました。この点を自民党の長老は嘆くわけですが、それは最近始まったことなのでしょうか。

本来、自民党とはそういう政党だったのではないでしょうか。権力に擦り寄る。そして、そのおこぼれに与る。そうした嗅覚の発達した方々が支配してきたことで数十年の「幕藩体制」を維持してきたのです。

体制翼賛会。これが自民党の本質です。権力に付和雷同していたのが、権力者になりそうな人、権力を維持できる可能性の強い人に付和雷同するようになっただけです。

附言すれば、自民党における派閥間の対立・抗争劇は今日、政党間の権力闘争になったということです。


2007/10/7(日) 強行採決で成立した法律の正当性・・安倍内閣の「功績」について

安倍内閣は無惨な最期を遂げましたが、短期間に「戦後レジームからの脱却」路線による大きな法改正(憲法改正手続き、教育基本法改正など)を行ったことを評価する向きもあります。

しかし、それらのほとんどは強行採決によるものです。民主党政権が成立したときには、この正当性について光を当てていただきたいと思っています。

強行採決が正当性を有する場合もあります。野党が理不尽な審議拒否を繰り返す場合などです。しかし、安倍内閣の場合、そのような要件に当てはまらないだけでなく、強行採決の回数が歴代内閣中抜群であり、しかも数を頼りに国会を愚弄するようなやり方で強行採決を行った点で、極めて悪質であったと言えます。

「出来てしまったものは仕方がない」で済まさずに、きちんと安倍悪政のケジメを付けるべきだと思います。もちろん、民主党政権によって。


2007/10/6(土) 舛添さん、向きになるな・・・「二重の不利益」をどう見るか

自治体において不利益処分がなされ、既に解決済みの案件を国が再度問題視して刑事告発をする。これが自由主義国家で許されるのかどうか、じっくり検討してみるべき課題です。

確かに、怪しからん事案です。だからといって、一度不利益処分を受けた者に再度鞭を打つことは、二重に不利益を科すことになります。憲法39条との関係を考えるべきであると思います。

【8市町は元職員告発せず 年金保険料の着服で】 
自治体職員による年金保険料着服問題で5日、新たに群馬県大泉町、三重県鳥羽市、愛媛県新居浜市、秋田県男鹿市が元職員を告発しない方針であることが分かった。これで社会保険庁が告発の検討を要請した9市町のうち、告発したのは東京都日野市だけにとどまり、8自治体が告発を見送る。

舛添要一厚生労働相は4日、自治体が告発しない場合は社保庁による告発を検討するよう指示している。

大泉町では、住民課年金係の男性の元係長が2001年6月から8月にかけ、嘱託職員が集金したり、町民が窓口で納付した国民年金保険料11万9700円を着服。02年2月に懲戒免職となった。

鳥羽市では、神島出張所に勤務していた元臨時職員の女性が01年4月から02年2月にかけ、19件の年金保険料約20万円や徴収した税金など約110万円を着服し、その後解雇された。

新居浜市では、非常勤の元国民年金相談員の女性が2000年10月から01年6月にかけ、32人から集金した計115万7100円を着服。7月に依願退職し、処分は受けていない。


【コメント】
ある首長の会見では、処分時に国と協議して結論を出したということでした。そうなると、国が関与して不利益処分を下した後に、再度国が不利益処分を申し立てることになります。そうでない場合でも、公の機関が間をおいて二重に不利益を課すことの是非が問われなければなりません。

日本国憲法39条は、「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」と規定しています。

39条の前段後半と後段とは、「二重の危険禁止」を定めたものであり、国家は同一事案に付き一度しか訴追権を有しないとするものと理解されています。その意味では、国が「刑事処分につき」「一度」関与することは、憲法39条に反するものではありません。

しかしながら、公の機関が不利益処分を科し相当の期間が経過した案件を、「怪しからん」と言い立てて刑事処分の対象にしていいのかどうか。

刑事処分を科すべきかどうかの判断まで含めて公の機関が一度吟味したのですから、時を経て再度刑事処分の俎上にのせるのは、個人の自由という観点から定められた憲法39条の精神を考えると、大いに疑問です。

そこまで国が前のめりにならなくてもいいのではないでしょうか。それよりも、制度上の欠陥を是正することが所管官庁の本来的な役割です。

「依願退職」という事案も、実質は処分されたということであれば、同様に理解すべきものだと思います。


2007/10/5(金) 農家への所得補償は、地方有権者を民主党支持者にする

今夏の参院選で意外だったのは、従来保守の岩盤だった地域で自民党の基盤が崩壊しそうな状況が生まれたことです。

愛媛4区。生まれたときから自民党にしか票を入れたことがない人が多い地域です。私は民主党時代に、この地域の岩盤を打ち崩そうと試みたのですが、歯が立ちにくい印象でした。

