玉井彰の一言 2007年11月 四国の星ホーム一言目次前月翌月

2007/11/30(金) 大型店の郊外立地と改正都市計画法・・手遅れに近いが

大型店の郊外立地は、都市基盤の整備に掛かる経費、交通渋滞、教育環境の悪化など、多くの社会的な損失ないしは負担と引き替えに利便性を追求するものです。

多くの地方都市では、市民の共有財産である「街」を失い、個性を喪失してしまいました。

車依存、利便性最優先で地域社会が維持できるかどうか。超高齢社会、人口減少社会の到来により、利便性を上回る社会的要請に目を向ける必要が出てきました。

【大型店の郊外立地を禁止 改正都市計画法が全面施行】(共同通信) 
延べ床面積が1万平方メートルを超すショッピングセンターなど大型商業施設の郊外への立地を原則的に禁止する改正都市計画法が30日、全面施行される。森林や農地を除き、国土の約3割を占める都市計画区域(約998万ヘクタール)のうち、立地が制限される土地の比率は改正前の13%から97%に拡大する。

これにより大型店進出に伴う交通渋滞や騒音対策を企業に求める大規模小売店舗立地法、都市の中心部に商業施設や共同住宅の集積を促す中心市街地活性化法と合わせた「まちづくり3法」が完成。住民の高齢化などが進む全国各地で生活の場を中心街に集約し、暮らしやすくする取り組みがスタートする。

改正都市計画法では、大型商業施設が建設できる場所(用途地域)を市街地の商業地域などに限定。病院や福祉施設、学校といった公共施設が郊外の市街化調整区域へ移転する場合にも、市町村の許可が必要になる。

【コメント】
その地方らしさ、その都市らしさ、というものがあまりにも軽視されてきました。

平成10年に中心市街地活性化法(旧法)が成立し、中心市街地の活性化が「喫緊の課題」であることが認められました。

このことは、地方行政において画期的なことでした。従来であれば、市町村内の「各地域間の平等」が重視され、中心部も「一地域」として「公平」な扱いを受けることになり、結果として都市全体の魅力づくりがなおざりにされてしまいました。

中心部は都市の「顔」である。お腹には化粧をしないが、顔には化粧をする。そういう意味合いで、都市の中心部に税金を集中投資することが可能になりました。このことが未だ理解できていない地方自治体が多数です。

もっとも、中心部重視ということは政治的に困難な面があります。中心部の居住者が少なくなっており、かつ、その「地域」の「部分利益」だと多数の住民に見なされ、周辺部軽視の政治姿勢だということになれば、中心市街地活性化を叫ぶ首長の選挙は極めて苦しい戦いになります。

そこを乗り越えて、「顔」がよくなることは「全体利益」だという発想に転換する必要があります。

法制度に地方政治が追い付いていかなければなりません。ただし、法整備が遅れすぎた。手遅れに近いのですが、そうも言っていられません。

超高齢社会、人口減少。その中で持続可能な都市の繁栄を追求するには、都市をコンパクトな形で充実させ、地域コミュニティーを維持していかなければなりません。


2007/11/29(木) 証人喚問の使い方・・・民主党も自民党も旧態依然

軍需専門商社が関係する宴席に出席したとされる額賀財務大臣に対する参議院における証人喚問が、全会一致の慣例を破って議決されました。

このことに対する批判があるようです。しかし、これまでの「慣例」は、野党が要求する喚問に対して与党が「うん」と言わなければ議決にならないということであって、与党が議会の多数を占めてきたこれまでの状態を反映したものに過ぎません。

むしろ、証人喚問の議決が全会一致でなければならない積極的な意味は、少数者(野党)の権利を尊重するということであって、与党が多数を占める衆議院で意趣返しのような証人喚問がなされることの方がむしろ問題になります。

証人喚問について言えば、これまでの「歴史」は、国民失望の歴史でした。政治ショーとしての意味はありますが、いざやってみると、「記憶にない」でおしまい。

これだったら、「やるぞ」と見せかけてやらない方が、余韻が残って政治的には野党側にプラスになります。与党反対で証人喚問が実現しなかったという「実績」で勝負する方がいいのではないでしょうか。

額賀氏サイドが曲がりなりにも「アリバイ」を主張しているのですから、民主党が額賀氏に「レッドカード」または「イエローカード」を突きつける自信がないのなら、「疑惑」のまま放置すべきでした。

逆に自民党サイド、額賀氏サイドからすれば、証人喚問は民主党に反撃する絶好のチャンスとだいう見方も可能です。

証人喚問は、喚問可能な側からすれば、「峰打ち」ないしは「寸止め」にする方が政治的効果がある場合があり、証人サイドからすれば、「無実」なら、反撃の有力手段にもなります。

証人喚問の結果が従来通り曖昧なものに終わるとすれば、民主党も自民党も証人喚問の利用方法が旧態依然だったということになります。


2007/11/28(水) 道路使用の規制・・・街を楽しくするために必要なこと

中心市街地活性化に取り組んでいる者として、道路の問題については腹立たしいことが沢山あります。

なにかイベントをやろうとしても、警察が歩行者天国をなかなか認めません。前例主義が横行しています。

もちろん、一部市民が行うイベントで車の走行が疎外されることのデメリットは考慮されなければなりません。しかしそれは、警察が許可不許可で対応するのではなく、市民間の調整に委ねるべきです。

我が市では、活性化すべき中心部の道路に歩道がなく、高齢者にとって危険性が指摘されています。そこで制限速度を時速30kmから20kmあるいはそれ以内に抑えたらどうかということを提案しても、30km以下の制限速度は認められないのだそうです。

これも市民が決めればいい話です。

道路に木を植えてしまって車がスピードを出せないようにすればいいと思うのですが、これも往来妨害等の罪になるでしょう。

市民が街を楽しくしようとしても、規制に阻まれることがあまりにも多すぎるように思われます。中心市街地にはそうした規制を除去する特例を設けるべきです。それも、自治体レベルでなし得るような柔軟性が必要です。


2007/11/27(火) 地方から東京へ・・・人口移動

東京圏への転入者が転出者を上回る現象が12年続いています。想えば今から10年前の11月、三洋証券、山一証券、北海道拓殖銀行が相次いで経営破綻。金融再編へとつながります。

翌年の参院選で自民党が惨敗し、橋本総理退陣。

【12年連続の転入超過へ 東京圏、総務省集計】(共同通信) 
総務省が26日発表した住民基本台帳に基づく今年1−10月の人口移動報告月報の集計で、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)の転入者数が転出者数よりも約15万人多いことが判明。昨年も11、12月には転入者が多く、12年連続の転入超過となる見通しとなった。

都道府県別では、転入超過数は東京が最多で9万348人。次いで神奈川が3万2000人、千葉と埼玉も5位以内に入った。一方、転出超過は北海道の1万8862人をはじめ、青森(9803人)、長崎(9472人)などで、地方から都市部への人口流出の実態を示している。

総務省統計局のまとめでは、1−10月の東京圏の転入超過数は14万7962人。既に昨年1年間より1万5929人多く、3年連続増加となりそうだ。東京都は1986年から96年まで転出超過が続いていたが、97年に転入超過に転じた。

【コメント】
10年以上前から、地方で暮らすことが困難になってきたということが示されているデータです。

その頃から、自殺者が急増。2万人台前半だった年間自殺者数が3万人の大台に乗り、その後ずっと3万人台で推移しています。

日本の社会に地殻変動が起こっており、それが継続しています。このことを政治がとらえなければなりません。これからの国民生活はどうあるべきか、産業構造や国と地方の関係をどう考えるのか、根本的な発想の転換が必要になっています。

