山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 此処で人間は大きくなるのだ


 
とつとつと脈うつ大地
 
その上で農夫はなにかかんがへる
 
此の脈搏をその鍬尖に感じてゐるか
 
雨あがり
 
しつとりとしめつた大地の感触
 
あまりに大きな此の幸福
 
どつしりとからだも太れ
 
見ろ
 
なんといふ豊富さだ
 
此の青青とした穀物畑
 
このふつくりとした畝畝
 
このひろぴろとしたところで人間は大きくなるのだ
 
おお脈うち脈うつ大地の健康
 
大槌で打つやうな美である