ところが、この地域で野党の無所属候補・友近氏が自民党のベテラン・関谷氏に勝ってしまいました。

どうも、この「所得補償」が利いたようです。

【すべての販売農家に所得補償、民主が要綱まとめ参院提出へ】(読売) 
民主党は4日の農林水産部門会議で、すべての販売農家に対して所得補償を行うことを柱とした農業者戸別所得補償法案の要綱をまとめた。

戸別の補償額は、標準的な販売価格と生産にかかった費用の差額を基本とし、生産面積に応じて算定する。施行期日は2009年4月1日。今月中旬にも参院に提出する。

法案では、コメや麦、大豆と、その他政令で定めるものを「主要農産物」に指定。国と地方自治体が農産物ごとに生産数量の目標を設定し、目標に沿って生産する販売農家に対し、戸別に所得を補償する。民主党は、必要な財源を約1兆円と見込んでいる。


【コメント】
ヨーロッパでの実績を背景に民主党が掲げた個別農家への所得補償は、乾いた土地が水を吸い込むように浸透しています。

「バラマキ」というお決まりの批判が与党やマスコミから流されていますが、「バラマキ」の中味の分析が足りないようです。

これまでの「バラマキ」は、地方・地域の活性化を大義名分としているにもかかわらず、中間搾取団体への支援に他なりませんでした。中間搾取団体への支援は、自民党の票田を耕す効果があり、政治的には有効な手段でした。

しかし、国家財政の破綻が迫ってきたことから、この手法を実行することが困難になってきました。マスコミもそれを全面的に支持。公共事業の削減となって今日に至っています。

しかし、地方の疲弊が政治的に無視できない状況にまで至っており、しかも「三位一体改革」なる国家の詐欺的手法で、地方自治体の財政がガタガタにされてしまっています。

そうした背景の中で、民主党の政策への期待が高まっています。地方保守層の目から見ると、「田中派の復権」です。

中間搾取団体への補助は効果がないと地方の有権者も思っています。これに対し、直接的保障であれば予算はそれほど必要としません。地域コミュニティーを維持する効果も見込めます。


地方の有権者を民主党支持者にする効果もあるようです。


2007/10/4(木) 「小人の戯れ言」と舛添氏は言うが・・国の「犯罪」は?

「市町村は信用ならない」との舛添厚生労働大臣の発言に対し、倉吉市長、武蔵野市長が批判。舛添氏は「小人の戯れ言」と反論。

「小人」とは無礼極まりますが、それでは、舛添氏は大人ないしは君子なのでしょうか。それならば、「巨悪」への対応はどうされるのでしょうか。

【「小人の戯れ言に付き合う暇ない」市長からの抗議文に舛添厚労相】(産経)
舛添要一厚生労働相は2日の記者会見で、年金保険料の横領・着服問題をめぐる舛添氏の「市町村は信用ならない」との発言に対し、一部の市長が抗議していることについて、「私に対して言うよりも、不正を働いたところの首長に言いなさいということだ。小人のざれ言に付き合う暇があったら、もっと大事なことをやらなければいけない」と反論した。
 
舛添氏は9月29日に都内で記者団に対し「銀行は信用できるが、社会保険庁は信用ならない。市町村はもっと信用ならない」などと語った。これに対し、鳥取県倉吉市の長谷川稔市長や東京都武蔵野市の邑上守正市長が、不用意な発言が年金行政全体の不信感をさらに招きかねないなどとして、厚労相に抗議していた。


【コメント】
舛添氏が目くじらを立てるのは、所詮は小役人の犯罪に過ぎません。これに対し、グリーンピアなどの大規模な公的年金の流用問題は、国家ぐるみの「犯罪」です。

ただし、これには犯罪とされる「構成要件」がなく、犯罪ではないことになっています。小さな不正は犯罪として取り締まられ、大きな不正は「犯人」不詳のままになってしまいます。

国が行った施策で国民が被害を被った事例が、これまで数多くありました。その責任はうやむやです。

市町村に比して国がさらに信用できない。これが実態です。ここに目を背け、小さな悪にのみ目を向ける舛添氏の「小人」ぶりこそが問題ではないでしょうか。


2007/10/3(水) 「アメリカの目」を意識した従属外交から、「憲法の目」を意識した自主外交へ

アメリカの国益に合致することを我が国の国益であると強弁したり、アメリカンスタンダードをグローバルスタンダードであると曲解する植民地型の意識で一部識者や報道機関が国民を説得しようと躍起になっているというのが、近年の我が国における言論や報道の基調です。