自民党の古賀誠選挙対策委員長が地方行脚をしています。かなり厳しい反応があるようです。地方の状況が厳しくなる中で、小泉政権の5年半で拍車が掛かりました。このペテン師を失脚させられなかったのが、我が国と国民の不幸です。

自民党にできるのは対症療法。根本治療は政権交代によるしかありません。国民が腹を括るときが近づいています。


2007/11/26(月) 「出会い頭解散」・・・引くに引けなければ

自民、民主、公明、どの政党も解散はやりたくないはずです。しかし、各候補が選挙用ポスターを刷り、走り始めると、党本部に対して、もっと選挙費用をよこせとか、金が続かないから選挙をやって欲しいとかいう圧力が掛かってきます。

【<小沢民主党代表>「出会い頭」の解散も】(毎日)
 民主党の小沢一郎代表は25日、大津市内で記者会見し、衆院解散・総選挙について「今の状況は必ずしも政府・与党に有利ではないと思われているが、何が起きるかわからない。ひょんなことで出合い頭(の解散)ということもある」と述べ、衆院解散・総選挙に向けた準備を急ぐことを改めて強調した。

 また、額賀福志郎財務相が防衛専門商社「山田洋行」元専務らとの宴席に同席したとの民主党の指摘を、額賀氏が否定していることについて「(証言者など)具体的なことも分かって追及していると思う。確実な情報を得てのことだ」と述べ、今後もこの問題で額賀氏を追及する考えを示した。

【コメント】
自民党サイドは、「参議院で問責決議が出ても解散する必要なし」としています。しかし、これとて牽制の域を出ず、実際に問責決議が出された場面では、どういう政治状況になるのか不明です。

安倍前総理が、「参院選で敗北しても退陣する必要なし」という予防線を張り、実際、退陣を拒否しましたが、結局退陣することになりました。

自民、民主双方が、引くに引けない状況になってしまうことは、充分あり得る展開です。国対関係者の活躍する場面ですが、防衛省疑惑や消えた年金問題など、様々な「地雷」が何時破裂するか分からないので、福田総理が、やぶれかぶれでやってしまえという判断に傾く可能性もあります。

現時点の地力勝負では、自民党の辛勝です。しかし、風は緩やかに民主党への追い風ですから、自民党サイドから勝負を仕掛けるかどうか、踏ん切りの付けにくい場面ではあります。


2007/11/25(日) 離島住民、山間僻地の住民を準公務員に!

これから人口減少が進むのは、中山間地域と離島です。とりわけ、離島と山間部の僻地は、集落消滅の危機が間近に迫っています。

こうした地域を優勝劣敗の論理で「淘汰」してしまっていいのでしょうか。

国土防衛の見地から大きな問題があります。また、都市が都市として繁栄する前提として、後背地が安全・平穏であることが必要です。そのためには、青壮年層を地域に張り付けなければなりません。

「国土防衛予算」として、1兆円の国家予算を組みます。概算ですが、100万人の青壮年層に年間平均100万円を支給し、地域の公務を担ってもらいます。地位は、準公務員。

全国公募してもいいでしょう。ニート、フリーター諸君の社会的体験と、将来の就職につながるキャリア形成の手段として位置付けてもいいと思います。


2007/11/24(土) 省庁による干渉からの自由・・「分権」に対する省庁側の抵抗

政府が進めようとしている「地方分権」は、地方統治の合理化であって、真の分権ではありません。

その政府の地方分権改革推進委員会がまとめた中間報告に国が自治体の仕事を細部まで縛る「義務付け」法令の抜本見直しが盛り込まれたことに対して、省庁側が反発しています。

【地方分権改革:「国の縛り」廃止が焦点 省庁は反発】(毎日)
政府の地方分権改革推進委員会(丹羽宇一郎委員長)がまとめた中間報告に、国が自治体の仕事を細部まで縛る「義務付け」法令の抜本見直しが盛り込まれ、分権問題の新たな焦点となった。分権委は基準に該当しない場合は法令を原則廃止する方針を打ち出し、今年度内に所管する中央省庁に改善策の回答を求める考えだ。ただ、国の権限行使を裏付けるこうした法令の廃止に省庁は反発している。福田康夫首相が改革をどこまで後押しするかも、結果を左右しそうだ。

分権委が「義務づけ」法令見直しに動いたのは、自治体行政の裁量の幅を狭め自主性を阻害するとの弊害が以前から指摘されていたため。同委でその代表格として議論されたのは、保育施設の設置基準。児童福祉法に基づき定められた規定は「保育室か遊戯室は1人1.98平方メートル以上、屋外遊戯場は同3.3平方メートル以上」。市町村からは、市の中心部に保育室を設置したくても基準を満たす用地を確保できないなどの不満が噴出していた。分権委が厚生労働省から行ったヒアリングで同省は保育室の面積について「基準は1948年に制定された。畳1畳分ぐらいが子供たちに適当なスペース」と説明。丹羽委員長らが「60年前の話。『畳1畳』に科学的説明はできない」と応酬する場面もあった。

00年に施行された地方分権一括法に代表される第1期分権改革で、国が自治体に仕事を義務付ける場合は「法律またはこれに基づく政令による」とされた。しかし各省庁は法令を制定する際、省令などで委任規定を設けることで義務付け温存を図った。介護保険法では条文の300項目以上が委任規定。公営住宅の床面積から指定介護老人福祉施設の廊下の幅まで、自治体への義務付けはあらゆる分野に及ぶ。

16日に公表された分権委の中間報告は、従来通り義務づけを認めるケースは災害対策や国際的要請で統一が必要な事務など七つの基準に該当する場合に限り、それ以外の場合は廃止する方針を打ち出した。法令を所管する各省庁には義務付けについて(1)基準に該当するか(2)該当しない場合は廃止のための方策(3)該当しないが、なお存続が必要なものは、その理由−−の報告を今年度内に求め、結果を公表して改革委が検証する予定だ。

ただ、省庁は何らかの理由をつけ、「義務付け」が存続に必要な基準に該当する、と抵抗するとみられる。委員会がそれをどこまで退けられるか、攻防は激しさを増しそうだ。【七井辰男】

【ことば】◇地方分権改革◇ 今回の改革は「第2期分権改革」と呼ばれる。「第1期分権改革」は、95年に設置された地方分権推進委員会が5次にわたる勧告を行い、これに基づき2000年に地方分権一括法が施行された。国が自治体に業務を代行させていた機関委任事務制度が廃止された。

第2期は基礎的自治体のあり方や国から地方への権限移譲が焦点。今年5月にまとめた「基本的考え方」では自治体の自治立法権などを打ち出した。今回の中間報告は、来春から2年かけて順次政府に行う勧告の「羅針盤」となるもの。政府は勧告に基づき「地方分権一括法案」を策定し、2010年に国会に提出する予定。


【コメント】
箸の上げ下ろしにまで国が干渉する。これが現在の地方自治の姿です。

ここを改めて、現場の自治体が自由に制度を運用することができれば、より合理的な税金の使い方が可能になり、かつ、住民サービスも向上します。

それを邪魔するのが、省庁の縄張り意識です。省庁間の縄張り争い。地方に対する省庁の縄張り意識。これらのために途方もない税金が無駄に使われています。

増税などとふざけたことを言う前に、これらの問題を整理整頓すべきです。

国の干渉がなくなれば、地方の自由度、それも発想の自由が確保され、創意工夫をする余地が拡大して、地方自治体の「生産性」も大幅に向上します。

国の側も大幅に経費が節減できると共に、人材を地方に廻す余地が出てきます。地方の最大の問題は人材不足です。

国家公務員が自由な人材となり、地方がこれを受け入れる。一見、国家公務員のリストラのように見えますが、彼らが真に必要とされる場所で能力開花をなし得る絶好の機会であるととらえるべきです。

