山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
  海の詩


 
 どんよりとした海の感情
 
 砂山にひきあげられた船船
 
 波間でひどく揺られてゐるのもある
 
 はるか遠方の沖から
 
 こちらをさしてむくむくともりあがり
 
 押しよせてくる海の感情
  ど こ
 何処からくるか
 
 この憂鬱な波のうねりは
 
 そこのしれないふかさをもつて
 
 此の大きな力はよ
 
 ああ海は生きてゐる!
  よるひる
 夜昼絶えず
 
 渚にくだける此の波波のすばらしさ
 
 そこにすむ漁夫等を思へ