山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
  人間に与へる詩


 
 そこに太い根がある
 
 これをわすれてゐるからいけないのだ
  うで
 腕のやうな枝をひき裂き
 
 葉つぱをふきちらし
         み き
 頑丈な樹幹をへし曲げるやうな大風の時ですら
 
 まつ暗な地べたの下で
       ふんば
 ぐつと踏張つてゐる根があると思へば何でもないのだ
 
 それでいいのだ
 
 そこに此の壮麗がある
 
 樹木をみろ
  たいぼく
 大木をみろ
 
 このどつしりとしたところはどうだ