天下りシステムで有為な人材を腐らせるために膨大な経費を掛けている現行システムを是正することで、国と地方の新たな発展が見込めます。


2007/11/23(金) 自民は負けないが勝てない。民主は勝てないが負けない・・総選挙をやれば

福田・小沢の党首会談で福田首相が新テロ特措法案の会期内成立に協力を求めましたが、小沢氏は拒否。小沢氏は、政策協議に踏み込むことにも慎重姿勢を崩しませんでした。

政局は、会期の大幅延長→衆議院の三分の二で議決→参院での首相問責決議→衆議院解散・総選挙、というシナリオを横目で見ながらの駆け引きになってきます。

【首相が新テロ法案協力要請、小沢氏は拒否…党首会談】(読売) 
福田首相(自民党総裁)は22日午後、首相官邸で与野党の各党党首と個別に会談した。首相は民主党の小沢代表に対し、インド洋での海上自衛隊の給油活動再開のため、新テロ対策特別措置法案の会期内成立に協力を求めたが、小沢氏は拒否した。

首相は、自衛隊の海外派遣のための一般法(恒久法)整備や年金制度改革に関する政策協議も呼びかけたが、小沢氏は断った。党首会談が物別れに終わったことを受け、政府・与党は、12月15日までの会期を再延長する方向で調整に入る。

首相と小沢氏の会談は、午後3時から45分間行われた。両党の幹事長、国会対策委員長と、町村官房長官が同席した。首相と小沢氏の会談は、大連立構想を話し合った今月2日以来。

首相は、新テロ特措法案について、16日の日米首脳会談でブッシュ大統領から給油再開を要請されたことを報告し、「強く責任を感じている。法案成立に理解をいただきたい」と協力を求めた。これに対し、小沢氏は「無原則に自衛隊を海外に派遣することは憲法に反するものだ。いくら首相からお願いされても、折り合いを付けることはできない」と答えた。首相は「賛成できないなら、法案に反対してほしい」と指摘した。参院で審議を引き延ばさないよう求めたものと見られる。

また、恒久法整備のための政策協議や年金改革のための与野党と各界代表による「国民会議」の設置も提案した。しかし、小沢氏は「政策協議を否定はしないが、国会や委員会の場でまとめるべきだ。他の野党との調整もある」と述べ、慎重な考えを示した。

首相は22日夜、会談結果について「それなりに有益だった。またこういう機会を設けて、いろいろ説明することもあっていいのではないか」と述べた。首相官邸で記者団に語った。

首相は小沢氏との会談後、共産党の志位委員長、社民党の福島党首、国民新党の綿貫代表とも個別に会談した。志位、福島両氏は新テロ特措法案への反対を表明。綿貫氏は「国会を機能させるのは、国会の責任だ」と指摘した。小沢氏ら野党党首との会談に先だって、公明党の太田代表とも会談した。

政府・与党は会期を再延長した上で、参院で否決されれば、衆院で3分の2の多数で再可決し、成立を図る構えだ。民主党などが審議を引き延ばした場合は、「参院が60日以内に議決しないときは、否決したとみなす」との「みなし否決」の規定を適用し、再可決することを検討している。新テロ特措法案は1月12日以降、「みなし否決」が可能となるため、会期は1月中旬までとする案が有力となっており、野党の出方を見極めて判断する。

【コメント】
もし年明けに総選挙があれば、民主党は勝てず、自民党は負けなかったという結果が予想されます。

しかし、民主党が200議席前後取れば、衆議院の運営は極めて困難になります。参議院は野党が多数であって、立法・行政の権力の三分の一を握る状態になっています。

その状況下で衆議院の議席を大幅に減らすという展開になれば、自民党から見れば、負けなかった、対米公約を果たしたというだけになります。

民主党から見れば、勝てなくても、次回につながる橋頭堡を築くことになります。負けではない形が続きます。

そこで問題なのは、自民党の組織が瓦解状態になっていることが明白になってくるのではないかということです。

300小選挙区中、自民党150議席、民主党130議席ということになれば、小選挙区で自民党が必ずしも強くないことが明白になり、しかも、勝った小選挙区でも50選挙区程度で自民党の地盤崩壊が起きる予兆が見えてきます。これが民主党の候補者の励みになり、かつ、より強力な候補者が出てくる誘因となります。

選挙さえやらなければ地盤崩壊の状況を見せずに済んだのに、という結果が見えてきます。


2007/11/22(木) 75歳以上が1割・・・人生100年設計を!

行政用語で、75歳以上を後期高齢者と呼びます。この比率が10%を超えました。65歳以上の高齢者の比率=高齢化率は21.5%。

【人口推計:75歳以上が1割、総数1276万人に−−11月】(毎日)
総務省が21日に発表した11月1日現在の人口推計(概算値)で、総人口に占める後期高齢者(75歳以上)の割合が、1950年の統計開始以来初めて10%になった。日本に住む外国人を含めた総人口は1億2779万人で、このうち75歳以上は1276万人だった。

75歳以上の人口は1950年に106万人で、総人口に占める割合は1・3%だった。以降は人口、割合ともに右肩上がりで推移し、1991年に5%に達した。

一方で、11月の人口推計では0歳以上14歳以下の人口が1728万人で、総人口に占める割合が13・5%と過去最低だった前年を更新した。15歳以上64歳以下は8298万人で、割合は64・9%。65歳以上は2753万人、割合は21・5%で、高齢化の進展が顕著に表れている。

【コメント】
以前私が調べたところでは、昭和30年(1955年)における国民の平均年齢は27.6歳、昭和60年(1985年)で35.7歳、平成15年(2003年)が42.5歳でした。

それが、平成32年(2020年)の平均年齢は47.2歳、平成62年(2050年)では51.3歳となる見込みです。

1950年に75歳以上が1.3%だったということは、その時代に75歳以上の人を見掛けることがあまりなかったということです。

2005年の国勢調査で、90歳以上が0.8%、85歳以上が2.3%。

これらを総合すると、1950年頃の75歳以上の高齢者というのは、現在の88歳以上に置き換えて考えるのが妥当です。

高齢化はさらに進みます。医療も進歩します。2050年(私が97歳)を想定すると、人生100年設計で臨むべきだと思います。


2007/11/21(水) 道路特定財源で高速道路無料化を!

民主党がマニフェストに掲げてきた高速道路無料化。政権を取れていないので実現できませんが、道路特定財源を国民に還元する方法として考えてみる必要があります。

【小沢代表「道路財源一般化を」】(日経) 
民主党の小沢一郎代表は20日の記者会見で、道路特定財源について「一般財源化していいと思う」と指摘した。来年3月に期限が切れる揮発油税などの暫定税率に関しては「維持しようとすれば国民生活に還元するなどの話がない限り成り立たない」と述べ、民主が公約に掲げる高速道路無料化などが前提になるとの見解を示した。


【コメント】
小沢氏の言うように、道路特定財源は一般財源化する必要があります。それは、税金を国民に還元する方法の一環として捉えるべきです。

高速道路の無料化。これは地方と都市部との格差是正の決め手になりうる施策です。大都市においては高速道路の渋滞が起こりうるので、その部分は別途考えるべきですが、地方における高速道路は国民の資産として充分活用されていません。

高速道路を「国道0号線」として、全国ネットの道路網として活用すれば、地方における生活の質が大幅に向上します。

無料化に伴う「ストロー効果」については、注意する必要があります。しかし、それを上回る利便性の向上と新たな産業立地の形成が可能になる効果の方が大きいであろうと考えます。

道路特定財源を維持して高速道路無料化を!


