山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 荷車の詩


 
日向に一台の荷車がある
 
だれもゐない
 
ひつそりとしてゐる
 
木には木の実がまつ青である
 
荷車はぐつたりとつかれてゐるのだ
 
そしてどんよりした低気圧を感じてゐるのだ
 
路上には濃い紫の木木の影
 
その重苦しい影をなげだした荷車