山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 ザボンの詩


 
おそろしい嵐の日だ
 
けれど卓上はしづかである
 
ザボンが二つ
 
あひよりそふてゐるそのむつまじさ
 
何もかたらず
 
何もかたらないが
 
それでよいのだ
 
嵐がひどくなればなるほど
 
いよいよしづかになるザボン
         つ や
たがひに光沢を放つザボン