2007/11/20(火) 大連立→食うか食われるかの抗争→政界再編のビッグバン

小沢一郎氏の大連立構想、そして辞任騒動は、民主党へのダメージになると思われていました。マスコミ報道でも小沢氏に否定的なニュアンスの報道が相次いでいました。

ところが世論調査では、大連立自体には批判的であるにもかかわらず、この間の民主党の迷走劇には比較的寛大であり、むしろ、「あうんの呼吸」という曖昧な福田首相への不信感が芽生えた形になっています。

小沢氏の真意が知りたいというニーズもあり、テレビ出演した小沢氏がこの間の経緯を語る場面がありました。

【大連立構想、火種くすぶる】(日経) 
福田康夫首相と民主党の小沢一郎代表との党首会談で浮上した「大連立」構想の火種が依然くすぶっている。小沢氏は連立構想が「選挙による政権交代」「2大政党制の実現」という従来の目標と矛盾しないと繰り返し説明。民主はひとまず連立につながる政策協議には応じない方針を確認したものの、小沢氏の主張に理解を示す声も出始めた。衆院選後を見据えた与野党の動きが活発になる可能性もある。

小沢氏は18日のフジテレビ番組で自らの連立構想について「(民主内で)真意が誤解された。政権交代可能な2大政党制を定着させる考えは全く変わっていない」と改めて強調した。

【「公明抜き連立、小沢氏が言及」・鳩山氏が明らかに】(日経) 
民主党の鳩山由紀夫幹事長は19日の日本記者クラブでの講演で、小沢一郎代表が2日の福田康夫首相との党首会談後の党役員会で、自民党との大連立構想について「自分としては公明党を政権に入れることは考えていない」と述べたことを明らかにした。「福田首相(の考え)は分からない」とも語ったという。

鳩山氏は「(大連立構想で)公明党の中には相当大きな疑心暗鬼が生まれていることだけは間違いない。それが小沢戦略だと考えればなかなかのものだ」と強調した。


【コメント】
小沢氏の主張に対しては、民主党・岡田克也氏が9年前の「自自連立」失敗の事例を挙げて批判しています。この批判はもっともであり、自民党支配の延命策として大連立が持ち出されていることは明白です。

それにもかかわらず民主党サイド(小沢氏)で大連立が俎上に上ってくるのは、衆院300小選挙区中150を制する実力を未だ備えていない党内事情があります。

民主党・鳩山幹事長の発言を前提とすると、大連立で公明党外しが模索されているということになります。公明党(創価学会)という政治勢力をどう考えるかということは、日本の政治を考えるに当たって、避けては通れない課題です。自民党の国会議員が自らの自立性を維持できるかどうか、密かに悩んでいる問題でもあります。

二大政党が外交防衛の大枠で基本的合意をした上で、国民が安心感を持つ政権交代への道筋を示すことができるならば、それもひとつの政治的シナリオではあります。

ただしそれは、ある意味で絵に描いた餅であり、現実政治は大連立により個別政治家の生き残り策を背景とした食うか食われるかの大抗争状態に入り、結果、政界再編に向けた政界ビッグバンへの導入路となる可能性を秘めています。

そこまで読み筋に入っていると思われるが故の疑心暗鬼なのでしょう。


2007/11/19(月) 政権への不信感・・大阪市長選で自公敗退

大阪市長選挙で民主党、国民新党推薦の平松氏が、自公推薦の現職を破りました。

公明党常勝の大阪で民主系が勝利する展開。現職の高齢というハンデはあるにせよ、今夏の参院選で見られた自公政権への不信感が収まっていないことの表れであろうと思われます。

年金問題での不信感が消えず、防衛省疑惑が大きくなりつつある中で、民主党への追い風は止んでいないということになります。

政権側が追い込まれ続ける展開になる可能性が出てきました。負けを最小限度に抑えるための早期解散という手も使いづらい状況です。


2007/11/18(日) 空白区をつくるくらいなら・・民主党の候補者選定に一言

防衛省関連の疑惑で解散風が止まる可能性はありますが、何が起きても不思議ではない政局です。

民主党は解散の可能性を考慮した候補者選定を進めています。

【選挙:衆院選 民主、候補選定を加速 大都市圏は難航も−−ハプニング対応、残る不安】(15日、毎日)
 
◇次期衆院選は…消えない早期解散説

民主党が次期衆院選に向けた候補の擁立作業を加速している。新テロ対策特措法案の審議の行方が見えないことから、来年1月までの早期に衆院が解散される場合に備えるためだ。現在85ある小選挙区の空白区のうち約20人を月末までに公認する予定だが、東京など大都市圏を中心に候補者擁立が難航している地域もある。「ハプニング解散」の場合、十分に対応しきれるかの不安はぬぐいきれていない。

「ハプニング(解散)はあるかもしれない」−−。13日夜、都内のふぐ料理店で菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長らと会談した小沢一郎代表はこう述べ、候補者擁立を急ぐよう強調した。

民主党は300ある全選挙区での候補擁立にはこだわらない方針にすでに転換しており、最終的に270〜280選挙区で擁立する方針。すでに候補者が決まっているのが215選挙区で、社民、国民新両党などの候補を推薦する野党共闘選挙区を20〜25選挙区と想定している。このため、月末に約20選挙区を決定すれば、残りは約20選挙区となり、年内に擁立を終えるスケジュールを描いている。小沢氏も今月20日過ぎから、辞意騒動で中断していた全国行脚を再開し、長崎市などを訪問。擁立を急ぐよう自らハッパをかける予定だ。

ただ05年の総選挙で都市部で惨敗した影響はいまだに残っている。東京では25の小選挙区のうち半数近い12選挙区が空白。大阪府も19のうち5選挙区が空白だ。都連幹部の衆院議員は「小沢氏の指示は分かっているが、月末まではとても無理だ。年内にはなんとかしたい」とめどが立たない状況を認める。小沢氏は候補者擁立が進まない状況にいらだっており、周囲に「都道府県連が決められないなら党本部主導で決める」と漏らしているという。

候補の擁立が停滞すれば与党に足元を見られ、臨時国会の土壇場での与野党攻防に影響する可能性もある。小沢氏は13日の記者会見で、次期衆院選について「三善の策」としながらも「衆院で第1党を目指す」と低い目標に言及した。こうした候補者擁立の遅れも小沢氏の弱気に影響しているとみられる。【渡辺創】

◇臨戦態勢、自民着々

一方、自民党。05年衆院選の大勝で大半の選挙区に現職がおり、公明党も合わせれば与党の空白区は15小選挙区にとどまる。自民党選対幹部は「年内に埋まるめどはついた」と臨戦態勢を整えつつある。

「何があってもおかしくない。私も(選挙用)ポスターを発注した。政治の流れには抗しがたい」。自民党の武部勤元幹事長は14日、同党若手議員を対象にした選挙塾「新しい風」の例会で、衆院の早期解散に言及した。同党は空白区の解消に向け、各県連が公募などで調整を進めているほか、菅義偉選対副委員長は「選挙区を持っていない人に手を挙げてほしい」と主張。05年衆院選で初当選した「小泉チルドレン」82人のうち、比例単独で当選した14人の選挙区からの出馬も促し、北海道1区に杉村太蔵、神奈川7区に鈴木馨祐の両氏らが意欲を見せている。

空白区は民主党の小沢一郎代表(岩手4区)、鳩山由紀夫幹事長(北海道9区)、国民新党の亀井静香代表代行(広島6区)ら野党幹部の強固な地盤も多い。【野口武則】

【コメント】
20〜30の選挙区は完全無風選挙区となり、有権者の選択肢が実質的になくなるということです。この点は大いに疑問です。

前回の総選挙が惨敗だったので、次回は「選択と集中」ということになるだろうとは予想していました。しかし、今夏の参院選の結果は、自民党に代わる政権政党としての民主党への期待の大きさを示しています。「大勝利」で政党助成金も増えたはずです。

