私たちの基本的な見解


2011/12/25
原発体制を問うキリスト者ネットワーク


はじめに
2011 年3 月11 日、東京電力福島第一原子力発電所で発生した原発過酷事故は、9 カ月を経た今なお収束に向かう兆しは見られず、全地球規模の汚染を引き起こしています。

3・11 以後の歴史の曲がり角に立って私たちは、ここに至るまで「原発体制」を許してきてしまった自らの責任を問いつつ、回心を込めて、この見解を発表します。

原発体制の闇
核分裂過程で放出される膨大なエネルギーを取り出す原子力発電は、生命の尊厳と対極にある「核技術」です。人類の叡智の及ぶ領域をはるかに超えて危険な存在です。

戦後冷戦下における「核の平和利用」キャンペーンを発端に、原発体制の構築に乗り出した世界の権力者と原子力産業界は、ウラン採掘から原子力発電、核燃料の再処理、核兵器製造にいたる核燃料サイクルの全過程で莫大な利益を手中に収めることに成功しました。その結果、引き起こした環境破壊やあらゆる悲惨な犠牲をも省みることなく、依然として原発体制の維持・推進を目論んでいます。

日本政府もまた、「エネルギー確保のために原子力の平和利用は不可欠」という大義名分を掲げた国策を立案し、「原発は地域振興に寄与する」「核燃料はリサイクルできる」「原子力は安い電力を供給する」「原発はCO2 を排出しないクリーンエネルギー」「日本の原子力技術は優秀」「原発は安全」といった根拠のない原子力神話をまき散らし、政官財界・学界・マスコミが一体となって原発を、世界有数の地震多発地帯である日本列島の上に建て並べてきました。その結果として2011 年3 月11 日に起こった福島第一原発事故は、地震に脆弱な原発と、原発体制が内包するあらゆる問題を一気に世界中に知らしめることになったのです。

福島の事故がまき散らした核分裂生成物は、チェルノブイリ原発事故が放出し、全地球汚染を引き起こした死の灰の総量に匹敵すると見られ、メルトダウンした炉心と使用済み核燃料からは、いまなお核分裂生成物が環境中に拡散し続けています。高濃度に汚染された地域では、100 万人を超える人々が生命の危機と隣り合わせの暮らしを強いられています。死の灰は人間の力で無毒化することも、安全に処分することもできない危険物で、100 万年にもわたって地球の生命環境を脅かし続けていくことになります。

そもそも原発が日常的に生み出す核分裂生成物の量は、100万kW級の原発一基が一日操業する度に広島原爆4発分に相当し、これまでに、54 基の日本の原発が生み出した死の灰の総量は、広島原爆120 万発分にも達して増え続けています。加えて、世界一高いと言われる電気料金と、国民の税金を財源とする日本の原子力政策は、過酷な被曝労働を担ってきた原発労働者を使い捨て、原発立地地域の住民、農業・漁業従事者の暮らし、地域社会の崩壊という犠牲を踏み台にして行われてきました。

にもかかわらず、かつ、事故の収束すら目途が立ち得ない中で、日本政府と原子力産業界は、「放射能のレベルは安全である」「事故の収束は可能である」「日本の技術は、依然優れている」として、原発の存続と他国への輸出、放射性廃物の他国での廃棄政策を狙い続けています。

 

原発の深い闇からの解放に向けて
1.キリスト者として

私たちキリスト者は日本社会の中では少数者ですが、この暗闇の原発体制に抵抗し、原発社会からの生きとし生けるものの解放のために、虐げられた生命に寄り添って解放の福音をもたらされたイエスとともに、あらゆる連帯を生きていきたいと願っています。

2.原子力の廃絶
私たちは、日本国内におけるすべての原発の即時停止と廃絶、六ヶ所再処理工場(青森県六ケ所村)、及び高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)など、核燃料サイクル施設の稼働中止と核燃料サイクル計画からの即時撤退を求めます。
また、再生可能エネルギー、自然エネルギーの開発推進に賛同します。

3.海外との関連
私たちは、海外への原発輸出と、使用済み核燃料と放射性廃物の海外処分計画の即時中止を要求します。そのために、特に隣国の韓国・台湾・ヴェトナム・モンゴル・中国・インド・フィリピン・インドネシアなどにおける抵抗運動と連帯して活動し、さらにその輪を広げていきます。

4.国内のグループとの関連
私たちは3・11 以後、ネットワークを立ち上げたグループです。すでに日本国内で原発廃止と輸出反対に長年取り組んでこられた多くの方々やグループから学びつつ、この重要な歴史の局面を見据え、原子力の時代にピリオドを打つために、共に全力をつくして歩んでいきたいと願っています。

 

*なお、私たちのネットワークに参加されるにあたっては、教団・教派・組織及びその代表者とは関係なく、あくまでも個人の意思において参加することを前提とします。参加者の国籍は問いません。
*またこの見解は、絶えず皆様のご意見を伺いつつ、加筆修正していきます。