ことばのお祭り
教育のツボ
テレビで「露出」の多いタレント(?)
 最近、やたらとテレビで「露出」の多いタレントは……!?
 
 こんな言い方をしても、肌を露わにしているタレント、あるいはやたらとパンツを脱いでしまうタレントといった意味ではないらしい。
 
 私は必要な時しか新聞を買わないので、テレビ番組は『Telepal』(小学館)という雑誌でチェックしている。「このところ、タレント某は、ドラマ、バラエティと画面への露出が多い。」という用例だから、同誌の執筆者は「露出」という語を、どうやら「出演」とか「登場」の意味で用いたいようである。同誌の中では、このほか「なにげに」「さりげに」などといった言葉も頻出(ひんしゅつ)し、私は大いに引っかかるものを感じるのだが……。
 
 まあ、一方で学校教科書や学習雑誌なども作っている出版社ではあるものの、部門も担当者も違うだろうから、きちんとした言葉遣いにこだわれなどとケチなことを言いたいわけではない。ただし、テレビ雑誌といった大衆的な分野であるから、こうした言葉づかいがそれなりに世間的には流通・通用しているという背景があることぐらいは踏まえておいたほうがいいのだろう。実際のところ、「なにげに」「さりげに」をテレビタレントが使用しているのを見聞きしたりもする。
 
 ちなみに、『広辞苑』第四版(岩波書店)で、《ろ・しゅつ【露出】》の項を引くと,次のようになっている。
  1. あらわに、むき出しになること。むき出しにすること。
  2. (exposure)感光材料に光をあてること。また、その時間。写真の撮影または引伸し・密着焼付などを行う際、シャッターの開閉または光源の点滅などによって行う。露光。
  3. 感光材料に放射線をあてること。
 しかしながら、《多くのテレビ番組に「むき出しにな」っているタレント》というのでは、不細工な表現だと感じてしまうのは私だけだろうか。あるいはタレントをスポットライトを浴びる「感光材料」とみる捉え方がそこにはあるのかも知れない。言葉の意味は移り変わっていくものだと認めるのにやぶさかではないつもりでいるものの、やはり引っかかる。
 
 「さりげに」「なにげに」にしても、「さりげなく」「なにげなく」の意で使われているようである。語源的にはひょっとして正しかったりするのかも知れないが、私にはよくわからない。ともあれ、「さりげ」=「そうだという気持ち・意図」、「なにげ(何気)」=「何という気持ち・意図」と考えると、とりたてて「格別な気持ちや意図」の「ない」状態が「さりげない」「なにげない」であろうと私は勝手に理解していたのである。
 
 はたして、いかがなものだろうか?●用例〔98/08/08付・某スポーツ新聞〕「大魔神」が流行語大賞候補に●
大魔神こと横浜・佐々木に、また大きな勲章が与えられることになりそうだ。(中略)今季は日本記録を4つも更新し、そのたびごとに「大魔神」という活字が新聞紙上に躍った。
もちろん、新聞だけではなく、テレビ、ラジオなど、その露出度は群を抜きプロ野球はもちろん、高校野球や少年野球の世界まで「○○の大魔神」という派生語まで生まれるほど。そんな「大魔神」が『現代用語の基礎知識』(自由国民社)が選出する、今年の日本流行語大賞の最有力候補に挙がっているという。(後略)
執筆日時:
1998/08/02

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