そうだとすれば、全選挙区に候補者(選挙協力を含めて)を擁立し、全有権者に政権選択の機会を提供する責務が民主党にあるということではないでしょうか。

私が過去2回衆院選に立候補したのは、候補者擁立が困難な地区で有権者に選択肢が与えられるべきだということが主要な動機でした。そして「名誉の戦死」。そうした履歴の者として、一言苦言を呈します。

候補者の公募に応じる人が多いと聞きます。そうした人たちの中から、候補者擁立困難地区に落下傘候補をつくるべきではないでしょうか。短期間でも暴れてくれれば充分。

その期間を「テスト期間」とし、党本部が人物を見極めることにしてもいいでしょう。「二大政党」と喧伝しながらの空白区はいかがなものでしょうか。効果効率だけを追い求めるべきではありません。

なお、都市部で候補者選定が困難なのは、声の大きい落選議員が様々な人脈を通じて党本部に働きかけているからなのでしょう。都市部こそスマートに割り切って候補者を決めるべきです。現時点で大都市部の候補者が決まっていないというのは、遅きに失しています。

前回の総選挙では、大都市部と地方の「1区」では、1選挙区当たり2万票程度の逆風がありました。そのことを勘案した上で、落選議員(候補者)の処遇を決めればいいと思います。


2007/11/17(土) カレーライスかライスカレーか?・・食べなければ分からない

自民党と民主党とでは、カレーライスとライスカレーの違いしかない。

こんな論評が面白おかしくなされています。

じゃあ、どっちを食べてもいいんですね。そう言ったとすると、違いがないから自民党のままでいいのだ、という答えが返ってきそうです。

かつて社会党政権の是非を問われると、多くの国民は「違い」に対する違和感を表明していました。西側に属することでの国防上の安全と経済上のメリット。これらを勘案すると、自民党政権で生じる数々の構造的腐敗にも目をつむり、ときどき「お灸を据える」ことで牽制するしかありませんでした。

ここへ来てやっと、自民党を見限っても、「カレーライスからライスカレーへ」という違いしかなくなったということです。だったら、食べてみればいいじゃないか、ということになります。

もっとも、自民党と民主党の違いはかなりあります。名目上「地方分権」を進めるとしながら、霞ヶ関支配の実質を維持したい自民党と、霞ヶ関を政治がコントロールし、地方に対する霞ヶ関支配を断ち切ろうとする民主党とでは、国の形に対する認識が大いに違います。

東西冷戦終結に伴い、「西側陣営が東側陣営か」の議論が無意味になったので、ハードルは格段に低くなりました。

「ハードル」を乗り越えたくない方々が「カレーライス、ライスカレー」論を主張されているとすれば、食わず嫌い的な評論を卒業され、食べてみることをお薦めします。

その上で、「違いの分かる男(女)」になっていくべきだと思います。


2007/11/16(金) 50歳の曲がり角・・・同級会

昨日東京で、大学の同級会がありました。

50歳前後から、皆の肩書きに大きな変動が出てきました。人生いろいろという時期。亡くなった級友が2名。

多くの者が企業や組織の中枢に近いポジションにいます。これからが実りの時期なのでしょう。しかし、そろそろ人生の着地点を模索する頃合でもあります。

私のように地域社会のど真ん中にいる者の経験を聞いてもらえる季節に近づいているような雰囲気でもありました。

彼ら優秀な諸君が地域社会にデビューしてくれれば、いい世の中になるのですが。

50人?のクラスで30人が結集。卒業30年記念の同級会(私は卒業が遅れましたが)。懐かしい顔に再会でき、楽しいひとときを過ごしました。30年後同数でまたやろうと、全員に配った名刺の裏に書いておきました。読んでくれたかな。


東京渋谷にて。


2007/11/15(木) 「法律」で定めることの異常性・・「地方自治規制法」について

「地方自治法」と呼ばれる法律を、私は「地方自治規制法」と呼んでいます。

地方自治についての一般原則を定める法律は必要です。しかし、現行地方自治法を見ると、何故ここまで決めなければならないのか首を傾げたくなるほど多くの規制があります。

例えば議員定数についての上限(91条)。こんなものを何故国が決めるのでしょうか。その地域の人が自分たちの代表者の数を決めればすむことです。その地方の有権者の判断により、議員を多くして報酬を低く抑え、あるいは無報酬にしてもいいだろと思います。

そうした自主性を抑えるための規制が多すぎます。地方の人間が自由にやると失敗するから、国が規制してあげないといけない。そういうことだとすれば、それはパターナリズム(父権的干渉、父権主義)です。

そうした押さえ込みが地方の自由、とりわけ発想の自由を奪っているのだということを認識すべきです。このような父権主義的な地方自治法の下で暮らさなければならないのなら、その「対価」として、もっと金(地方交付税)をよこせ、仕送りをしろ、と主張すべきです。

様々な規制が自治体の経費を分不相応に膨らませることにもなっています。もっと簡単に、株式会社とまではいかないにしても、現行の「村」よりももっと簡素な自治の形があってしかるべきだと思います。

「地方自治法」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO067.html


2007/11/14(水) 「三善の策」・・・小沢氏の勝敗ライン

次期衆院選で民主党が単独過半数を制するのは困難です。自公の半数割れは是非実現したいところですが、これも容易ではありません。

小沢氏の現実を見据えた発言。

【衆院第1党目指すと小沢・民主代表、勝敗ライン引き下げ】(読売)
民主党の小沢代表は13日、党本部で記者会見し、次期衆院選について「単独過半数がベストだが、非常に厳しい目標だ。野党で過半数を取るのが次善の策だ。『三善の策』としては、衆院で第一党を目指す」との考えを示した。

小沢氏はこれまで、野党での過半数確保を最大の目標に据えてきたが、代表としての勝敗ラインを事実上引き下げた格好だ。

また、小沢氏は与党との政策協議について、「国会の委員会の場で各党で論議し、合意されたものは大いに結構だ。委員会の場ではなく、談合しているかのごとく見られるものはやらない。いわゆる連立政権を目指しているとみられる政策協議はやらない」と述べ、国会の各委員会など与野党各党が参加する形での協議には前向きに応じる考えを示した。 

【コメント】
参院選の1人区と衆院選の小選挙区は全く異質な土俵です。従来、参議院議員は二軍扱いで、それほど強い候補者はいませんでした。

しかも日常活動がそれほどないので、自民党の現職といえども有権者にはなじみがなく、比例区の選挙のようなフワフワした投票行動になりがちでした。自民党に失政があると、「お灸を据える」という感覚で、自民党支持者でも簡単に野党に投票します。

これに対し衆議院の小選挙区は、候補者に強豪が多く、人間関係も濃厚なため、民主党の新人が壁を突き破るのは難しい状態にあります。

もちろん、個別選挙区の事情は様々であり、突き崩せそうな選挙区は幾つもあります。300小選挙区を熟知し、全てに目配りができる軍師がいれば、120〜130の小選挙区を制するのはそれほど困難ではありません。

問題はそこから先。民主党の候補者の中に、「小選挙区は無理だから比例で」という感覚の者がいると、ぎりぎりの戦いで負けてしまいます。自民党の候補者は比例復活が難しいので、命懸けで戦います。その差なのかもしれません。

小選挙区130議席から先の胸突き八丁。その難しさを知る小沢一郎氏の発言を有力選挙区の候補者が自分自身の問題として受け止めることができれば、勝利に近づきます。


2007/11/13(火) 大連立は国民への裏切りか?