しかし、法の支配を前提とする我が国の統治機構にあっては、「法」即ち「憲法」の目を意識した政策が採られなければなりません。

【小沢民主党代表:アフガン部隊参加に意欲…海自給油代替案】(毎日)
民主党の小沢一郎代表が5日付の党機関誌で、インド洋での海上自衛隊の給油活動に代わる国際貢献をめぐり、民生支援の重要性を強調する一方で、「政権を担う立場になれば、アフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF)への参加を実現したい」と語っていることが2日分かった。ISAFは治安維持活動を行っており、参加すれば憲法が禁ずる海外での武力行使にあたる可能性が出てくる。

ISAFは01年12月、国連安保理決議で設置が承認され、北大西洋条約機構(NATO)が主導。今年7月現在、計37カ国が参加し、約3万9000人を派遣している。

小沢氏は国連決議に基づく国連の活動であれば、海外での武力行使でも憲法に違反しないという立場。2日の記者会見でも「ISAFは国連の活動で、参加は憲法に抵触しない。派遣するかしないかは時の政府の判断だ」と語っていた。党幹部は「小沢代表の持論から言えば、武力行使を含むISAFへの参加は当然だ」と指摘した。

しかし、民主党内には後方支援を検討する声はあったものの、本体参加には慎重意見が大勢。党内から異論が出ることも予想される。【

【コメント】
後方支援は拒否するが、部隊の参加は容認する。矛盾ではないか。こうした意見があり得ます。

小沢氏の見解は、常に「国連」という媒介項が入ります。国際社会を具現化したものが不完全ながら国連であり、国連の内容を充実させながら世界平和を実現することこそが、我が国に期待されている外交の基本であると考えれば、小沢氏の発想は理解できます。

これに対し、アメリカに嫌われたらとんでもない目に遭わされるのではないかというのが、従属外交派の基本発想です。

血を見る可能性があっても、国連を媒介とする自主外交を採用することが、国民主権と法の支配に合致するものであると考えます。血を見なくても、従属外交を続けることで得られる名声は如何ほどのものでもないと思います。むしろ、中・長期的な国益を大きく損なう可能性があります。


2007/10/2(火) 都市部有権者の納得と地方保守層の安心感・・福田政権の課題

福田総理の所信表明演説。野党との協調路線ということを明確に打ち出しました。

年金問題での不信感と格差の問題で、都市部の有権者に拒否され、地方保守層の反乱により1人区で敗れたことが、参院選惨敗の要因です。

郵政民営化の是非しか問われなかった選挙で得た議席を、「戦後レジームのからの脱却」などという大テーマを実現するために活用した安倍政権の手法は、有権者が政権自体の正当性を疑問視する契機となりました。

加えて、度重なる強行採決が有権者の不安をかき立てました。そうしたことへの反省から福田政権は出発しています。

選挙を経ていない政権の正当性に疑問があり、実際問題として参議院で野党が主導権を握っている状態があります。村山政権を担いだときの自民党を思い出します。村山政権で国民を癒した後、自民党の本格政権が復活しました。

現在の自民党が描いているシナリオは、国民の心を癒し、野党の攻撃をかわして政権交代に結びつく「失点」を押さえ、3年後の参院選で挽回して一部野党との連立で本格政権への足掛かりを築くということだと思われます。

ノーアウト満塁で登板して打たせて取るピッチングをする状態。民主党がバットを振り回すようだと、「内野ゴロ」の連発になります。「地味な野球」になってきます。「監督采配」が問われます。

都市部有権者の納得と地方保守層の安心感。福田政権の課題であると同時に、民主党が政権を奪取するための課題でもあります。


2007/10/1(月) 郵政民営化とは、採算ベースに乗らない地域からの撤退ということである

郵政民営化スタート。

熱狂の中で行われた2005年9月の郵政選挙から2年経ちました。その熱狂が冷めてみると、目の前の現実は地方切り捨てのシフトが確実に敷かれた状態になっています。

民営化とは、採算ベースに乗らない地域や事業からの撤退を意味します。これまでの事例を振り返っても、民営化された電電公社は私のいる地域から去っていきました。JRとなった国鉄も人員が激減しました。

過疎地では、10年単位で見れば、「さよなら郵便局」という事態になります。

郵政民営化の怖さはそれだけではありません。338兆円もの巨大な資産が国民のものでなくなる可能性があるということです。

小泉純一郎という稀代のペテン師の個人的恨みから出発した郵政民営化。これがアメリカの国益と合致して巨大な嵐となって2005年に吹き荒れました。

私は、「2005年の敗戦」と呼ぶべきだろうと思っています。この「敗戦」は、「1945年の敗戦」以上かもしれません。


玉井彰の一言 2007年10月 四国の星ホーム一言目次前月翌月