大連立への評判は芳しくないようです。

世論調査を見ても、大連立に絡んでゴタゴタがあった民主党の支持率が低下。福田内閣の支持率も低下しています。民主党の支持率低下は、マスコミに叩かれたことからすると、それほどでもないようですが。

大連立は二大政党制の下で選挙で民主党が政権交代を果たすという国民への約束を破るものだ。体制翼賛会の再来だ。等々の批判があります。

しかし、選挙での国民生活改善の約束はどうなるのか、という政治家としての基本的な課題も忘れてはなりません。

衆参の「ねじれ」と言われている現象を否定的に理解すべきではありません。様々な情報が出てきています。霞ヶ関が秘匿してきた情報が開示され、白日の下にさらされてきています。

そのように現状を前向きに理解するとしても、「0対0」の試合に国民が耐えられるのかということも視野に入れる必要があります。

もうひとつ。

大連立=小選挙区での対決の否定、という短絡的な理解をすべきではありません。期間を定め、国家の安全保障と年金、農業政策の骨格を協議し決定する。今後、どちらが政権を取ってもこの枠組みは変更しない。

こうした合意をし、国民生活改善のための施策を実施する。民主党の有力議員を閣僚に据え、「スター」を育成する。民主党の政権担当実績を形成する。その上で、「合同チーム」を解散。猶予期間をおいて小選挙区で雌雄を決する。

このシナリオについて、じっくり考えてみるべきだと思います。

ただし、「政策協議」という「イントロ」が必要です。唐突に唄を唄い始めたという意味で、今回の連立劇は拙速でした。


2007/11/12(月) 自民200+α、民主200−αでどうなるか・・次期総選挙

公明党は来年秋以降の総選挙を望んでいるようですが、政局が流動化すると、何時解散・総選挙となっても不思議ではありません。

ただし、現在の景気や地方の状況を考えると、自民党200議席、公明党25議席、民主党200議席というところから出発して、考えてみる必要がありそうです。

残り議席は55。2005年の総選挙では、自民・公明・民主以外の議席は40。これがそのままだと、残りは15議席。

自民党が200議席を割り込むのは、福田政権に失政ないしは大スキャンダルがあった場合です。民主党が200議席を上回るには、かなりの追い風が必要です。

自民200+α、民主200−αに近い決着となると、総選挙後の政局は混迷することが予想されます。この「引き分け政局」では、やはり「大連立」ということが話題になります。

今回の福田・小沢の党首会談は、ここから逆算してのものだと思います。これが今回の騒動で自民有利に展開したとしても、「自民大勝」(→自公で衆議院の3分の2以上)という状況には程遠い結果しか期待できません。また、「自公安定政権」になる保証もありません。

そう考えると、解散は難しくなります。現時点ではマスコミに叩かれまくっていますが、現実の社会情勢から見て、民主党復調の時期は近いでしょう。

しかも、「民主党でもいいじゃないか」という雰囲気自体が消えたわけではありません。


2007/11/11(日) 時間外の軽傷者から特別徴収・・・考慮に値する対策

時間外に軽傷者が治療を受け、診療態勢が追い付かない。そのことで真に必要な治療が受けられない人が出てくるとしたら、不条理なことになります。

埼玉医大が出した対策は、時間外軽傷者の自己負担、8400円。

【時間外救急:軽症者から8400円特別徴収…埼玉医大計画】 
埼玉医科大総合医療センター(埼玉県川越市)が、夜間・休日の軽症救急患者に対し、時間外特別徴収金として、8400円を自己負担してもらう計画を進めていることが10日分かった。従来は健康保険から徴収していた時間外料金を全額患者の自己負担にかえ、受診者数を抑える狙い。軽症患者急増で診療体制が維持できないことが背景にあるという。専門医は「救急では聞いたことのない制度。必要な医療を受けられない恐れもある」と批判している。

同センターによると、時間外の救急患者は94年に年間約1万人だったが、06年は約4万人に増加した。診療体制がパンク寸前になったため、軽症の受診者数を減らす方法を模索。その結果、紹介状がなく、入院を必要としない患者に対し、特別料金の徴収で負担を増やし、受診者数を絞ることにした。既に張り紙などで周知を始めている。

ただ、「緊急性」などを巡り一律に線引きするのは難しい面もあり、現在、院内で基準作りを進めている。例えば、入院しなくても「緊急性あり」と診断された患者には、特別徴収金を求めない。一方、救急車で搬送された患者でも軽症なら徴収する予定。数カ月後の運用開始を目指す。

厚生労働省は、時間外診療について、病院の裁量によって健康保険を適用せず、特別料金を上乗せできる制度を設けている。地元の社会保険事務局に届け出れば実施でき、同センターは今年3月、埼玉社会保険事務局の了承を得たという。

日本救急医学会の山本保博代表理事(日本医大教授)は、個人的見解としたうえで「本当に必要な患者が治療を受けられなくなる心配がある。(誰もが健康保険で治療を受けられる)国民皆保険を揺るがす問題だ」と指摘している。【高木昭午、稲田佳代】

▽厚生労働省保険局の話 特別料金を徴収できる制度は、時間外受診の希望や保険で決められた回数以上の検査など患者の多様なニーズに応えるためのもの。受診抑制を目的とされると趣旨と合うか微妙だ。

【コメント】
全ての治療が安価に受けられれば幸せです。しかし、急速に進む高齢化というファクターを考えても、医療費の上昇は避けられず、負担と治療とのバランスが考慮されなければならない事態となっています。

救急車の有料化をはじめ、自己負担を求めることにより需給関係を調整する手法を否定するわけにはいかないと思います。

「本当に必要な治療」とは何か。このことを真剣に考えてみる必要があります。終末期に、本人も家族も求めていない延命治療を継続する必要があるのかどうか。本人が求めているかどうか不明であっても、家族が塗炭の苦しみを味わうような延命措置を施し、家族の苦労を察して延命治療を中止すると、医者が殺人罪に問われる。これも不条理です。

「夜間診療が不必要な軽傷者」、「望まれない延命治療」の認定はどうするのか。客観的な判断が求められます。裁判に至る手前の第三者機関での判定基準を設け、裁判員のように民間の参加を求めるということも考えられていいと思います。


2007/11/10(土) 「角を矯めて牛を殺せ」なのか・・小沢代表への「欠席」批判

小沢氏が本会議に出席しないことが民主党の内外から批判の対象になっています。

正論だとは思います。しかし、議論が小さい。小さな正論で大局を見失うことがあってはならないと思います。

【国会より「選挙対策を優先」=小沢氏宣言、欠席批判に反論】(時事通信)
民主党の小沢一郎代表は9日、今国会の会期延長を決める衆院本会議に出席した。しかし、この後、国会欠席が目立つとの批判に対し「首相や閣僚も全部は出ていない」と記者団に反論。さらに「選挙に勝つのが民主主義では最優先課題で、そのことを優先させる」と開き直った。
 
小沢氏は辞意撤回を表明した7日の党両院議員懇談会で「本会議に出席してほしい」と注文されたにもかかわらず、翌8日の本会議を欠席し、批判を浴びた。
 
9日の本会議後、小沢氏は「大事な本会議にはちゃんと出る」とアピールした。ただ、「彼ら(首相や閣僚)が(本会議欠席を)許されて、わたしの場合は『出ない、出ない』(と批判される)。ちょっとおかしい。閣僚より政権を取ろうという野党党首の方がはるかにしんどい」と不満もぶちまけた。  

【コメント】
角を矯めて牛を殺す。小さな欠点を直そうとして、かえって全体をだめにしてしまう喩えとして使われる諺です。

党外の批判はさておき、党内に小沢氏の「出席率」を問題視する意見があるのは如何なものでしょうか。

参院選での勝利は、長妻昭議員の功績もさることながら、小沢氏の「川上戦略」で地方・地域から攻め込んだことも勝因のひとつでした。そのために小沢氏が費やした労力にも多大なものがありました。

政党の党首が、「出席率」で評価されていいのでしょうか。小さな正論、小さな正義が、大義や大局を見失わせることになるとすれば、余りにも愚劣だと思います。

党外の方々の思惑は見えています。角を矯めて牛を殺せ、です。


2007/11/9(金) 「亀田家」報道はテレビの権威を失墜させる

「亀田家」報道には嫌気が差している人も多いと思います。私もそのひとりです。

内藤対亀田の反則試合以降の報道で分かったのは、亀田家が戦績を偽装してテレビ的価値を高めようとしてきたということであり、それにテレビが一枚噛んでいたわけです。

戦績偽装により世間の関心を煽り、視聴率を高めるという手法は、ミートホープ社による「牛肉」への豚肉混入と同様の詐欺的行為です。

詐欺的行為に相乗りして視聴率を稼ぐ。この手法を改めようとしないTBSは、各種偽装行為を糾弾する資格があるのかどうか。

亀田兄弟がメキシコで云々報道も、「偽装一家のその後」という意味合いなのかどうか分かりませんが、テレビ報道として真っ当なものではないと思います。

テレビに対する信頼がさらに崩れてしまうという危機感を、関係者が持たなければなりません。


2007/11/8(木) 選択肢が総選挙のみになった・・小沢氏復帰

結局、「プッツン」政局とでも言えばいいのでしょうか。小沢氏によれば、張りつめていた気力が「プッツン」切れたということになります。そういうこともあるだろうと思います。

福田総理の妥協により、安全保障に関する持論が現実の政策として実現する機会を目前にし、何も見えなくなっていたということなのかもしれません。

しかし、この大きな構想を理解できる人物が民主党幹部には存在せず、マスコミや国民もそれを受け入れる素地を持たない状況で、中傷報道とこれを受けた党内「評論家」の声だけが小沢氏の脳裏を駆けめぐった・・

しかし「辞任」表明後、耳を澄ましてみれば、再起を促す声が沸き起こっており、政策実現の前になすべき政権交代の大目標実現こそが自らに期待されていることに気付いたということです。

選択肢がひとつになり、迷いがなくなっての復帰。「民主党の法則」である「大混乱後、急浮上」のドラマがありそうな展開になりました。


2007/11/7(水) 恥ずかしながら・・・小沢氏「帰還」で民主党政権が見えてきた

「恥ずかしながら帰って参りました」と言ったのは、戦後27年経ってグアム島で発見され帰還した横井庄一氏。

3日後に「帰還」する小沢氏は、さぞ格好の悪い思いで復帰することになるだろうと思います。覚悟の復帰である以上、「我が儘」、「拙速」は封印するしかありません。

人間としての弱みも見せながらの方が、より大きな飛躍につながるのではないでしょうか。状況は違いますが、あの西郷隆盛も、僧・月照とともに入水自殺を図り未遂に終わったという話を思い出しました。

政治家としての思い・感情の大きさ故の「辞任未遂」。前向きに評価すれば、民主党のさらなる飛躍に結びつくことになるでしょう。このことで、民主党政権が近づいたように思います。

一部に、小沢氏の辞任会見での発言を問題視し否定的な発言をする民主党若手もいるようですが、彼らは政治家として未熟なのか、人間として愚かなのか、どちらかだと思います。


2007/11/6(火) 「雨降って地固まる」とも言う・・小沢氏辞任撤回なら

小沢氏が辞任すれば飛車落ち政局。民主党の「評論家」達が「当事者」として政治に直面することになります。

今回の辞任劇を見ての感想は3つに集約されます。

第一に、小沢氏の政策、取り分け安全保障政策に対する情熱が想像を絶していたこと。

第二に、焦りすぎたということ。

第三に、読売報道など、謀略めいた不可解さが残ること。付加すれば、これに民主党内の評論家が過剰反応したこと。

小沢氏がこのままま辞めてしまうのも一局の将棋ですが、第二、第三の要素を考えると、後に悔いを残すのではないかと思います。

辞任会見での「民主党批判」は、現状認識としてはその通りであり、辞任を撤回し、責任ある立場で現状を打破するというのもひとつの方法です。

「雨降って地固まる」とも言います。踏み止まって、男・小沢一郎が乾坤一擲の大勝負に出るのが本筋です。


2007/11/5(月) 飛車落ち政局・・・小沢代表の辞任

不可解な辞任劇。読売などの「小沢氏が仕掛けた」説も不可解ですが、大連立の提案を小沢氏が持ち帰ったこと自体を批判する論調が党内で流れたというのも不可解です。

民主党は「飛車落ち」で戦うことになります。

衆議院議員選挙で民主党が勝ちきることは、小沢代表でも困難でした。このことを誰よりも知るが故に、小沢氏は「大連立」構想に踏み込んだのでしょう。

参院選と衆院選とは選挙の性格が違います。300小選挙区で150以上勝つというのは至難の業。単独安定政権を狙うとすれば、小選挙区で170。この数字に対するリアリティーが乏しい「論客」が、民主党には多いように見受けられます。

ところで、「飛車落ち政局」が、即、自民党有利に働くかと言えば、なんとも言えないのが政治です。新党首が新たな構想をブチ上げれば、大きく展開するということもあり得ます。「飛車」より「金」が役に立つ場合、なきにしもあらず。

そもそも、民主党がいつまでも小沢氏頼みでいいかどうかも問題です。ここで一皮剥けるチャンスと考えた方がよさそうです。小沢批判の論客達が、命懸けで政治を担ってみるべき時期なのだと思います。


2007/11/4(日) 小沢が「大連立」を仕掛けた説・・現代の「公武合体論」か

読売新聞は当初から小沢氏が大連立に前向きであったという主張をしていましたが、ここに来て小沢氏が持ちかけたという報道になっています。

毎日新聞を引用します。そして、加藤紘一氏の発言(共同通信)。

【大連立:党首会談の全容判明 恒久法が政権論議の糸口に】(毎日)
福田康夫首相と民主党の小沢一郎代表との2回にわたる党首会談の全容が明らかになった。連立政権協議は両党間では決裂したが、両党首の間では基本的に一致していた。また自衛隊を海外に派遣する恒久法では国連決議を前提にすることで合意。連立政権ができた場合の閣僚ポストなどにも話題が及んでいた。

連立政権構想を強く主張してきたのは渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長兼主筆だ。渡辺氏の持論に賛同したのが森喜朗元首相、青木幹雄前参院議員会長、中川秀直元幹事長ら。10月30日の「福田・小沢」第1回会談は森氏らに背中を押されるように実現した。

45分間の2人だけの協議では、90年以降の日本の安全保障政策について意見交換が行われた。

「湾岸戦争の時は大変でしたね」。首相は小沢氏に語りかけ、湾岸戦争時の130億ドル支援、96年の日米安保再定義、03年のイラク開戦などが話題になった。

福田氏は諄々(じゅんじゅん)と新テロ特措法案の意義、日米同盟の重要性を説いた。小沢氏は恒久法について、国連決議を前提にしなければ自衛隊派遣ができないという考え方をメモに書いて首相に渡した。首相は「国連決議だけの有無でいいのですか。相談させてほしい」と検討することを約束した。

恒久法が連立政権論議の糸口になった。そして話題は閣僚人事まで発展していった。連立政権ができた場合、民主党に振り分けられる財務相など数々のポスト名までが飛び交った。当初は政策協議を念頭にしていた首相も「連立政権協議をして、まとめられるのならそれでもいい」という考えに傾いていった。

2日の第2回目の会談。恒久法に関する国連決議原則について、首相は「これでいいですよ」と返答。小沢氏も「じゃあ、これで(民主)党内を説得しますから」と約束した。

そして小沢氏は「連立協議をするなら、国会を閉じなくてはいけない」と提案。連立政権協議の中で新テロ特措法案を話し合う考えを示し、首相は小沢氏は同法案に賛成する腹だと受けとめた。

首相からの連立政権提案を持ち帰る際、小沢氏は「決めてきます」と告げた。この言葉で首相は連立政権協議が始まると大いに期待した。

小沢氏は役員会で、恒久法の国連原則に首相が応じたことを報告したが政権協議そのものへの反対論にかき消された。

与党関係者によると、首相との会談で小沢氏は「総理、あなたから連立をもちかけたことにしてもらえませんか」と切り出し、首相は「その方が都合がいいのなら、それで結構ですよ」と即答した。このように政界には連立政権に関する「小沢首謀説」が流れている。

民主党の鳩山由紀夫幹事長は3日、京都府内の講演で「小沢代表が大連立を持ちかけた事実はない。代表がうそをつくはずがない。自民党の情報操作だ」と反発した。

【衆院選前後に再編の動き 加藤氏、中選挙区復帰も】(共同)
自民党の加藤紘一元幹事長は3日、都内で講演し、福田康夫首相が民主党の小沢一郎代表に連立協議を提案したことに関連し「次期衆院選の前後に新たな政治の在り方を模索する時が来るのではないか」と述べ、政界再編の可能性があるとの認識を示した。

同時に「小選挙区制での政界再編は難しい。政界再編と中選挙区制への移行問題は非常に密接に絡んでくる」と指摘、中選挙区制への復帰も検討すべきだと強調した。

首相の連立提案に関しては「連立という激しい石を投げたので民主党はとりあえず拒否したが、まじめに論議すべきテーマだ。自民、民主のどちらにとって失点が大きいかという次元の話ではない」と述べた。

【コメント】
政権交代か、国家百年の計か。

幕末の公武合体論を思わせる話です。歴史上否定されたシナリオですが、当時の政情からして、あり得る選択肢でした。倒幕へのマグマが想定以上に大きくなっていたことで、公武合体論はかき消されました。

民主党がこれまで主張し続けていた「政権交代」の筋道からすると、「奇手・妙手」の類であって、王道ではないような気がします。

ただ、次期衆院選で民主党が勝つ確率が50%前後だと見るとどうなのか。福田政権は逆境にありますが、衆議院選挙は政権側が時期を選べるし、参院選の1人区と違って衆院の小選挙区は「縛り」が大きく、「自民党にお灸を据える」という感覚での投票行動にならないということから考えると、民主党としても考えどころではあるでしょう。

国家の安全保障政策で合意を勝ち取り、政権に参画して国民の安心感を得る。その上での政権交代。小心な日本の有権者が政権交代を決断する具体的シナリオとしては有効かもしれません。

加藤紘一氏が言うように、政界再編を視野に入れた構想が動きつつあるということでもあるでしょう。短期の連立+小選挙区での決着なのか、中選挙区への復帰を前提としたものなのかは不明ですが、選挙制度に関わる重大な話であることは否定できません。

「衆・参のねじれ」と言われている現象をどう捉えるのか。政権交代へのプロセスと見るか、自民、民主どちらにとっても膠着状態の政局と見るのか。

国民に見える見えないの議論はありますが、ここは我が国の中心的政治家の大局観が問われる場面です。もちろん、日米関係が底流に横たわっている話です。


2007/11/3(土) 大連立「未遂」をどう評価するか

福田首相から持ちかけられた大連立を小沢氏が民主党に持ち帰ったことに対して、民主党内から批判が出ているとの報道があります。

連立に前向きだったからこそ持ち帰ったのだ。その場で断固拒否すべきだった。そうした意見もあるようです。

しかし、テロ特措法に賛成意見もある民主党内で、党首が連立の提案を党内に持ち帰ることなく拒否したとしたら、「独断専行」の批判が出てきた可能性もあります。

福田首相が中選挙区との抱き合わせで提案したという記事も見受けられます。もしそうだとすれば55年体制の復活であり、自民党主導の政局になってしまいます。

しかし、大きな政策課題を解決するために、短期間に限り大連立を組み、課題解決後は争点を明確にして解散で国民の信を問うということがあったとしても、これはこれでひとつの政治的なリーダーシップの取り方だと思います。

次の衆議院選挙で民主党が勝つ可能性が50%前後。負ければ党内が混迷します。政権党としての経験を経た上で政権交代を訴えた方が国民の信頼を得やすいのではないかという考えもあり得ます。

一方で、大連立+政界再編。そういう「手」も考えられないことはありません。自民、民主両党とも、内部に大きな意見の隔たりを抱え込んだ政党です。一度「合同チーム」を結成して「プレー」をし、別れるときには同じ傾向の者同士が組むという手法を全く否定する必要はないと思います。

両党首に連立志向があったからこその密談。「未遂」であっても、一石を投じたものとして評価する必要はあります。


2007/11/2(金) 政府が民主主義のシステムに忠実に行動することが真の国益・・海自への撤収命令

戦後レジームの脱却を掲げた安倍内閣が失速し、福田政権が登場した結果、「愛国」を前面に出した右派の政治は影を潜めつつあります。

しかし、テロ特措法における議論では、「国益」という言葉が頻繁に使われ、国民を説得するためのキーワードとして利用されています。

テロ特措法失効により、インド洋上の海上自衛隊に撤収命令が出されました。国際社会から非難されるというような臆病な論調がなされています。それでは、給油活動に踏み込んだ時点で変更が許されないような話だったのかどうか。

日本がまともな主権国家なら、国内政局の変化により従来の方針が変更されたということを対外的に説明できるはずであるし、また、しなければなりません。

その努力をすることなく、「国益が損なわれる」などということを安易に持ち出すことは、国民を愚弄するものであるし、民主主義のシステムを無視ないしは軽視する議論に他なりません。

政府が民主主義のシステムに忠実に行動することが「国益」なのだという、シンプルな発想に立ち返る必要があります。

悪い仲間に脅されて金をせびられ続けているような気の弱い自民党外交こそが、「国益」を損なっているのではないか。そうした疑問を持つべき段階に入っています。


2007/11/1(木) 小心者国家でいいのか・・町村発言は執事の発想

インド洋での給油ができなくなたら・・

小心な議論を展開し続ける自民党。日本が給油しなければ、他国がやるだけの話ですが、そう割り切られると困るのでしょう。ああも言ってみたり、こうも言ってみたり。

【「給油活動中断でマイナーリーグに」町村氏が民主党批判】(朝日)
町村官房長官は31日の記者会見で、11月1日でテロ対策特措法の期限が切れ、インド洋で給油活動をしている海上自衛隊が撤収することについて「テロとの戦いの戦列から、極めて国内的な事情で日本だけが脱落していく。日本がマイナーリーグになり、国際社会の一員としての責任を放棄してしまうという意味で、日本の将来に大きな汚点を残す」と述べ、活動の継続に反対する民主党を強く批判した。 

【コメント】
日米関係をとってみても、インド洋での給油だけでなく、あらゆる分野で何百、何千もの相互関係が存在しています。

そのほとんどで誠実な対応をしている日本が、たったひとつの事項について、国内的な事情で実施できなくなったら、それだけでアメリカはじめ国際社会から爪弾きされるなどということがあるでしょうか。

100点満点で99点とってもこの世の終わりのような恐怖心を抱く。そんな小心者国家が国際社会で通用するものかどうか。

町村氏の発言は、忠実な執事の発想に酷似しています。


玉井彰の一言 2007年11月 四国の星ホーム一言目次前月翌月